将軍の宝玉

なか

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19.腕前

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 せっかく体を温めさせたので、そのまま休んでほしかったが、シェリルノーラは状況を俺たちに説明しに来たらしい。
   その意図を汲んで、とにかく話を聞くことにした。

「不信な物音は特にしませんでした。書斎に侵入していたのは男が2人。執務机のあたりで何かを探していたように見えました。覆面のため顔は見ていません。
 1人は小剣で動きを封じたようでしたが、もう1人と廊下で応戦しているうちに姿を消していました。他に忍んでいたかは分かりません。
 ベランダから庭に逃走し、最後は剣を投げつけてきたので、捉えることができませんでした。ただ、最後に聞いた言葉は南の訛りがあったように思います。
 私がお話できるのはこれだけです。お役に立てず、申し訳ありません」

 簡潔に状況を述べ、シェリルノーラは頭を下げた。彼の責任ではないのに。

 責めれられるべきは、警備の責任をもつ家主の俺だ。仮にも将軍職についている人間が、大事な人を危険な目に合わせてしまうなど、情けない。

「何度も言いますが、あなたの責任ではありません。今日はもう遅い。どうかお休みください」

 退室を促すと、何か言いたげな眼をしていたが、2人も頷いているため、シェリルノーラはもう一度2人に礼を述べ、素直に立ち上がった。そのまま扉まで送ると、ふいに立ち止まる。

「あの、こんな時に申し訳ないのですが、少しだけラスティンと話をしてもよろしいでしょうか」

「ラスティンと?」

「また次いつ会えるかわからないので、一言よろしいでしょうか。どうかお願いします」

 彼からのささやかなお願いだが、表情が一瞬険しくなるのを感じる。彼も感じ取っているようだが、珍しく言い募る。

「……分かりました。お待ちください」

 室内に戻り、ラスティンに廊下でシェリルノーラが待ってると告げる。ラスティンはひっと小さく声を漏らし、慌てて廊下に出て行った。
   前のソファでレイノルドがにやにやしているのが視界に入るが、無視だ。


 すぐに戻ってきたラスティンが頭を下げて、腰を下ろす。

「お待たせしました。あの、ひとついいですか」

「どした~、なんかあった?」

「いえ、あの、今回の件ちょっと盗賊にしてはおかしいと思うんです。
   忍び込んだ先が書斎っていうのも、警備がこれだけ役に立たなかったのも、それにいくら格好や状況が不利だとしても、シェリルノーラ様が苦戦するほどの手練れが、ただの金品目的の者にしては不自然です」

「そうだね、ちょっとおかしいよね」

 レイノルドが同意しているが、一つ引っかかる。

「シェリルノーラ様は腕がたつのか。それをなぜお前が知っている?」

 ラスティンは何故かサーっと青ざめ、ぐっと息を飲んでいる。
 
「お前顔が怖すぎ!ラスティン、将軍は怒ってないからさ。こういう顔なの。気にしないで教えてあげて」

「はい。あの、私は東の領地の出身でして。シェリルノーラ様が王都から戻られてからは、剣の師匠が同じで、訓練でよくご一緒しました。そのご縁で親しくさせていただいておりました。
   彼の方は、体力的な問題で持久力はお持ちではありませんが、短期決戦となると、私はほとんど勝ったことがありません」

「そんなことは聞いていないが」

「ご両親には体力つくりのため、ということになっておりました。あの、ご夫妻は物凄くご心配されますので、師匠とシェリルノーラ様との密約といいますか……」

「なるほどな」

 あの両親の姿を思い浮かべると、簡単に想像がついた。まだまだ彼について知らないことばかりだ。そして二人は同門で、愛称で呼び合う親しい仲だ、と。


「今日はご苦労だった。調べてみる必要はありそうだな。ラスティン、今回の件は他言無用だ。今後も協力を頼む」

「は!」

「今日はゆっくり休んでくれ。明日は午後からでいい」

 


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