13 / 138
蜂
しおりを挟む作戦開始の合図が響く。「セレナ、下がれ!」アキラが短く指示すると、彼女は即座に距離を取り、後方へ移動した。
アキラはマップ機能で魔物の位置を確認し、林の入り口付近に単独でいるキラービーを発見。呪文を無詠唱で発動し、右手を振りかぶってファイアーボールを放つ。
思った以上に強力な火球が飛び出し、数本の木々が瞬く間に燃え尽きた。驚いたアキラは思わず声を漏らす。「え? なんでだ……?」
「スキルレベルが6に上昇しています。日々の訓練の成果です」ラピスが笑いながら答えた。
魔物を野原におびき出す作戦は、最初は思うようにいかなかった。アキラは再び別の場所にいるキラービーを見つけ、もう一度ファイアーボールを放つ。しかし結果は同じだった。
作戦が進まないことにいら立ちを覚えたが、被害なく魔物を倒せていることを考えれば、完全に失敗とは言えなかった。
ただ、セレナと子犬が退屈している様子は見て取れた。特にセレナのじっとした視線がアキラに刺さる。
「セレナ、パンでも食べるか?」アキラがリュックからパンを取り出し、見せる。
「うん、食べたい」
「待機中におとなしくしていられるならな」
「約束する」セレナはパンをすばやく手に取り、元の場所で立ちながら食べ始めた。
セレナは周囲を警戒し、子犬は自分に何ももらえないと気づき、やや不機嫌に「ワオーン」と声を上げた。
しばらくマップを見ていたが、森の魔物たちは動かない。
「仕方がない、引き上げるか、それとも—」
アキラがそう言いかけた瞬間、マップにキラービーの大群が映し出された。
彼らはまっすぐこちらに向かってきている。どうやら野原の花畑を目指しているらしい。
「来るぞ!」アキラは警告を発し、戦闘態勢に入った。セレナと子犬もすでに準備万端だ。
先頭の4匹が、フィンガー・フォーの隊列を組んで悠然と接近してくる。
アキラは両手を広げ、無詠唱で風と火の魔法を同時に展開。
両手を振り下ろし、ファイアーボールとウインドブラストを融合させた灼熱の嵐がキラービーに襲いかかる。
「ファイアーストーム!」
風と火の複合魔法が炸裂し、先頭の1匹と右の1匹が一瞬で燃え尽きた。残りの2匹は熱風に煽られ、飛行が乱れ、錐揉み状態で落下する。
落下する蜂に対し、子犬が跳躍し、鋭い爪で首を斬り落とし、セレナは短剣で逆さ袈裟斬りを繰り出し、蜂の胴を一刀両断にした。一瞬で4匹が倒された。
キラービーを4匹倒しました。
経験値6ポイント獲得しました。(セレナ:4ポイント)。
金40ゴールド獲得しました。
作戦は一見うまくいったが、アキラは油断できない状況を感じ取っていた。キラービーの大群は、まだこちらに向かっていたのだ。
※
蜂の敵対反応は、錐揉み状態の一瞬で群れ全体に伝播し、第2陣、第3陣のキラービーたちが花畑ではなく、こちらに向かって飛んでくる。
アキラは迎撃体制をとり、呪文を組み上げながら射程距離に入るのを待つ。キラービーたちはフィンガー・フォーの隊列を組み、左右に分かれて上空を旋回。攻撃のタイミングをうかがっている。
「退却するという選択肢は?」ラビスが珍しく戦闘中に話しかけた。
「選ばない」
「どうしてですか?」
「逃げきれない。それに、背を向けるのはもっと危険だ」
「では、どうするつもりですか?」
「我慢比べだ。こっちは立っているだけでいい。向こうは、嫌でも先に仕掛けてくるだろう」
アキラはラビスと会話しながらも、集中を切らさないように気を張っている。
セレナと子犬は、アキラの右手側、戦場となる野原の端にある岩壁の下で戦況を見守っていた。
やがて、キラービーたちは旋回を終え、2匹ずつに分かれアキラを中心に四方から包囲する形に移行した。
「まずいな」アキラが呟いた瞬間、キラービーたちは一斉に襲いかかってきた。
「ファイアーストーム!」アキラは正面の蜂に向けて魔法を放つが、蜂たちは急降下して回避。だが、その動きは予測済みだった。
「そこだ!」蜂の動きを読み、再び魔法を放つ。2匹は消滅した。振り向くと、背後から2匹のキラービーが迫っている。アキラは即座に魔法を放ち、さらに2匹を消滅させた。
蜂たちは高速で移動しており、動きが単純で予測がしやすかった。ファイアーストームの連発で、野原には火が上がり、煙が広がって視界が悪化していた。
視界が悪化する中、アキラの前に3列目の2匹の蜂が突然現れた。マップ機能を使う余裕はない。
「しまった……」アキラは不意を突かれ、思わず立ち尽くす。しかし、蜂たちはアキラに到達する前に、セレナの袈裟斬りと子犬の鋭い爪によって屍と化した。
「アキラ、助けた」
セレナは、朝よりも格段に早い動きで、キラービーよりも先に、正確に標的を仕留めた。その動きには、彼女の持つセンスが光っている。
「アキラ、後ろ! 来る!」
セレナの叫びが響いた次の瞬間、濃い煙の中から最後の蜂たちが現れた。
それはキラービーの上位種で、通常の倍ほどの大きさを持ち、明らかに危険な雰囲気を漂わせている。
アキラは咄嗟にナイフを構えた。しかし、蜂は二手に分かれ、左右から同時に襲いかかる。その狙いはアキラの頭と足だ。
「くそ、動きが違う……」アキラは息を呑んだ。蜂の動きは、森の暗殺者のように狡猾で迅速だ。セレナと子犬はアキラを助けようと最大速度で近づくが、まだ距離がある。
アキラは左手で頭を守り、右手を振り回して蜂を防ぐのに必死だ。反撃する余裕はない。
その隙を見て、蜂たちは鋭い針を突き出し、致命的な一撃を狙う為、動きが止まった。
しかし、その一瞬が命運を分けた。
頭を狙っていたアルファ・キラービーは、セレナが投げた短剣で胴体を貫かれ、地面に突き刺さった。
足元を狙ったキラービーは、間に入ってきた子犬の体を刺した。子犬はぐったりと動かない。
「ルナ!」セレナが今までにない大声を上げた。その声が野原と林一帯に響き渡る。
ルナと呼ばれた子犬は、その声を聞くと、さっきまでの状態が嘘のように立ち上がり、全身の毛を逆立て、尻尾を天に突き上げた。キラービーの毒針は折れて毛の間から落ちる。
ルナは逃げようとする蜂を後ろ足で押えつつ、前足と牙で無慈悲に仕留めた。ルナには傷ついた様子は見られない。
「ウオオーン」低く力強い遠吠えが響き渡り、戦いの終焉を告げた。それは紛れもない狼の遠吠えだった。
戦場は静寂を取り戻し、残った煙と炎の匂いが立ち込める中、キラービーたちは完全に撃破された。
アキラは深く息を吐き、ルナとセレナに目を向けた。
「助かったよ、セレナ、ルナ」アキラは微笑みながら言う。
セレナは照れくさそうに頷き、ルナもまた誇らしげに尾を振った。
キラービーを6匹倒した。
アルファキラービーを2匹倒した。
経験値:14ポイント獲得しました。(セレナ14ポイント)
金:110ゴールドを獲得しました。
5
あなたにおすすめの小説
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる