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44.知りました
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目がさめると、起きるには早い時間だった。久しぶりにぐっすり眠った気がする。まだ薄暗い部屋に、カーテンの隙間からうっすらと日が差していた。
そうだ、昨日……。
たくさんのことを一気に思い出した。左頬は少し熱を持っているが、痛みは治まっていた。思い出すと、体がぶるりと震えた。
「大丈夫か?痛むか?」
カイルさんの寝起きの掠れた声がして、僕の腰に回っていた腕に力がこもる。
「起こしちゃいましたか?すみません。」
「いや、まだ早いだろ。もう少し寝てろ。」
「目が覚めちゃって。カイルさんは寝ててください。」
目が冴えてしまって、二度寝はできそうにない。ご飯の前に皆に謝りに行きたい。もう少ししたら、皆起きる頃だろう。
「朝ご飯の前に、皆に謝りに行ってきます。」
「昨日な、」
カイルさんが話し始める。顔を上げると、優しく微笑まれた。
「ハルカがいない事に気付いたのはマリアだったんだ。おやつを持って行ったら、返事もなく、部屋がいつもよりきれいに片付けられてて、嫌な感じがしたそうだ。上着がなくなっているのを見て、急いで皆に伝えて、ケリーが早馬で知らせに来てくれた。
ケリーは鼻が効くし、軍にいた頃、訓練も受けていたから、2人でハルカの匂いを必死に辿った。
雑踏に紛れてハルカの匂いだけなら、見失ったかもしれないが、ハルカと一緒に俺の匂いもしていて、たどり着けた。怪我はさせてしまったけど、助けられて、本当に良かった。」
カイルさんはそこまで言うと、僕の乱れた前髪を上げて額に口づけた。
「カイルさんの匂い…、あっ、あの尻尾の毛かな?そうだ、上着のポケットに入れたまんまだ。取ってこなきゃ。」
「まだ持ってたのか。」
「だって。もう触っちゃいけないから、あれだけもって思ってたんです。」
「これからいくらでも触らせてやるから。」
カイルさんに苦笑され、起き上がろうとするのを止められた。太腿のあたりにふさっとした感触。直にさわさわと動いて、少しくすぐったい。
「ありがとうございます。カイルさんが護ってくれたんですね。あっ、僕、ペンダント!取られちゃって。あのペンダント見て、2人で揉めてて、時間稼ぎできたんです。1人はやめてくれようとしたし。
でも、なくなっちゃって、……ごめんなさい。」
「いいんだ。俺が探しにいってみるよ。」
「すみません。」
深い青色の瞳が優しく、僕を安心させるような色をのせる。
「あれはな、うちに代々伝わる物で昔、軍に所属する頃、祖母からもらったんだ。俺を守ってくれるって。そして、将来、心から守りたいと思った人にあげなさいってな。本当にハルカを守ってくれた。だから、もし今回の件でなくなったとしても、いいいんだ。」
お守りだとくれたあのペンダント。そんな大事なものを、何にも言わないでくれていたのかと思うと、胸の奥が熱くなった。
そうだ、昨日……。
たくさんのことを一気に思い出した。左頬は少し熱を持っているが、痛みは治まっていた。思い出すと、体がぶるりと震えた。
「大丈夫か?痛むか?」
カイルさんの寝起きの掠れた声がして、僕の腰に回っていた腕に力がこもる。
「起こしちゃいましたか?すみません。」
「いや、まだ早いだろ。もう少し寝てろ。」
「目が覚めちゃって。カイルさんは寝ててください。」
目が冴えてしまって、二度寝はできそうにない。ご飯の前に皆に謝りに行きたい。もう少ししたら、皆起きる頃だろう。
「朝ご飯の前に、皆に謝りに行ってきます。」
「昨日な、」
カイルさんが話し始める。顔を上げると、優しく微笑まれた。
「ハルカがいない事に気付いたのはマリアだったんだ。おやつを持って行ったら、返事もなく、部屋がいつもよりきれいに片付けられてて、嫌な感じがしたそうだ。上着がなくなっているのを見て、急いで皆に伝えて、ケリーが早馬で知らせに来てくれた。
ケリーは鼻が効くし、軍にいた頃、訓練も受けていたから、2人でハルカの匂いを必死に辿った。
雑踏に紛れてハルカの匂いだけなら、見失ったかもしれないが、ハルカと一緒に俺の匂いもしていて、たどり着けた。怪我はさせてしまったけど、助けられて、本当に良かった。」
カイルさんはそこまで言うと、僕の乱れた前髪を上げて額に口づけた。
「カイルさんの匂い…、あっ、あの尻尾の毛かな?そうだ、上着のポケットに入れたまんまだ。取ってこなきゃ。」
「まだ持ってたのか。」
「だって。もう触っちゃいけないから、あれだけもって思ってたんです。」
「これからいくらでも触らせてやるから。」
カイルさんに苦笑され、起き上がろうとするのを止められた。太腿のあたりにふさっとした感触。直にさわさわと動いて、少しくすぐったい。
「ありがとうございます。カイルさんが護ってくれたんですね。あっ、僕、ペンダント!取られちゃって。あのペンダント見て、2人で揉めてて、時間稼ぎできたんです。1人はやめてくれようとしたし。
でも、なくなっちゃって、……ごめんなさい。」
「いいんだ。俺が探しにいってみるよ。」
「すみません。」
深い青色の瞳が優しく、僕を安心させるような色をのせる。
「あれはな、うちに代々伝わる物で昔、軍に所属する頃、祖母からもらったんだ。俺を守ってくれるって。そして、将来、心から守りたいと思った人にあげなさいってな。本当にハルカを守ってくれた。だから、もし今回の件でなくなったとしても、いいいんだ。」
お守りだとくれたあのペンダント。そんな大事なものを、何にも言わないでくれていたのかと思うと、胸の奥が熱くなった。
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