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Tier99 メッセージ
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カメラに視線を送ってくる謎の女を見つけて、そこから同じように視線を送ってくる若い男を見つけてからは芋づる式だった。
最初に見つけた女の前後の映像を調べていくと、老若男女問わず様々な位置から立ち止また状態でカメラに視線を送ってくる者達が見つかった。
全員一様に閉じていた口を僅かに開いた後、すぐ我に返ったように歩き出している。
伊瀬達に知らせた方がいいか?
いや、まだ不確定な要素が多すぎる。
今の状況で、このことを伝えれば余計に混乱を波及させてしまうだけだろう。
この段階で知らせるのは得策じゃない。
俺自身がもう少し状況を把握して、何が起こっていたのかを整理してからの方がいい。
俺は他の映像にも似たような行動をしている人間が映っていないか調べることにした。
手始めに、同じ時間帯を映した別の画角からの映像を調べる。
「……いない」
見落としたか?
そんなはずはない。
注意深く見ていたんだ。
俺の動体視力であれば見落とすはずがない。
もっと他の映像を調べる必要がありそうだな。
--------------------------
「該当する映像はゼロか……」
ある程度の映像をザっと調べ上げたが、カメラに視線を送ってくる者は一人も映っていなかった。
何人かはカメラに視線を向けた者もいなくはなかった。
しかし、それらは全て偶然であり一瞬であった。
意図的にカメラを凝視する人間など一人もいない。
「結局、この映像にだけというわけか……」
俺はもう一度、例の映像を見なおす。
映像に映っている群衆の中から誰がカメラに視線を向けていて、次に誰がどこから視線を向けてくるのか、俺はもう覚えてしまっていた。
「うん?」
若い男から中年の女、中年の女から中年の男、中年の男から若い女、若い女から若い男、若い男から若い男――
といった具合に、よどみなく目を動かしていて俺はあることに気づいた。
「……いち、に、さん……いち、に、さん……いち、に、さん……」
カメラに視線を送ってくる人間は規則的に移り変わっていた。
前の人間が口を閉じて歩き始めてから、おおよそ三秒後に次の人間がカメラに視線を向けてくる。
個々が集まって群れを成しているのではなく、まるで一つの生き物のように一体化しているような印象を与えられる。
「組織的なものなのか? それにしては、統一感がありすぎる」
ネット界隈か何かで流行っているオフ会とかか?
それとも、何かの抗議活動か?
「……」
ロクな仮説を立てられてないな。
スクランブル交差点にある定点カメラを一つだけ凝視するオフ会ってなんだよ。
抗議活動なら訴えたいことを伝えなきゃ意味がないだろ。
数秒間、カメラを凝視したからって何が伝わるっていうんだ。
……待てよ。
伝える?
「……ッ! メッセージか!」
クソ!
なんで、こんな簡単なことに気づかなかったんだ。
奴らはカメラに視線を送ってきていただけじゃない。
必ず僅かに口を動かしていた。
あれは、ただ口を動かしていただけじゃない。
何かを言っていたんだ。
俺は荒い操作で口の動きを読み取る読唇術のソフトを立ち上げる。
ソフト自体は開発途中のいわゆるベータ版であるが、読唇術ように独自開発されたAIを搭載しているため精度はまずまずといったところだろう。
細かい部分は自力で補えば問題ないはずだ。
立ち上がったソフトを使って、最初の赤いニッドを着た若い女の口元を読み取り範囲に指定して映像を流す。
女の閉じていた口が開いてすぐに閉じる。
すぐさま一時停止ボタンを押す。
この短さだと一言どころか一文字しか発していないな。
そのせいで、メッセージであることに気づくのが遅れたのかもしれない。
画面には「解析中…」の文字が浮かんでいる。
数秒経って、「認識結果『ハ』」と表示された。
「やはり、ただ口が動いていたわけではなかったか……」
嫌な汗が一筋、こめかみから流れていくのを感じる。
「となると、他も同様と考えてよさそうだな」
今度は次に視線を向けてくる緑色のパーカーを着た若い男の口元に解析をかける。
そして、画面に映されたのは「認識結果『キ』」という文字。
俺が見つけたカメラを凝視してきた人間の数は21人。
見落としがないと仮定して、あと19回この作業を繰り返せばメッセージの内容がわかるわけだ。
ソフトの精度がまずまずだとしても、文の流れで意味は捉えられるだろう。
その辺は臨機応変にだな。
とりあえず、解析が終わった順にメモしていくか。
--------------------------
全ての解析が終わり、俺はメモした文字を眺める。
「『ハキソンヤシノサチノクガダイサカタミクガラ』……意味わかんねぇな」
ま、それもあたり前か。
デタラメに文字を並べたって意味なんかわかるわけがない。
メモした文字を再生される順、つまり時系列順に並べ直す。
「え~っと、『サガラサクヤノシハキミタチノカンソクガイダ』……は?」
文法的に正しく、意味を成す言葉の並びをした文であるはずなのに、俺にはその文が何を意味しているのかわからなかった。
頭の中が完全にホワイトアウトした気分だ。
『サガラサクヤノシハキミタチノリヨウイキガイダ』
「落ち着け。冷静になれ。このメッセージが伝えようとしていることは……」
『佐伽羅朔也の死は君達の観測外だ』
そのメッセージを頭が理解した時、俺は情けなくもただ愕然と立ち尽くしていた。
最初に見つけた女の前後の映像を調べていくと、老若男女問わず様々な位置から立ち止また状態でカメラに視線を送ってくる者達が見つかった。
全員一様に閉じていた口を僅かに開いた後、すぐ我に返ったように歩き出している。
伊瀬達に知らせた方がいいか?
