拾われた後は

なか

文字の大きさ
48 / 53

番外編 相談

しおりを挟む
   最近僕にあることで悩んでいる。
元々カイルさんにはすごく優しくされていたが、そこになんていうか、甘さが加わり、どうしたらいいのかわからない。いや、嬉しいんだけど、恥ずかしさが上回る。

「おい、いつまでやるんだ。」

   クロスさんから声がかかり、ハッとして手元を見ると、良い感じのミンチが出来上がっていた。

 「どうした、なんか悩んでんなら聞くぞ。まだ時間あるし、どうせカイル様のことだろうけど。」

   クロスさんが飽きれたように言う。こんなこと聞けるの、今の僕には目の前の人しかいない。意を決して、クロスさんに聞くことにする。

「あのですね、実は、今度のお休みにカイルさんのご両親に挨拶に行くって言われてて……。」

「おぉ、結婚の挨拶ってやつだな。で?」

   興味深そうな顔で話の先を催促される。

「僕、カイルさんのご両親に、息子さんを僕に下さいって頭下げたらいいんですよね?」

   ぶはっとクロスさんが吹き出した。そのままゲラゲラ笑い出す。

「ちょっと!僕、真面目に悩んでるのに!」

   クロスさんはお腹を抑えて、くの字になって笑い続けてる。自分が聞いたくせにひどい。
   だって結婚のご挨拶と言えば、それしか分からないし。

「だって、僕にはよく分からないけど、カイルさんっていいお家のお坊ちゃんなんでしょ?しかも長男だし。僕は迷い人だし、男だし、絶対反対されると思って。殴られる覚悟でそれくらいのこと、言わなきゃかなって思ってるんですけど。」

  言葉が出ないくらい、クロスさんが「お坊っちゃん」、「殴られたら死ぬぞ。」とか言いながら、さらに笑い転げている。
   最初、職人気質の怖い人かと思ったけど、確かに料理には妥協しないが、涙脆くて、笑い上戸なのが段々わかってきた。まだ涙目でひーひー言ってるので、憮然とした顔で収まるのを待つ。

「笑いすぎです。」

「悪い。あー腹痛て。まぁさ、カイル様は確かに名家の長男だけど、そのカイル様がお前と一緒になりたいって言ってんだから、自信持てよ。な?」
   
「そうだけど、他人事だと思って。跡取りだって……。」

「まぁ、子供はしょうがないさ。俺だって、出来れば産んでやりてーなーって思うこともあるけどさ、こればっかはどうしようもないんだよ。残酷な言い方かも知んないが、まだ存在してないものよりも、目の前の好きなヤツと一緒に生きることが、何より大事ってことだと俺は思うぜ?」

   この国は同性も異性も結婚できる。けれど、なんとなく納得できなかった僕に、クロスさんは明るい顔できっぱり言った。

「え、俺だってって、クロスさんって……。」

「おう、旦那がいるぜ。」

「えーーー!そうなの?知らなかった!!」

   思わず丁寧語も吹っ飛んでしまうほどの衝撃だ。この国は兄弟が多いこともあり、同性婚で、子供がいないパートナーでも特に問題はなく、1/3ほどが同性婚だと聞いていた。しかし、今までの常識で考えてしまうから想像できなかったけれど、こんなに身近にいたとは驚きだ。
   ちょっと照れながら、誇らしげなクロスさんの顔を見てたら、少し心が軽くなった。


   気を取り直して料理にむかう。挑戦しているのはハンバーグ。この国にはミンチ料理がないらしい。似たような材料を集めて今日は試作だけど、上手くいったらカイルさんに食べてほしい。
   たとえ、僕が子供を産めなくても、カイルさんのいない未来は考えられないし、考えたくない。
   だからいつか、カイルさんの家族にも料理を食べてもらえる日が来ると嬉しいのだけれど。



   
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

処理中です...