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第二章 藍と学校

131. 天の川だが、差別主義者ではない。 Milky Way, but Not Racist.

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 《……雷霆エレクトールの――》
 《……遺骨オステオンの――》

 《《――憤怒イーラ……!!》》
 
 そこからは速かった。ゲアーターの雷撃が忠実なる騎士ロイヤル・ナイトの全てを貫き、感電させ……死に追いやった。

「クソっ……“嘲笑のマイペ――!!」 

 アガ・ハナシュは即座に心を込めた言葉で対抗しようとするが、余りにもヘルツ発現はつげん速度が違いすぎて反応できなかった。

 ハナシュは言葉を続けるようなことが出来なかった。

 ……全身を骨のヘルツで貫かれて、散華したからだ――。

 ◇◆◇

 ゲアーターが落ち着き払って夜に向けて言葉を放つ。

「……終わったな。エゴペー、お前はこの満身創痍のクソ野郎……砂漠の黒死病デシエルト・ペスト、ザミール・カマラードを骨で拘束してくれ。
 それと、アイを護っててやってくれ。
 おれは他の生徒たちのもとへ向かう――」

 ◇◆◇

 「――それと、アイ。」

 ゲアーターはやさしい笑顔で、ほんとうに、ほんとうにやさしい笑顔で言った。

「……よく一人で頑張った。ここに来る途中で救難信号を出した生徒から聞いたぞ。皆を守るために砂漠の黒死病デシエルト・ペストを一人で引き付けたんだってなぁ……?まだまだ1年生のひよっこのクセによくやりやがる。」

 そう言いながらエゴペーに抱きしめられるがままになっていたアイに近づき、グリグリとやや無作法にその頭を撫でつける。

「……無茶した“お叱り”はエゴペーが、“心配”はシュベスターがするだろうから……俺は“褒めとくだけ”にしとくぜ。よくやったなアイ。
 ……流石、だ。
 
 それとこれは先刻さっきも言ったが……流石、俺の弟だ。」

 やはりミルヒシュトラーセ家であることを先にげる兄。

 アイは決して姉たちには見せない、男兄弟にしか向けないニカッとした表情で言い返す。

「ふふんっ……わたくしを誰だと思ってるんですか……パンドラ最強の……最高のおにいさまである貴方の弟ですよ?
 なら、わたくしに勇気があるのなんて当たり前ですよ?」

「ほ~ん?へ~?よし……!」

 ゲアーターはアイをニヤニヤとした顔になって、アイをコショコショとこしょばせる。

「ナマイキな弟はこうだ~!」 

「わわっ!やめてくださいっ!……ふふっ!笑うとまだ身体中が痛いんですから~!あははっ!」

「ほらほらアイちゃん逃げちゃダメよ~。」

 ◇◆◇

「……はぁはぁ……ひどい目にいました……。もうお婿むこにいけません……。」

「……よしっ!満足したし!物量差的にもう終わってると思うが、一応俺もナウチチェルカ教官の援護に向かうか……まぁもう援護の必要がないぐらい敵を撤退させてると思うが……一応な。」

「!……チェルせんせーはご無事でしたか!?」

 アイが身体の痛みなんてそっちのけで叫ぶ。

「あぁ……俺とエゴペーは、
 『アイがザミール・カマラードを引き付けてこっちの方角に独りで行った。』
 っていうことはナウチチェルカ教官から聞いたんだ。」

 アイはほっと胸を撫でおろす。

「……そうですか……良かったです……。」

「にしてもやっぱりやべぇなあの教官。俺ら救援隊の本陣がこなきゃあ恐らく忠実なる騎士ロイヤル・ナイトに殺されるか、散華してただろうが……。

 たった独りであそこまで新生ロイヤル帝国の連中相手に暴れられるのは……学園であの教官だけじゃねぇかなぁ?
 “ナウチチェルカ・ジ・インビンシブルむてきの”とはよく言ったもんだぜ……。」

 ◇◆◇

砂漠の黒死病デシエルト・ペストは屈強な獣神体アニムスの男だと聞いていたけど……まさか獣神体アニムスの女だったなんてねぇ……のかしら?ねぇアイちゃん?」

 ゲアーターが本陣と合流しに行き、天の川の流れる夜も少しずつ白んできた。夜明けだ……。

 それは士官学生たちの、ナウチチェルカの……そしてアイの戦いの終わりを意味していた。

 朝日が少しずつ昇る。

 骨の檻に捕らえられたザミールの方へ、アイは姉の手を解き、自分の足で歩を進める。

「アイちゃん……?」

 そして、アイは骨のおりに背を預け、腕を組み胡座あぐらをかいているザミールの前に座り込んだ。
 
 そして薄明はくめいの夜明けの中、今一度アイ・ミルヒシュトラーセとザミール・カマラードは対面した。

「……エゴおねえさま……この檻を解いてくださいませんか?」

 ザミールが驚く。

「アイ!?……お前何言ってんだ?」

 アイの突然の発言にエゴペーは驚嘆びっくりする。

「……アイちゃん……その人は、砂漠の黒死病デシエルト・ペスト……反政府組織レジスタンスのリーダーで……ミルヒシュトラーセ家の敵よ……?」

 アイがじっとエゴペーの瞳を見つめる。サファイアの瞳をした目を――。

「エゴおねえさま、
 『私たちミルヒシュトラーセ家の敵』
 とおっしゃいますが……わたくしたちがと言ってくださったのはエゴおねえさまですよね……?
 
