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戦場の支配者
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ウエスバスは侯爵軍の本隊を率い、後方で待機していた。
突如、地を揺るがす衝撃が走る。
「な、何だ! 今のは……!?」
地鳴りのような振動が後方にいる彼のもとまで届き、空気そのものが震えている。
「……何が起きた?」
嫌な予感が胸を突く。
「前線に出る!」
「危険です!」
「危険でない戦場なんてない!」
副官の制止を振り切り、ウエスバスは馬を蹴った。指揮官が戦況を見ずにいる――それこそ最大の危険だ。
前線の侯爵軍は、敵の仕掛けた罠にまんまと嵌り、戦意を喪失していた。報告を受けたウエスバスは即座に撤退を許可する。
「敵に再突撃する度胸なんざ、今の奴らにはないだろう……」
そう呟き、前線に到着した瞬間――目の前の光景に、彼は息を呑んだ。
ゴブリンと侯爵軍が、入り乱れて戦っている。
どちらが優勢かといえば、明らかに侯爵軍だ。
剣と剣がぶつかり合う音が雨のように響き、血飛沫が宙を舞う。
オタルの姿もあった。彼自身、剣を振るいながら前線で戦っている。
「おいおい……お前まで前に出てるのか!」
ウエスバスは慌てて近衛兵に指示を飛ばす。
「魔術師と弓隊を守れ! なぜ戦士が全員突入してるんだ!」
その時、少女の声がした。
「あら、ウエスバス。もう来たの?」
振り向くと、そこには腕を組んで戦況を眺めるセレナがいた。
髪が風に揺れ、まるで戦場そのものが彼女の舞台のようだった。
「ああ、激しい揺れがあったからな……お前の仕業か?」
「そうよ。ちょっと“挨拶”しただけ」
セレナは笑い、指をさす。その先では、ゴブリンの防衛柵が火の海に包まれ、黒煙を上げていた。
「セレナは戦わないのか?」
「順番でしょ。今はオタルたちの番。……それに、これはわたしの戦いじゃない」
肩をすくめ、彼女は淡々と告げる。
「弱い者いじめ、嫌いなの」
その口調は軽いのに、なぜか背筋が寒くなる。
ウエスバスは戦場を見渡した。
血に塗れながらも前線で剣を振るう貴族たち。普段は腰抜けの彼らが、まるで別人のように戦っていた。
「あいつら……どうしたんだ?」
セレナがくすりと笑う。
「ふふ、この線より下がったら“敵前逃亡”と見なすから殺す、と言っただけよ」
視線の先、ウエスバスの足元には一本の線。
その線が、彼らを戦いに駆り立てていた。
戦場を支配しているのは、もはや剣でも軍でもない。
――セレナという名の“絶対者”だった。
※
ゴブリンキングは焦っていた。
「何だ!あの攻撃は……」
一人の小娘が剣を振ると、自慢の防御柵が燃え落ちる。
「撤退だ、もう俺は約束を果たした」
思案している間に、狼の遠吠えが響き、侯爵軍が攻撃を開始する。
「まずい、まずいぞ……あれは狼人だったんだ!」
どうする、戦いに勝利して名を轟かせるか、それとも……。体が危機を訴えている。
ゴブリンキングは、巨大であるにもかかわらず、それを感じさせない速さで味方を見捨て逃げ出した。
だが、逃げる先には狼たちの気配。
「くそっ、囲まれてる……」
魔物の森へ逃げようとした王は、再び街道に姿を現した。
剣を抜き、周囲を伺う。
「誰もいない……オークたちのところに合流しよう!」
ふうっと息を吐いたその時、背後から声がした。
背筋に寒気を感じ振り向くと、狼人族の娘が一人、立っていた。
「そう、オークなのね……悪さをする真犯人は?」
「……」
手ぶらで退却したとなれば格好がつかない。だが、奴らが嫌う狼人族を捕まえていけば、喜ぶだろう。
「そうだ、俺たちは傭兵で従っただけだ」
ゴブリンキングはゆっくりとセレナに近づき、剣を下ろして薄笑いすら浮かべる。
その攻撃範囲に入った瞬間――剣を振り上げ、彼女の腕を狙った。
捕らえたはずの相手、血が噴き出るかと思ったその瞬間、姿は消えていた。
「何してるの? 敵意が出過ぎよ!」
ゴブリンキングの目の前の相手は幻影だった。
森にいたゴブリンたち、それは人の冒険者に産ませた子鬼たち、そして狼たちがいつの間にか二人を取り囲んでいた。
「おい! 何をしている? 狼を殺せ!」
王は大声で威嚇する。
「いえ、私たちは降伏しましたから」
「何を言ってる。俺の指示が聞けないのか!」
青筋を立てて子供たちを睨むが、全員不敵な薄笑いを浮かべている。
「後で覚えていろ!」
「お前、人気が無いんだな。さあ、やろう!」
彼女の言葉で決闘が始まる。
ゴブリンキングは背に背負っていた盾を左手に持ち、右手には大剣。
「ふうん。悪く無いわね」
彼女は剣を肩に担ぎながら、じっと鑑定を行う。
ゴブリンキング
HP 712
MP 384
スキル 魔法盾、破壊剣、自然治癒、魔法防御、麻痺突き、命令
「余裕をかまかしているとはな!」
セレナはキングの剣を受け止める。
「嘘だろう!」
上から力任せに振り下ろすが、剣はびくともしない。
左手の盾で吹き飛ばそうと前に出ると、セレナはすっと下がる。
「この盾、邪魔ね」
斬撃一閃、盾は真っ二つになり地面に転がった。
「はぁ、嘘だろ、魔法盾だぞ!」
