将軍の宝玉

なか

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24.診察

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「無茶をしないという私との約束はお忘れかな?」

   ぼんやりしていて、人が入ってきたことに気づかなかった。急に声を掛けられて驚いてそちらを見ると、懐かしい顔が見えた。

「タリー先生?」

   白い髭の柔和な表情をした老医師がそこにいた。体を無理に起こそうとするのを制止される。
   
   王宮で暮らしていた時、陛下が手配してくださった主治医だった彼は当時も高齢だったような気がするけれど、あれから年をとったように見えない。
   時間が戻ったかのように感じた。

「話は後。診察しますよ」

   昔と同じようにテキパキと、でも優しい手つきで診察を始めた先生に力が抜けた私は身を任せた。


「息苦しさは?」

「2」

「ふむ。お喋りすると?」

「3です」

   一通り診察され、昔と同じようなやり取りをする。先生は困ったような笑顔で診察を終えた。

「大分、成長されて体力はついたようですが、無理をするところは変わらないですな。肺炎も併発していましたし、肺の機能が落ちています。10日もほぼ昏睡状態でしたから、そうは動けないとは思いますが、しばらく絶対安静。いいですね?」

「……はい」

「私はこちらの屋敷に滞在しています。何か少しでも変化があれば、必ず呼んでください。約束ですよ」

「はい、先生」

   まるで小さな頃に戻ったような感覚に、素直に返事をする。また、お世話になるなんて申し訳ないけれど、自然と笑みがもれた。先生も昔と変わらない笑顔を見せてくれる。その笑顔に安心する。
   先生のおかげで少し気持ちが落ち着いた。先のことは今は考えないようにしよう。まずは、体を治すことが先だ。


「先生、今の数字は?」

   離れたところから腕を組んで診察の様子を見ていた旦那様が疑問に思われたのだろう、先生に問いかける。
   
「ああ、これはシェリルノーラ様は昔は我慢強くて、何を聞いても、大丈夫ですとしか答えて下さらなかったんでな。0から10でどれくらいかを言うように決めたんですよ。今も大丈夫と言いそうなんでな」

「……そうでしたか」

「ほんとに手の焼ける困った患者じゃ」

   昔の話をされると反論できないので、黙って2人のやりとりを聞くしかない。先程飲んだ薬湯が効いてきたのか、少し眠気が出てきた。
   うつらうつらし始めたことに、旦那様が気気付く。

「シェリルノーラ様、眠いのですか?」

   低い声が耳に心地いい。頷いてみようとするが、あまりもう体が動かなかった。

「先生、眠ったらまたしばらく目が覚めないということはありませんか?」

   焦ったような声も瞼を閉じてしまえば、その言葉の意味まで意識を向けることができない。

「薬湯が効いてきたのでしょう。昏睡とは違います。ご心配は無用です、閣下」

「そうですか。ありがとうございます、先生。無理を言って」

「ははは、まあ、もう隠居した老人を引っ張りだした甲斐があると思っていただければ、本望ですよ。私もシェリルノーラ様のことは幼い頃からお世話してきて、気になっていましたので」

「申し訳ありませんが、どうかよろしくお願いします」

「閣下もゆっくりお休みくだされ。ずっとみておいででしたからな。まともに眠っておられないでしょう。患者が2人に増えては困ります」

「私は頑丈ですから」

「シェリルノーラ様が心配されますぞ」

「……そうですね、今日は休みます」

   声を潜めた2人の会話が、さらに眠気を誘う。その優しい空気に、今は何も考えず、安心して眠りについた。

   

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