20 / 50
19.腕前
しおりを挟む
せっかく体を温めさせたので、そのまま休んでほしかったが、シェリルノーラは状況を俺たちに説明しに来たらしい。
その意図を汲んで、とにかく話を聞くことにした。
「不信な物音は特にしませんでした。書斎に侵入していたのは男が2人。執務机のあたりで何かを探していたように見えました。覆面のため顔は見ていません。
1人は小剣で動きを封じたようでしたが、もう1人と廊下で応戦しているうちに姿を消していました。他に忍んでいたかは分かりません。
ベランダから庭に逃走し、最後は剣を投げつけてきたので、捉えることができませんでした。ただ、最後に聞いた言葉は南の訛りがあったように思います。
私がお話できるのはこれだけです。お役に立てず、申し訳ありません」
簡潔に状況を述べ、シェリルノーラは頭を下げた。彼の責任ではないのに。
責めれられるべきは、警備の責任をもつ家主の俺だ。仮にも将軍職についている人間が、大事な人を危険な目に合わせてしまうなど、情けない。
「何度も言いますが、あなたの責任ではありません。今日はもう遅い。どうかお休みください」
退室を促すと、何か言いたげな眼をしていたが、2人も頷いているため、シェリルノーラはもう一度2人に礼を述べ、素直に立ち上がった。そのまま扉まで送ると、ふいに立ち止まる。
「あの、こんな時に申し訳ないのですが、少しだけラスティンと話をしてもよろしいでしょうか」
「ラスティンと?」
「また次いつ会えるかわからないので、一言よろしいでしょうか。どうかお願いします」
彼からのささやかなお願いだが、表情が一瞬険しくなるのを感じる。彼も感じ取っているようだが、珍しく言い募る。
「……分かりました。お待ちください」
室内に戻り、ラスティンに廊下でシェリルノーラが待ってると告げる。ラスティンはひっと小さく声を漏らし、慌てて廊下に出て行った。
前のソファでレイノルドがにやにやしているのが視界に入るが、無視だ。
すぐに戻ってきたラスティンが頭を下げて、腰を下ろす。
「お待たせしました。あの、ひとついいですか」
「どした~、なんかあった?」
「いえ、あの、今回の件ちょっと盗賊にしてはおかしいと思うんです。
忍び込んだ先が書斎っていうのも、警備がこれだけ役に立たなかったのも、それにいくら格好や状況が不利だとしても、シェリルノーラ様が苦戦するほどの手練れが、ただの金品目的の者にしては不自然です」
「そうだね、ちょっとおかしいよね」
レイノルドが同意しているが、一つ引っかかる。
「シェリルノーラ様は腕がたつのか。それをなぜお前が知っている?」
ラスティンは何故かサーっと青ざめ、ぐっと息を飲んでいる。
「お前顔が怖すぎ!ラスティン、将軍は怒ってないからさ。こういう顔なの。気にしないで教えてあげて」
「はい。あの、私は東の領地の出身でして。シェリルノーラ様が王都から戻られてからは、剣の師匠が同じで、訓練でよくご一緒しました。そのご縁で親しくさせていただいておりました。
彼の方は、体力的な問題で持久力はお持ちではありませんが、短期決戦となると、私はほとんど勝ったことがありません」
「そんなことは聞いていないが」
「ご両親には体力つくりのため、ということになっておりました。あの、ご夫妻は物凄くご心配されますので、師匠とシェリルノーラ様との密約といいますか……」
「なるほどな」
あの両親の姿を思い浮かべると、簡単に想像がついた。まだまだ彼について知らないことばかりだ。そして二人は同門で、愛称で呼び合う親しい仲だ、と。
「今日はご苦労だった。調べてみる必要はありそうだな。ラスティン、今回の件は他言無用だ。今後も協力を頼む」
「は!」
「今日はゆっくり休んでくれ。明日は午後からでいい」
その意図を汲んで、とにかく話を聞くことにした。
「不信な物音は特にしませんでした。書斎に侵入していたのは男が2人。執務机のあたりで何かを探していたように見えました。覆面のため顔は見ていません。
1人は小剣で動きを封じたようでしたが、もう1人と廊下で応戦しているうちに姿を消していました。他に忍んでいたかは分かりません。
ベランダから庭に逃走し、最後は剣を投げつけてきたので、捉えることができませんでした。ただ、最後に聞いた言葉は南の訛りがあったように思います。
私がお話できるのはこれだけです。お役に立てず、申し訳ありません」
簡潔に状況を述べ、シェリルノーラは頭を下げた。彼の責任ではないのに。
責めれられるべきは、警備の責任をもつ家主の俺だ。仮にも将軍職についている人間が、大事な人を危険な目に合わせてしまうなど、情けない。
「何度も言いますが、あなたの責任ではありません。今日はもう遅い。どうかお休みください」
