神ちゃま

吉高雅己

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神ちゃま

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 もう6年か。ここの駅で降りるのも。
 3年引っ越さないってことは、誰だったか言ってたな、気に入ったってことだって。
 この生活でこんな人生で、いいのか。普段は家で発泡酒のはずが駅前の店にふらりと入っていた。


 
 さして旨い訳ではないよな。店から出て二三歩あるいたか。電柱の影から子犬ぐらいの大きさの巫女姿の女の子が現れた。
「こんにちは」
 比較的明るい声だった。不快じゃない。酔ったかな、たった一杯で。
「こ、こんに、こんばんは、だろ」
「うふふ、こんばんは」
 声に濁りもない。素直な笑い声を久しぶりに聞いた。でも、小人なのか、それにしても小さすぎる。
「私は、神様です」
「神ちゃま」
「ええ、そうです」



 いよいよ、おかしくなった。小っちゃい巫女姿の女の子が神ちゃまだと言ってる。
「その、神ちゃまが、僕に用でもあるの」
「助けて下さい」
 神ちゃまが助けを求めてるのか。なんで。
「神ちゃまでしょ」
「ええ、神様です」
「神ちゃまなのに、僕に助けて欲しい」
 どうして。どうなってるの。
「お礼に、なんでも願いを叶えてあげます」



「いや、なんでも叶えることが出来るなら、まず、自分を助けろよ」
「ええ、私もそうは思うんですけど、助けてもらわないと、出来ないんです」
「いや、ムリ無理。神ちゃま助けることが出来るなら、それこそ自分を助けるから。神頼みはするけど、神助けは無理だよう」
 とても残念そうな困った顔してる。俺、疲れてるよなって思い、二三度首を振ると、なにも見なかったことにして歩き出した。



 背中に、ため息とつぶやき声が聞こえた。
「はあ、どうしてダメなんだろう。神だって信じてくれれば、いいのに。
 誰も信じてくれないから神の力が出せないだけなのに。
 一人だけ、一人だけでも信じてくれるだけでいいのに。
 どうして誰も助けてくれないかな」

 さっと振り向く。電柱だけが見えた。
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