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43.手当てされました
しおりを挟む「おいで、まずは汚れを落とそう。」
有無を言わせず、抱き上げられて浴室に連れていかれた。ぬるめのお湯で僕の埃や汚れを落としてくれる。
掌と胸の傷がぴりっと痛んだ。頬の腫れと、掴まれたところに痣ができた以外は、大した傷はなかった。右手首はいつの間にか、少し捻ったようだった。
きれいになると新しい大きなバスタオルに包まれ、ソファに連れていかれる。水を渡されて飲むと、口の中も切れていたのか、痛みに顔をしかめる。カイルさんに顎に指をかけられ、口を開けさせられた。
「口開けて。ああ、少し切れてるな。」
僕の口の中を見て、カイルさんがまた眉をひそめた。そのまま、顔を近づけると、ペロリと頬の内側を舐められた。
「カ、カイルさんっ。」
「痛かったか?」
慌てて頭を後ろに引いて言ったのに、全然分かってない。そんなところを舐められるなんて、頬に熱がこもる。
黙りこんでいると、頬に大きな湿布を貼られた。傷薬を塗られ包帯を巻かれる。カイルさんは慣れているのか、痛みを確かめてくれながも、するすると手当ては進んだ。
最後にカイルさんは、僕を怖がらせないように、声をかけてから、バスタオルをはだけさせた。上半身の前面が露わになる。
「跡にならないといいな。」
そう言って、カイルさんは僕の胸の傷に舌を這わせた。
「ひゃっ。」
思わず声が出て、口を手で塞ぐ。何度もそこを舐められ、湿った音が響いた。
「カ、カイルさんっ。」
なんとか呼びかけると、カイルさんの舌が止まる。
「すまん、止まらなくなりそうだ。」
それって、やっぱり、そういうこと?
「カイルさんは、えっと、あの、僕のこと……。」
「好きだって言っただろ。食べてしまいたいよ。ハルカはこういうことは嫌か?」
「い、嫌じゃないけど、あの、僕、そいういうことしたことなくて、それに、僕、男ですよ?」
「男なのは知ってる。」
カイルさんは僕にバスタオルをまたきちんとかけて、ソファの前に跪いた。そして、僕の両手を取る。
「あんなことがあったハルカに、今告げるべきじゃないと分かってる。もう、ゆっくり休ませてあげなくてはいけないことも。」
親指でそっと僕の手の甲を撫で、真剣な目をした。
「ハルカ、俺の伴侶になってほしい。」
「はっ、伴侶って、奥さんってこと?いきなり?!僕のこと、そういう意味で、えっと、」
カイルさんが聞きなれない言葉を口にする。僕はもういっぱいいっぱいで、何がなんだか分からない。
「そうだ。お前の伴侶になりたい。ハルカの居場所になりたい。俺じゃ、ダメか?」
強い視線が弱まり、僕の大好きな深い青色が不安そうな色を乗せる。
「っダメじゃない。」
咄嗟に言葉が出ていた。次の瞬間、きつく抱きしめられる。
「痛っ。」
頬が当たり、声が漏れた。カイルさんはばっと体を離し、慌てて謝る。
「すまない。…今日はもう休もうな。何か食べられそうか?」
色んなことがあったせいか、お腹がすいた感じはしないので首を振る。しかし、スープだけでも摂るようにと、カイルさんが部屋を出ていった。
カイルさんがいない間にパジャマに着替えておく。ボタンを留める時に、胸の傷が見えてさっきのことを思い出し、1人赤くなる。今日はもう容量オーバーだ。考えないようにしよう。
すぐに温かなスープを手にカイルさんが戻ってきた。温かなスープがすぐに出てくるってことは、クロスさんがきっと温めなが僕を待っていてくれたのだろう。皆には明日ちゃんと謝ろう。
ベッドに入ると、急に眠気が襲い、おやすみなさいをはっきり言えたか覚えていない。
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