退室を促すと、何か言いたげな眼をしていたが、2人も頷いているため、シェリルノーラはもう一度2人に礼を述べ、素直に立ち上がった。そのまま扉まで送ると、ふいに立ち止まる。
「あの、こんな時に申し訳ないのですが、少しだけラスティンと話をしてもよろしいでしょうか」
「ラスティンと?」
「また次いつ会えるかわからないので、一言よろしいでしょうか。どうかお願いします」
彼からのささやかなお願いだが、表情が一瞬険しくなるのを感じる。彼も感じ取っているようだが、珍しく言い募る。
「……分かりました。お待ちください」
室内に戻り、ラスティンに廊下でシェリルノーラが待ってると告げる。ラスティンはひっと小さく声を漏らし、慌てて廊下に出て行った。
前のソファでレイノルドがにやにやしているのが視界に入るが、無視だ。
すぐに戻ってきたラスティンが頭を下げて、腰を下ろす。
「お待たせしました。あの、ひとついいですか」
「どした~、なんかあった?」
「いえ、あの、今回の件ちょっと盗賊にしてはおかしいと思うんです。
忍び込んだ先が書斎っていうのも、警備がこれだけ役に立たなかったのも、それにいくら格好や状況が不利だとしても、シェリルノーラ様が苦戦するほどの手練れが、ただの金品目的の者にしては不自然です」
「そうだね、ちょっとおかしいよね」
レイノルドが同意しているが、一つ引っかかる。
「シェリルノーラ様は腕がたつのか。それをなぜお前が知っている?」
ラスティンは何故かサーっと青ざめ、ぐっと息を飲んでいる。
「お前顔が怖すぎ!ラスティン、将軍は怒ってないからさ。こういう顔なの。気にしないで教えてあげて」
「はい。あの、私は東の領地の出身でして。シェリルノーラ様が王都から戻られてからは、剣の師匠が同じで、訓練でよくご一緒しました。そのご縁で親しくさせていただいておりました。
彼の方は、体力的な問題で持久力はお持ちではありませんが、短期決戦となると、私はほとんど勝ったことがありません」
「そんなことは聞いていないが」
「ご両親には体力つくりのため、ということになっておりました。あの、ご夫妻は物凄くご心配されますので、師匠とシェリルノーラ様との密約といいますか……」
「なるほどな」
あの両親の姿を思い浮かべると、簡単に想像がついた。まだまだ彼について知らないことばかりだ。そして二人は同門で、愛称で呼び合う親しい仲だ、と。
「今日はご苦労だった。調べてみる必要はありそうだな。ラスティン、今回の件は他言無用だ。今後も協力を頼む」
「は!」
「今日はゆっくり休んでくれ。明日は午後からでいい」
964
あなたにおすすめの小説
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた
風
BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。
「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」
俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
契約結婚だけど大好きです!
泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。
そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。
片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。
しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。
イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。
......
「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」
彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。
「すみません。僕はこれから用事があるので」
本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。
この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。
※小説家になろうにも掲載しております
※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる