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22.過去
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ゆらゆらと身体が彷徨っている。
血を吐いたことはうっすらと覚えている。だとしたら、これは夢?
それとも私は死んでしまったのだろうか?
ふと周りを見渡すと、王宮の奥にある庭園にいた。大きな池のある庭園。
ああ、これは私の7つの頃の思い出だ。その日はいつもより体調がよく、侍女と共に庭に出てみたんだった。
急に悲鳴が聞こえ、黒づくめの格好をした男がすく近くまで駆けてくるのが見えた。キラリと刃物が光る。
ぼんやりとその光を見ていると、強い力で身体を攫われ、ゴロゴロと芝生を転がる。
ガキンっと剣と剣が合わさる。私を背後に守りながら、警備の男性が戦っている。遠くからヒュンと音がして、足元に矢が刺さる。
私を庇っているせいで動きにくそうだ。
私は怖くてたまらなかったが、その背中を見つめていた。どれくらい時間がたったのだろう、黒づくめの男がどさりと倒れた。
私を振り向き、無事を確認してきたその男の右頬には紅い血が流れていた。
「お怪我はありませんか、王子」
「ごっ、ごめんなさい。僕が外に出たから…痛いですよね?…ごめんなさい」
「矢が掠っただけです。これくらい大丈夫ですよ」
私は泣きそうになりながらごめなさいと繰り返し、駆け寄ってきた侍女に抱き抱えられるように部屋に戻った。
そう、戻って気付いたんだ。お礼を言っていないことに。
4才の頃、たくさん血を吐いた。その時とこの襲われた時、小さいながらも死を意識したことを覚えている。
本当に狙われたのは私ではなく、当時背格好が似ていた、当時の王の孫にあたる王子だったけれど。
最初は長引く風邪かと思われ、弟が産まれたばかりだったこともあり、私は隔離された。その後、血を吐き、命の淵を彷徨った。感染はしないが重い肺の病だと判明し、長子だった私は廃嫡された。
しばらくして、専門的な治療を受けるため、王宮で暮らすようになった。
弟が後継者となり、家族と離れ、1人治療を受けていた頃の私には何の希望もなかった。叔父である王太子がわが子のように気をかけてくれたが、ずっと淋しく、ただ死を待つように生きていた。
襲われた日、お見舞いに来てくれた叔父に、助けてくれた人に会ってお礼を言いたいと言ったら、ひどく驚かれた。私が叔父に何かをしたいと意志を表示するのが、初めてだったからかもしれない。
叔父は優しい顔で、また熱を出した私に、「シェリルの病がよくなったら会わせてあげるから、早くよくなるように頑張ろうね」と頭を撫でてくれた。
元気になってあの人にお礼を言いたい、私には小さな希望が生まれた。
それから少しでも良くなるために、あらゆることを努力したのだった。
あの襲撃の日から2年後、隣国との戦が始まった。その出陣の式典で多くの兵士たちがいる中、あの時の人を見つけた。
どうか無事で帰ってきてほしい。忘れているかもしれないけど、いつかお礼を言わせてほしい。
そう願い、その背中を窓からこっそり見送った。
戦は長く続き、彼は武勲を立てどんどん出世した。次に見たのは副将軍の任命式だった。
その頃、王太子だった叔父が国王となっており、私は会場が見渡せる小窓からそっとその様子を伺った。
彼に近づくことなどできなかった。ちょっと怖い顔をして、そのがっちりとした身体に式典の盛装を身に付けた彼は、その存在感で多くの参列者を威圧していた。
無理をしてぶり返しては医師に叱られたりしながら、完治は難しいと言われてい病は、少しずつ少しずつ癒えていった。
病の後遺症として肺の組織が脆弱になっており、激しい運動や無理は禁物だったが、日常生活が問題なく送れるようになったその頃、もう13才を過ぎていた。
その姿を目に焼き付けて、次の月、望みは叶わないまま王宮から両親のもとに戻った。
そう、あの日無理にでもお会いすればよかった。いつか機会があればと、もうお忘れだろうかと、臆病にならずに、お伝えすればよかった。
まだ、お礼も言えていない。
まだ、側にいたい……。
血を吐いたことはうっすらと覚えている。だとしたら、これは夢?
