将軍の宝玉

なか

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41.約束

  バルコニーに面した窓から外が見えるように配置された長椅子で、柔らかくなった日差しを浴びてシェリルノーラはいた。

   長椅子はもたれやすいよう左側の背面が高く、右面へとなだらかな曲線で囲うようになっている。また肘置きも大きく、ベッドから動けるようになった頃に特注で作らせたものだ。
   幾つもの柔らかなクッションに体を預け、外を見るのがシェリルノーラは気に入ったようだった。季節はもう冬に移り行こうとしていた。

「シェリルノーラ様、風邪を引きますよ」

   うとうとしていたのか、ぼんやりとした表情だった。声をかけるとパチリと目を覚まして驚いた顔をする。

   クッションから身体を起こした彼に近くにあったショールを肩に掛ける。やや乱れていた髪を直して隣に座ると、頬をほんのり染めたシェリルノーラと目があった。
   しかしお礼を言ってすぐに俯いてしまう。


「そうだ、あなたから頂いたお守りのおかげで無事に戻れました。お礼を言ってませんでしたね」

   シェリルノーラは何故か下を向いたままでその耳が赤い。

「心配をかけてすみませんでした」

「いえ、あのっ、、旦那様は、その、私の……」

「?」

「いえ、……何でもありません」

   その手を取り、そっと握ってみる。ぴくりと反応されるが、振りほどかれはしない。
   先ほど剣を交えた時とは全く違う様子に笑みが漏れる。
  
「お話してくださらないのですか?」

「……」

   困り果てて眉を下げる顔を見ていると、なんだか俺がいじめているように感じてしまう。その顔もかわいらしいのだが。

「無理強いはしませんよ、何か私に言いたいことがあるのでしょうけど」

「えっと、自分でもどういったら良いのかが…」

   どんどん頬を染めていく。少し肉が戻ってきた頬を指の背で撫でてみる。

 握っていた手を持ち上げ、その指先に口づけた。自分の手を目で追っていた彼が固まってしまう。
   ちょっとまだ早かったか。

 嫌われてはいないようだが、初心な反応が返ってくることが多いこの人と、焦らず本物の伴侶になっていけたらと思う。先に結婚をしてしまったが、関係性を築きあげる時間はこれからたくさんある。
   手に入れたいと思う気持ちもあるが、ゆっくり大切に慈しみたい方が比重が大きいかもしれない。

「悪い話ではないのらいいのですが」

「すみません」



「シェリルノーラ様は星見祭行ったことがありますか?」

 これ以上追及しても答えが返ってこないようなので、指を絡めたまま話を持ち出す。

「いえ、一度行ってみたいと思っていましたが、話には聞いたことがあるだけで」

   突然の話に視線を上げてくれる。まだ少し頬が赤いままだが、星見祭に興味を示してくれる。

「王宮にいた頃、星見をしたことは?」

「夜遅くまで起きてるとタリー先生に怒られるので。いつも早く寝ていました」

「そうでしたか」

   秋が去り、日に日に寒くなるこの時期、数年に一度だがたくさんの星が降る夜がある。

   街では星見祭として、毎年市が立ち、屋台も出て夜まで祭りとなる。市街地では街や祭の明かりがあり、そんなに星が見えないのだが豊穣祭の後の寒くなる前の市民の祭りとなっている。今年ももうその季節だ。

「仕事の都合上、残念ながら今年は祭には連れて行ってあげられませんが、夜には戻ります。一緒に星見をしましょう」

「ほんとですか?」

 嬉しそうに表情を綻ばす顔を見せられたらこちらが嬉しくなる。

 昔、物見櫓として使われていた古い塔が屋敷に隣接している。部屋のバルコニーから見るよりも、空が近く見えるだろう。そこで星を見せてあげたい。

「きっと、いいものが見られますよ」



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