アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

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冒険者ギルドにて

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「今日は珍しく、ギルド長が王都から来ているんですよ。それに、村長や王国の王子も来ているので、今ギルド室を使っています。兄さんを呼んできますね」

小柄なエルフは慣れた手つきで部屋を出ていった。
「王国の王子か!」

「彼らは、ヴァイオレット王女のことを嫌っています」ノワールは陥り深い表情を浮かべた。

 やがて、細身で美しい男のエルフが現れ、ルーカスと名乗った。さっぱりと挟んだ挙手の後、直接本題に切り込む。

「それで、ご使者殿、ご用件は」

「待ち合わせの場所が冒険者ギルドだっただけで、使者ではありません」困惑するノクスに代わって、アキラが答えた。

「そうですか。では、どなたとお待ち合わせですかな」ルーカスは目の奥に疑惑を浮かべた。

「商人のハートフェルトさんです」
「ハートフェルトねぇ」意外な答えだったのか、ルーカスは思わず考え込んだ。

「ところで、お聞きしたいのですが、ノーザン様のご活足はどのように伝わっているのでしょうか」

 ルーカスは、エルフの村からもたらされたエルフとオーガの戦いの情報を語り始めた。

「そうなんですね」ノクスの口元がわずかに緩んだ。やはり、お父様は自慢のお父様だ。普段は寄り添うように優しいが、いざ戦いとなると豪勝するハイエルフ族きっての戦士なのだから。

「せっかくお越しいただいたのですから、冒険者登録をしていきませんか?」ルーカスは計算高く、ノクスを勧誘した。

「どうしましょうか?」ノクスはアキラに念話で問いかけたが、彼も何が正解かわからなかった。ラピスの気配はない。

 子供のノワールが、机の上のチョコをほうばっていたが、彼女は小さく頷いた。

「はい。私だけですが」
「それはそうでしょう」ルーカスはアキラを完全に見下していた。

「普通、鑑定者が確認をしますが、生憎、下で冒険者の身元確認をしています。今回は自己申告でお願いします」

 ノーザンは登録用紙を壁から取ろうとして、ペーパーウエイトの梟の置き物を動かした。その瞬間、カチッと小さな音がした。

「レベルは、魔法射手です」

「やはり、ハイエルフ族は、そんなに低くても冒険者のジョブを持てるのですね。しかも上級ジョブですか!」ルーカスの目には、エルフ族特有のハイエルフへの嫉妬と羨望が見え隠れしていた。

「どうなんでしょう。他人のことはわかりません」
「スキルは?」ノーザンの追加の質問に、ノクスは一瞬戸惑い、答えようとする瞬間、ノワールが彼女の服を引っ張り、手に持っていたチョコの包み紙を渡してきた。

「それは言えません」

「そうですか」実は、ギルドに対するスキルの開示義務はない。それは冒険者にとって秘匿事項だ。ルーカスはノクスを試したのだ。

「他にご質問は?」
「いえ、充分です。暫定ですが、ノービスクラスです。こちらの紙を、受付でリアナに渡してください。冒険者登録されます」

「わかりました。副ギルド長自ら、ありがとうございます」

「いえいえ、差し出がましい真似をしてしまいました。ハイエルフの冒険者がいるギルドとして、ウエストグレンの宣伝になります。今回のアズーリア村の魔物討伐はAランク以上ですが、見学なら参加しても構いません」

「いえ、用事がありますので、遠慮します」ノクスの返事は意外らしく、ルーカスはまた難しい顔をした。

部屋を出て、受付に向かう。更に人がギルドホールに増えているような雰囲気がある。

「梟の置き物」アキラが微かな声でぼそっと呟く。
「あれは、嘘発見機。王国では一般的な魔道具の一つです。あてにはなりませんが」ノワールが答えた。

「そうなのか」
「わかりやすく、無能な男だ」ノワールが呟くと、ノクスが慌てて彼女の口を塞いだ。

 本当にそうだ。ポリグラフを使うなんて、馬鹿にしているのだろうか。ばれないとでも思っているのか。アキラは珍しく、怒りがこみ上げてきた。

 アキラ達が冒険者ギルドから出ようとしたところ、王国騎士に止められた。大階段の上には王国の首脳陣が並び、階下中央に冒険者たちが集まり、外側を王国騎士が取り囲んでいた。

「これから、出陣式を行う。エドガー王子より、お言葉を頂く。心して聞くように!」ギルド長らしい男が、階下の冒険者たちに向けて宣言した。

「私はエドガー、王国の第2王子だ。皆さんには通達されていると思うが、王国の反逆者が、私の可愛い妹を誘拐した。そう、アストリア様のお子だ。」王子は言葉を続けた。

「若い時に、アストリア様を見たぞ!」
「アストリア様に命を助けられた。」

 冒険者たちが声を上げる。彼らの中には、その当時から冒険者だった者もいる。

「今こそ、その時の恩を返す時ではないか?そして、同時期に魔物が人の領域に現れた。これは偶然なのか?」エドガーは、彼らに訴えかけた。

「だが、あのフェニックスが誘拐されたなんてありえない。あいつは貧民街の救世主だぞ!」

「アゼリア嬢とは一緒に戦ったが、彼女は屈託のない良い子だ。スパイなんてできるわけがない!」

「ノワール嬢は色気のある良い女だ。買い物をしているところを見かけたが」

 年配の冒険者たちは、王子の発言に異議を唱え、権力者への忖度は見られなかった。

「静かにしろ!話の途中だ。最後まで話を聞け!」ギルド長が怒鳴ると、場は静まり返った。

 エドガーは大切そうに懐から一枚の紙を取り出し、皆に見せた。

「これをよく見ろ!我々はフェニックスと魔物を操る者との書簡を手に入れた。貴重な資料なので持ち歩けないが、書き写したものを読み上げる。『クロガミ様のご指示通り、魔物の侵攻と同時に王女を攫います。既に王女は籠絡しており、私の言うことしか聞きません。』」

「わかったか!これが証拠だ!」
 その言葉は静かに響いた。アキラは知らず知らずのうちに声を上げていた。

「馬鹿らしい。どうして、その書簡の内容が事実だとわかる?それに、書き写したものだって」
 その声は思っていたより大きく、会場中に響いてしまった。

「おい、そこの小僧を捕えろ!」
 王国騎士に拘束されたアキラは、副ギルド長室に連れて行かれ、ノクスとノワールも後を追った。ホールは静まり返った。

「いずれにせよ、魔物の侵攻は事実で危機である。具体的な作戦はギルド長に一任している。アズーリア村を解放し、侵攻を食い止め、王国の英雄になってほしい。報酬は、いつもの10倍だ」

冒険者たちは報酬の話に興味が移り、アキラのことを気にする者はいなくなった。

「それでは、王国の馬車で皆を大街道のアズーリア村の入り口まで送る。成功を期待する」

 冒険者たちは次々と王国騎士の馬車に乗り込んでいく。その光景を見て、エドガー王子はにやりと笑った。
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