アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

文字の大きさ
82 / 137

武器屋とケイオス商会 ※邂逅

しおりを挟む
「おじさん、こんにちは」冒険者ギルドの受付嬢、リアナに案内され、アキラたちは武器屋に入った。
「どうした?」店主は机に伏せていた顔を上げた。

「お客さんを連れてきたよ。ここが、知る人ぞ知る迷店」リアナは軽やかに背の高い椅子に飛び乗ると、テーブルに置かれた小皿のナッツを食べ始めた。彼女は、兄と暗いエルフの里が嫌で出てきたが、木の実は大好物だった。
 
 ノワも同じように飛ぼうとしたが届かず、ノクスに抱えられて椅子に座る。そして彼女やノクスもナッツをぼりぼりつまみ始める。

 すぐに小皿のナッツは売り切れた。成長期だから仕方ない。王女には見せない、本当の姿は食いしん坊キャラだったのだろうか。

「喉乾くでしょ、フルーツジュースもどうぞ!」リアナは自分の店のように振る舞い、飲み物をみんなに配った。

「折角来てもらって悪いんだが、魔物騒動で武器や防具、小道具まであらかた売れちまった。開店休業だが、在庫一掃で大儲けしたよ。わっはっは」店主は大笑いした。
「魔術師用の服や杖なら残ってるけど、見るかい?」

 ノクスの装備は一級品だし、ノワールはまだ子供のフリをしている。お客になりそうなのはアキラだろうと見当をつけたのだろう。
「そうですね」
「じゃあ、ちょっと羽織ってみるか?倉庫から取ってくるよ」
「それと、魔物除けの柵とかもありますか?」
「もちろんあるよ。ただ、小さな魔物向けだけどな」
「じゃあ、それもお願いします」
「わかった。両方とも倉庫にあるから少し待ってな」

 しばらくして店主が持ってきたのは、ピエロでも着そうな奇抜な服と、くねくねと折れ曲がった杖だった。
「これはちょっと…合わない気がします」アキラはやんわりと断った。女子たちも笑いを堪えきれない様子だ。
「そうか?男前が上がるんだがな。安くするからお買い得だぞ」店主も含み笑いをしている。

「アキラ、私がちゃんとしたものを用意します。買わなくていいです。防御力も攻撃力も今のと変わりません。私の基本デザインの影も形もない。どうしてこんなものになるのか…!」ラピスはなぜか怒り心頭だった。

「買いません」アキラはきっぱりと断った。
「実はな、ドワーフの親父が来なくて、武器が補充できてないんだ。そのうち来るだろう。あいつら、酒がないと干からびちまうからな」店主はドワーフの親父をチラリと語る。

「あ!」お酒、大量に買っておかないと。
「どうした?それとこれが柵だ。ただし、ひとつ問題がある。魔石が必要なんだ。この繋ぎ目に嵌める。ウエストグレンの鉱山でも取れるが、高いんだよ。 」
「いくらぐらいするんですか?」
「一番安い魔石で金貨5枚だ」

「え?」アキラはチョコが一箱金貨10枚もしたのを思い出し、その高さにいまさら驚いた。
「そうだろう。でも、俺は正直な商人だからな」店主は胸を張った。
「では、柵だけお願いします。あるだけ買います。おいくらですか?」
「本当か!じゃあ、定価金貨200枚だが、安くして金貨100枚でどうだ?」
「今すぐケイオス商会に運んでいただきたいのですが」アキラは、フェルトに両替してもらった王国金貨を渡した。
「わかった、すぐに手配するよ」店主は店の看板を閉店にした。

「リアナ、いい客を連れてきてくれた。ナッツ一袋やるよ」彼はカウンターの下から袋を取り出し、リアナに投げ渡した。
 店を出て、アキラたちはリアナと別れることにした。これ以上ついて来られると困る。
「それじゃあ、ケイオス商会に寄って帰るわね」
「どちらにお帰りになるのですか?」リアナが尋ねてきた。ルーカスに指示されているのだろう。

 アキラが目で合図すると、リュックからノルドがチョコの箱を取り出し、リアナに手渡した。
「また来るわね。ハイエルフの里には帰るから」リアナはチョコを受け取り、目を輝かせた。その瞬間、彼女の元気な笑顔がさらに明るくなり、彼女の快活な性格が一層際立った。

「じゃあ、またね」リアナはチョコを片手に、軽やかに去って行った。



 間違いない、義父の字だ。つまり、そのアキラって人に囲われてるんだな」
「そうです。これを見てください」ハートフェルトは手のひらに載せたドラゴニアコインの山を見せた。
「ドラゴニアコイン……しかも新しいものがこんなに?」

「さらに、彼の空間魔法は、この荷物すべてが入ります」ハートフェルトは、数台の荷台に積まれた品物を指す。
「なんだって?一流の荷運び人でも、一台が限界だぞ」
「それに、恐ろしく強い狼族の娘を従えています」

「狼族の娘だと?どこかで見たような……まあ、義父が無事でよかった。さすがダリオス師匠だな」
「はい。」ハートフェルトは静かに頷いた。
「おじゃまします」敷居の低そうな商会の扉をアキラは開けた。
「いらっしゃいませ。あら、先日お会いした大食いの冒険者さん達。アーセノノルさん」ケイオスが来客を迎えた。

「アキラ様ですよ、兄者」
「ああ、そうでしたか。山の峠の食堂でお会いしましたね。私はダリオスの息子、ケイオスです」
「また兄者、食べ歩きしていたのか?」
「仕事の合間だよ」ケイオスは慌てて表情を引き締めた。
「さっそくで悪いんですが、お酒をあるだけお願いします。ついでに、フルーツジュースとナッツ、それから魔石も」

「すでに荷台に積んでありますが、追加しますね」フェルの言葉を受け、ケイオスは手際よく伝票を切り、店の在庫をすべて荷台に積み直した。彼の動きはいつもながら速い。
「費用は、追加分も含めて足りてますか?」
「大丈夫だと思いますが、まだちゃんと計算してなくて……」大商いに不慣れなハートフェルトは、赤面しながら答えた。

「今すぐじゃなくても大丈夫です。逐一渡されるのも手間ですよね。袋をお借りしますね」アキラは手をかざし、袋の中身が風船のように膨らんだ。

「ドラゴニア金貨1,000枚です。渡しておきます」固まっているハートフェルトの代わりに、ケイオスが袋を開けて金貨を真贋鑑定の機械にかけ、問題ないことを確認した。

「両替手数料を引いて、王国金貨10,000枚分ですね。確かにお預かりしました。フェル、サインをお願いします」ケイオスは金貨を地下の大金庫に運び、預かり書を作成してハートフェルトに手渡した。

「すみません、こちらが預かり証文です」
「ところで、柵は届いていますか?」
「はい、武器屋が台車で運んできました」
「では、生き物以外の物はすべて空間倉庫に取り込みます。」アキラが手をかざすと、荷台に積まれていた物は一瞬で消え去った。
「荷馬車で、ある場所まで送っていただけますか?」

「アズーリア村ですか?」
「いえ、今回行く場所は秘密です」
「では、私とフェルで向かいましょう。私が家畜を運びます。それと、伝書鳩を2羽お渡ししますので、今後の連絡に使ってください」
「ケイオス兄さん!」
「大事なお前のお客様だ。手伝わせてもらうよ」

 こうして、ケイオスとハートフェルトは二台の馬車で峠へと走り始めた。


※※※
 その様子を画面越しに見ていたのは、ラピスだけでは無かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

処理中です...