 あの……おにいさまの昔話を一緒に聞いたときに――」

 エゴペーはあの時のことを思い返す。

 ◆◆◆

「……なるほど。アイちゃんはそう考えるんだね……。。小さい頃からずっと病でとこせっているし。ゲアーターのいう、甘さと苦さが混じった世界を経験したことがないのかも。

 でも、だからかな。……いや、それになにより、私はし……。うん……だからだと思う。私の思想の差別思想が根付かなかったのは。

 アイちゃんと私がまだ、まだそういう思想に染まっていないのは、共通点が多いからだと思うんだ。」

「共通点……ですか?」

「うん、そう。まず、私たちは、お母様のほんとうの子供じゃない。だから、

 そしてアイちゃんは別邸で、私はベッドの上に、引きこもった生活をして世間を長い間知らなかったこと。お父様は私にほんとうにやさしくて……そこだけが違うけど……。ごめんね、アイちゃん。」
 
 ◆◆◆

「確かに……言ったけど……。」

「わたくしたちは、
 “ミルヒシュトラーセだけど、差別主義者ミルヒシュトラーセじゃない”……。」

「そうね……そう……。」

 アイが檻の中のザミールに手を伸ばしながら言う。

「この方……ザミールはミルヒシュトラーセ家を……このパンドラ公国に蔓延はびこる差別構造を打ち壊そうとする者です。

 ……果たしてわたくしたちは敵でしょうか?味方でしょうか?それとも――?

 ……それをわたくしは見極めたいのです。
 ――対等な“対話”で。」

「……ミルヒシュトラーセ家うちを壊す者……。」

 エゴペーは満身創痍のザミールに目をやったあと、こちらもまた怪我だらけのアイのサファイアの瞳を見た――

 ――この世で“唯一”、サファイアの瞳を……。オイディプスちちの瞳にはない青空の輝きだ。

「はぁ……分かったわ……弟のかわいいワガママを聞くのもおねーちゃんのつとめだしね。……それに随分とアイちゃんが“こころを許して”いるみたいだし……。
 
 だけどよく聞いて……ザミール・カマラード……もしアイちゃんに少しでも危害を加えようとすれば、私の骨のヘルツがアナタの頭蓋ずがいを砕くわ……分かった?」

 ザミールはうなずく。

「あぁ、分かった。
 ……アイ……それにエゴペー・ミルヒシュトラーセ……感謝するぜ。」

 ザミールを包んでいた骨の檻が開き地面に沈んでいく、空にほどけないということは、エゴペーがいつでもアイを護れるように地面の下にヘルツを残しているのだろう。

 ザミールはそのことに気がついたが、アイは気が付かなかった。

「それで?……アイ。わざわざ拘束を解いて、胸襟きょうきんを開いて……膝を突き合わせて何が話したい?」

「あ゙ぁ゙~疲れましたっ!」

 アイがザミールの胡座のなかに座り込む。そして、相手に全幅の信頼を寄せている事を表すように、全体重を背中側……ザミールの胸に預ける。

「アイちゃん!?」

「大丈夫です。エゴおねえさま。ザミールはわたくしに危害を加えたりしません。」

「おう!エゴペー・ミルヒシュトラーセ安心してくれ。」

 今日初めて会ったばかりなのに、一夜を共にしただけなのに、生来せいらいの親友のように振る舞う二人に困惑するエゴペー。

「……?……アイちゃん?……その人とはどういう?」

「……で、アイ。何を話してーんだよ?」

 アイとザミールは同じ方向を見ていた。

 同じ夜明けを、同じように傷だらけで、同じように打ち捨てられてうらぶれた表情で。

 二人とも大魚と三日間夜通し戦った老人のような面持ちだった……しかし、彼らはその老人と同じように、決してその瞳から闘志を失わなかった。

 次のアイの発言はエゴペーとザミールを驚愕させた。

「――逃げろ。ザミール……おにいさまが戻って来る前に。……おれがお前を逃がしてやる。だから……アデライーダさんのために……逃げるんだ。」 




ーーーーーーーー
今日がファンタジー小説大賞の投票最終日です!
何卒投票お願いします。
どこかの項目で入賞できたら書籍化のチャンスがあるので……!!

10月から一旦、水・金・日の週3更新にします!
10/3(金)からスタートします。
連休や祝日には毎日更新すると思います!
また、書き溜めが溜まったら毎日更新に戻そうとも考えています!

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