いや、まだ不確定な要素が多すぎる。
今の状況で、このことを伝えれば余計に混乱を波及させてしまうだけだろう。
この段階で知らせるのは得策じゃない。
俺自身がもう少し状況を把握して、何が起こっていたのかを整理してからの方がいい。
俺は他の映像にも似たような行動をしている人間が映っていないか調べることにした。
手始めに、同じ時間帯を映した別の画角からの映像を調べる。
「……いない」
見落としたか?
そんなはずはない。
注意深く見ていたんだ。
俺の動体視力であれば見落とすはずがない。
もっと他の映像を調べる必要がありそうだな。
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「該当する映像はゼロか……」
ある程度の映像をザっと調べ上げたが、カメラに視線を送ってくる者は一人も映っていなかった。
何人かはカメラに視線を向けた者もいなくはなかった。
しかし、それらは全て偶然であり一瞬であった。
意図的にカメラを凝視する人間など一人もいない。
「結局、この映像にだけというわけか……」
俺はもう一度、例の映像を見なおす。
映像に映っている群衆の中から誰がカメラに視線を向けていて、次に誰がどこから視線を向けてくるのか、俺はもう覚えてしまっていた。
「うん?」
若い男から中年の女、中年の女から中年の男、中年の男から若い女、若い女から若い男、若い男から若い男――
といった具合に、よどみなく目を動かしていて俺はあることに気づいた。
「……いち、に、さん……いち、に、さん……いち、に、さん……」
カメラに視線を送ってくる人間は規則的に移り変わっていた。
前の人間が口を閉じて歩き始めてから、おおよそ三秒後に次の人間がカメラに視線を向けてくる。
個々が集まって群れを成しているのではなく、まるで一つの生き物のように一体化しているような印象を与えられる。
「組織的なものなのか? それにしては、統一感がありすぎる」
ネット界隈か何かで流行っているオフ会とかか?
それとも、何かの抗議活動か?
「……」
ロクな仮説を立てられてないな。
スクランブル交差点にある定点カメラを一つだけ凝視するオフ会ってなんだよ。
抗議活動なら訴えたいことを伝えなきゃ意味がないだろ。
数秒間、カメラを凝視したからって何が伝わるっていうんだ。
……待てよ。
伝える?
「……ッ! メッセージか!」
クソ!
なんで、こんな簡単なことに気づかなかったんだ。
奴らはカメラに視線を送ってきていただけじゃない。
必ず僅かに口を動かしていた。
あれは、ただ口を動かしていただけじゃない。
何かを言っていたんだ。
俺は荒い操作で口の動きを読み取る読唇術のソフトを立ち上げる。
ソフト自体は開発途中のいわゆるベータ版であるが、読唇術ように独自開発されたAIを搭載しているため精度はまずまずといったところだろう。
細かい部分は自力で補えば問題ないはずだ。
立ち上がったソフトを使って、最初の赤いニッドを着た若い女の口元を読み取り範囲に指定して映像を流す。
女の閉じていた口が開いてすぐに閉じる。
すぐさま一時停止ボタンを押す。
この短さだと一言どころか一文字しか発していないな。
そのせいで、メッセージであることに気づくのが遅れたのかもしれない。
画面には「解析中…」の文字が浮かんでいる。
数秒経って、「認識結果『ハ』」と表示された。
「やはり、ただ口が動いていたわけではなかったか……」
嫌な汗が一筋、こめかみから流れていくのを感じる。
「となると、他も同様と考えてよさそうだな」
今度は次に視線を向けてくる緑色のパーカーを着た若い男の口元に解析をかける。
そして、画面に映されたのは「認識結果『キ』」という文字。
俺が見つけたカメラを凝視してきた人間の数は21人。
見落としがないと仮定して、あと19回この作業を繰り返せばメッセージの内容がわかるわけだ。
ソフトの精度がまずまずだとしても、文の流れで意味は捉えられるだろう。
その辺は臨機応変にだな。
とりあえず、解析が終わった順にメモしていくか。
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全ての解析が終わり、俺はメモした文字を眺める。
「『ハキソンヤシノサチノクガダイサカタミクガラ』……意味わかんねぇな」
ま、それもあたり前か。
デタラメに文字を並べたって意味なんかわかるわけがない。
メモした文字を再生される順、つまり時系列順に並べ直す。
「え~っと、『サガラサクヤノシハキミタチノカンソクガイダ』……は?」
文法的に正しく、意味を成す言葉の並びをした文であるはずなのに、俺にはその文が何を意味しているのかわからなかった。
頭の中が完全にホワイトアウトした気分だ。
『サガラサクヤノシハキミタチノリヨウイキガイダ』
「落ち着け。冷静になれ。このメッセージが伝えようとしていることは……」
『佐伽羅朔也の死は君達の観測外だ』
そのメッセージを頭が理解した時、俺は情けなくもただ愕然と立ち尽くしていた。
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