「魔力を使ってないものには反応しないわよ。そんな貧相な盾には不要」
「くそっ、くらえ!」
ゴブリンキングは得意の突き技を繰り出した。
突如、地を揺るがす衝撃が走る。
「な、何だ! 今のは……!?」
地鳴りのような振動が後方にいる彼のもとまで届き、空気そのものが震えている。
「……何が起きた?」
嫌な予感が胸を突く。
「前線に出る!」
「危険です!」
「危険でない戦場なんてない!」
副官の制止を振り切り、ウエスバスは馬を蹴った。指揮官が戦況を見ずにいる――それこそ最大の危険だ。
前線の侯爵軍は、敵の仕掛けた罠にまんまと嵌り、戦意を喪失していた。報告を受けたウエスバスは即座に撤退を許可する。
「敵に再突撃する度胸なんざ、今の奴らにはないだろう……」
そう呟き、前線に到着した瞬間――目の前の光景に、彼は息を呑んだ。
ゴブリンと侯爵軍が、入り乱れて戦っている。
どちらが優勢かといえば、明らかに侯爵軍だ。
剣と剣がぶつかり合う音が雨のように響き、血飛沫が宙を舞う。
オタルの姿もあった。彼自身、剣を振るいながら前線で戦っている。
「おいおい……お前まで前に出てるのか!」
ウエスバスは慌てて近衛兵に指示を飛ばす。
「魔術師と弓隊を守れ! なぜ戦士が全員突入してるんだ!」
その時、少女の声がした。
「あら、ウエスバス。もう来たの?」
振り向くと、そこには腕を組んで戦況を眺めるセレナがいた。
髪が風に揺れ、まるで戦場そのものが彼女の舞台のようだった。
「ああ、激しい揺れがあったからな……お前の仕業か?」
「そうよ。ちょっと“挨拶”しただけ」
セレナは笑い、指をさす。その先では、ゴブリンの防衛柵が火の海に包まれ、黒煙を上げていた。
「セレナは戦わないのか?」
「順番でしょ。今はオタルたちの番。……それに、これはわたしの戦いじゃない」
肩をすくめ、彼女は淡々と告げる。
「弱い者いじめ、嫌いなの」
その口調は軽いのに、なぜか背筋が寒くなる。
ウエスバスは戦場を見渡した。
血に塗れながらも前線で剣を振るう貴族たち。普段は腰抜けの彼らが、まるで別人のように戦っていた。
「あいつら……どうしたんだ?」
セレナがくすりと笑う。
「ふふ、この線より下がったら“敵前逃亡”と見なすから殺す、と言っただけよ」
視線の先、ウエスバスの足元には一本の線。
その線が、彼らを戦いに駆り立てていた。
戦場を支配しているのは、もはや剣でも軍でもない。
――セレナという名の“絶対者”だった。
※
ゴブリンキングは焦っていた。
「何だ!あの攻撃は……」
一人の小娘が剣を振ると、自慢の防御柵が燃え落ちる。
「撤退だ、もう俺は約束を果たした」
思案している間に、狼の遠吠えが響き、侯爵軍が攻撃を開始する。
「まずい、まずいぞ……あれは狼人だったんだ!」
どうする、戦いに勝利して名を轟かせるか、それとも……。体が危機を訴えている。
ゴブリンキングは、巨大であるにもかかわらず、それを感じさせない速さで味方を見捨て逃げ出した。
だが、逃げる先には狼たちの気配。
「くそっ、囲まれてる……」
魔物の森へ逃げようとした王は、再び街道に姿を現した。
剣を抜き、周囲を伺う。
「誰もいない……オークたちのところに合流しよう!」
ふうっと息を吐いたその時、背後から声がした。
背筋に寒気を感じ振り向くと、狼人族の娘が一人、立っていた。
「そう、オークなのね……悪さをする真犯人は?」
「……」
手ぶらで退却したとなれば格好がつかない。だが、奴らが嫌う狼人族を捕まえていけば、喜ぶだろう。
「そうだ、俺たちは傭兵で従っただけだ」
ゴブリンキングはゆっくりとセレナに近づき、剣を下ろして薄笑いすら浮かべる。
その攻撃範囲に入った瞬間――剣を振り上げ、彼女の腕を狙った。
捕らえたはずの相手、血が噴き出るかと思ったその瞬間、姿は消えていた。
「何してるの? 敵意が出過ぎよ!」
ゴブリンキングの目の前の相手は幻影だった。
森にいたゴブリンたち、それは人の冒険者に産ませた子鬼たち、そして狼たちがいつの間にか二人を取り囲んでいた。
「おい! 何をしている? 狼を殺せ!」
王は大声で威嚇する。
「いえ、私たちは降伏しましたから」
「何を言ってる。俺の指示が聞けないのか!」
青筋を立てて子供たちを睨むが、全員不敵な薄笑いを浮かべている。
「後で覚えていろ!」
「お前、人気が無いんだな。さあ、やろう!」
彼女の言葉で決闘が始まる。
ゴブリンキングは背に背負っていた盾を左手に持ち、右手には大剣。
「ふうん。悪く無いわね」
彼女は剣を肩に担ぎながら、じっと鑑定を行う。
ゴブリンキング
HP 712
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「余裕をかまかしているとはな!」
セレナはキングの剣を受け止める。
「嘘だろう!」
上から力任せに振り下ろすが、剣はびくともしない。
左手の盾で吹き飛ばそうと前に出ると、セレナはすっと下がる。
「この盾、邪魔ね」
斬撃一閃、盾は真っ二つになり地面に転がった。
「はぁ、嘘だろ、魔法盾だぞ!」
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