それとも私は死んでしまったのだろうか?
ふと周りを見渡すと、王宮の奥にある庭園にいた。大きな池のある庭園。
ああ、これは私の7つの頃の思い出だ。その日はいつもより体調がよく、侍女と共に庭に出てみたんだった。
急に悲鳴が聞こえ、黒づくめの格好をした男がすく近くまで駆けてくるのが見えた。キラリと刃物が光る。
ぼんやりとその光を見ていると、強い力で身体を攫われ、ゴロゴロと芝生を転がる。
ガキンっと剣と剣が合わさる。私を背後に守りながら、警備の男性が戦っている。遠くからヒュンと音がして、足元に矢が刺さる。
私を庇っているせいで動きにくそうだ。
私は怖くてたまらなかったが、その背中を見つめていた。どれくらい時間がたったのだろう、黒づくめの男がどさりと倒れた。
私を振り向き、無事を確認してきたその男の右頬には紅い血が流れていた。
「お怪我はありませんか、王子」
「ごっ、ごめんなさい。僕が外に出たから…痛いですよね?…ごめんなさい」
「矢が掠っただけです。これくらい大丈夫ですよ」
私は泣きそうになりながらごめなさいと繰り返し、駆け寄ってきた侍女に抱き抱えられるように部屋に戻った。
そう、戻って気付いたんだ。お礼を言っていないことに。
4才の頃、たくさん血を吐いた。その時とこの襲われた時、小さいながらも死を意識したことを覚えている。
本当に狙われたのは私ではなく、当時背格好が似ていた、当時の王の孫にあたる王子だったけれど。
最初は長引く風邪かと思われ、弟が産まれたばかりだったこともあり、私は隔離された。その後、血を吐き、命の淵を彷徨った。感染はしないが重い肺の病だと判明し、長子だった私は廃嫡された。
しばらくして、専門的な治療を受けるため、王宮で暮らすようになった。
弟が後継者となり、家族と離れ、1人治療を受けていた頃の私には何の希望もなかった。叔父である王太子がわが子のように気をかけてくれたが、ずっと淋しく、ただ死を待つように生きていた。
襲われた日、お見舞いに来てくれた叔父に、助けてくれた人に会ってお礼を言いたいと言ったら、ひどく驚かれた。私が叔父に何かをしたいと意志を表示するのが、初めてだったからかもしれない。
叔父は優しい顔で、また熱を出した私に、「シェリルの病がよくなったら会わせてあげるから、早くよくなるように頑張ろうね」と頭を撫でてくれた。
元気になってあの人にお礼を言いたい、私には小さな希望が生まれた。
それから少しでも良くなるために、あらゆることを努力したのだった。
あの襲撃の日から2年後、隣国との戦が始まった。その出陣の式典で多くの兵士たちがいる中、あの時の人を見つけた。
どうか無事で帰ってきてほしい。忘れているかもしれないけど、いつかお礼を言わせてほしい。
そう願い、その背中を窓からこっそり見送った。
戦は長く続き、彼は武勲を立てどんどん出世した。次に見たのは副将軍の任命式だった。
その頃、王太子だった叔父が国王となっており、私は会場が見渡せる小窓からそっとその様子を伺った。
彼に近づくことなどできなかった。ちょっと怖い顔をして、そのがっちりとした身体に式典の盛装を身に付けた彼は、その存在感で多くの参列者を威圧していた。
無理をしてぶり返しては医師に叱られたりしながら、完治は難しいと言われてい病は、少しずつ少しずつ癒えていった。
病の後遺症として肺の組織が脆弱になっており、激しい運動や無理は禁物だったが、日常生活が問題なく送れるようになったその頃、もう13才を過ぎていた。
その姿を目に焼き付けて、次の月、望みは叶わないまま王宮から両親のもとに戻った。
そう、あの日無理にでもお会いすればよかった。いつか機会があればと、もうお忘れだろうかと、臆病にならずに、お伝えすればよかった。
まだ、お礼も言えていない。
まだ、側にいたい……。
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