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複合魔法
しおりを挟む比較的濡れていない場所に敷布を敷き、干し肉とパンの食事をとった。
「ところで、セレナのリュックには予備のパンと干し肉、入れてあるよね?」
「無い」
「え?」
「無くなった。お腹にある。昨日の夜中にお腹減ったからルナと食べた。アキラ起こさなかった。セレナ、偉い!」
「そうか……じゃあ、また予備をあげるね」
「こら、アキラ!甘やかしすぎ!」ラピスの怒った声が飛んできた。
大地がみるみる乾いていき、代わりに暑さが増してくる。
変わり映えのしない野原を歩き続けていると、急に景色が変わった。一面の花畑が広がり、その先に林が見える。その奥には、石造りの塔が頭を覗かせていた。初めて見る構造物だ。
※
花畑で楽しげに遊びながら進んでいたセレナと子犬の雰囲気が、林が近づくと一変した。セレナは恐怖でアキラの背中に隠れ、子犬も彼女にぴったり寄り添う。
林の先に黒い影がちらつき、蜂の羽音がかすかに聞こえた。
「どうした?」アキラが驚きつつ尋ねる。
「蜂がたくさんいる……」セレナは震える声で答え、顔が青ざめていた。
「大丈夫。攻撃しない限り、こっちからは手を出さないよ」アキラは優しく言ったが、セレナの恐怖は消えない。
「セレナ、蜂が嫌い……」彼女は小さくつぶやき、子犬も「ワオーン」と同意の声を上げた。
セレナは幼い頃に蜂に刺され、危うく命を落としかけたことがある。それが彼女のトラウマとなっている。子犬も、当時セレナを守ろうとして傷を負った経験があるのだろう、石像のように動かなくなっている。
「どうすればいい……?」アキラは焦りながらつぶやいた。林の中から聞こえる蜂の羽音は、ますます大きくなっている。
「アキラ、蜂を倒して!」セレナは必死に頼み、子犬も「ワオーン」と叫ぶ。アキラは彼女たちを見つめ、決断した。塔の近くへ行くには林を越えるしかないが、セレナたちを放置するわけにはいかない。迂回すれば時間がかかりすぎる。
アキラはマップを確認し、魔物の数をチェックした。木々の間にちらつく蜂が見える。数は10匹ほど。
「ラピさん、どうやって倒せばいい?」アキラは助言を求めた。
「蜂は敏捷性が高いから、魔法を強化して遠距離から攻撃するのがいいわね。」ラピスは冷静に答えた。
アキラは決心し、魔法の準備に取り掛かった。
- 火魔法 ファイヤーボール 5sp 1回使用時 MP2 消費 (獲得済み)
- 水魔法 ウオーターボール 5sp 1回使用時 MP2 消費
- 土魔法 アーススパイク 5sp 1回使用時 MP2 消費
- 風魔法 ウインドブラスト 5sp 1回使用時 MP2消費
雷魔法があれば有効だろうが、リストには無い。水や土の魔法は蜂との相性が悪い。となると、威力は単体では弱いが、ファイアーボールと組み合わせれば強力になるウインドブラストが最適だ。
「ラピちゃん、火と風を同時に発動できる?」
「できますよ。威力が増します。」
「よし、それで行こう!」アキラは決意を固めた。もしテストして効果が出なければ、遠回りする覚悟もしていた。
まずは準備だ。アキラは倉庫からマナポーションを3つ、リカバリーポーションを2つ取り出し、そのうちの1つをセレナに手渡した。そして、ナイフを短剣に交換する。
「このポーション、使っても大丈夫かな?」
「弱ポーションですから、今のうちに使いましょう。強くなりましょう」
「セレナ、この短剣とナイフを交換してくれ。使えるか?」
「もちろん!嬉しい!」セレナは大喜びし、短剣をくるくる回して剣の感触を確かめている。その姿はまだ子供ながらも格好良く、アキラの心に誇らしさが込み上げた。
「うまく倒せなかったら、すぐ撤退するからね。すぐに逃げて」
アキラは真剣に頼んだが、セレナは「アキラなら大丈夫!」と笑い、彼の言葉を気に留めなかった。
アキラがそれ以上言う前に、セレナはすでに剣に夢中になっていた。子犬が跳ねるたび、彼女は様々な構えから自在に剣を振り下ろす。その動作はアキラなら数度で疲れてしまいそうな激しいものだったが、セレナは楽しんでいるようだった。
次にアキラは魔法の練習を始めた。ファイアーボールとウインドブラストの同時発動を試み、その効果を確認するためだ。しかし、二つの魔法を同時に詠唱することは不可能だった。
「ラビさん、どうすれば二重詠唱できるんだ?」
「これ、いわゆるお決まりのやつですね。無詠唱でやるわけです。慣れが大事です。」
「慣れ?」
「そうです。譜面がなくても、ピアノを両手で演奏して歌うように。簡単でしょ?」
「全くわからない……」
「つまり、練習あるのみです」ラピスの理解不能なアドバイスにアキラは呆れたが、なぜか彼女がピアノを楽しげに演奏している姿が浮かび、やる気が湧いてきた。
アキラは覚悟を決めた。左手で風魔法、右手で火魔法を発動し、両手を同時に振り下ろして目標に当てる。林から離れた岩場を標的に、練習を繰り返した。
最初はうまくいかず、片方だけが発動したり、全く発動しなかったりと失敗が続いたが、アキラは徐々にこの練習を楽しんでいる自分に気づいた。
ふと振り返ると、セレナは剣の訓練を続けていた。子犬が口に咥えた小さな枝を上手に投げている。セレナは「やあ」と声を上げ、飛んできた枝を見事に二つに切り落としていた。
子犬はどんどん走るスピードを上げ、死角から枝を投げ込むが、セレナはすべてに反応し、切り落としていた。
アキラのMPが尽き、仕方なくマナポーションで回復した。2度目のMPが尽きそうな頃、やっとコツを掴んできた。岩場に残った魔法の痕跡を見て、アキラは「成功だ!」と叫んだ。
「おめでとうございます!」ラビスの声と「すごーい!」というセレナの声が、同時にアキラの耳に届いた。
**ステータス**
アキラ レベル5 HP 33/38 MP25/25 EXP 80/129 ファイアーボール LV6 / ウインドブラスト LV5
セレナ レベル3 HP 15/20 MP 6 /6 EXP 43 /47 親愛度 6
- ゴールド: 595
- 保護時間: 9日
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