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アズーリア村攻防戦
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アズーリア村では、冒険者たちとオークたちの激しい攻防戦が始まろうとしていた。
かつての穏やかな村の面影は、すでにほとんど失われている。周囲では荒々しい土木工事が進行中で、裏手には魔物の森が広がり、他の三方は深い水堀によって囲まれていた。
「飛び越えるのは、無理そうだな」
冒険者たちは王都組、セーヴァス組、ウエストグラン組の三手に分かれて、それぞれの地点で作戦を練っていた。互いに警戒を怠らず、少しずつ位置を調整しながら、相手の動きを探っている。
「……だが、敵の姿が見えない」
廃墟となった村の瓦礫は、敵の潜伏場所として最適だった。探知スキルを駆使しても、その気配は霧のように掴むことができない。
「本当にいるのか? 大型のオーガがいるはずだったが……」
その疑念を打ち消すかのように、瓦礫の隙間から時折、槍が飛んできた。それは確かに、そこに“何か”が隠れている証拠だった。
「昨日、斥候が何人も帰ってきていない。油断するな」
年季の入った外套を羽織ったベテラン冒険者が、周囲を見渡して声を上げた。その声には緊張感が漂う。酒の匂いがほのかに漂い、手はわずかに震えていたが、その目は鋭かった。
「またあのおっさんかよ。引退間際のくせに、説教ばかりだな」
「まあ、あいつ、ソロで来てるらしいぜ。仲間もいないんだろ」
「昨日、手が震えてたし、目もうつろだったぞ。あれで戦えるのか?」
「バカだな。今回の募集、希望者全員通ったんだよ。元々は選抜だったが、逃げた奴が多すぎてな。報酬で釣ってるだけさ」
その時、王都組が橋の架設を始めた。盾を構えたタンク職が前に立ち、後方では戦士たちが木材を継ぎ足し、慎重に仮橋を運び込んでいる。
「ははっ、こんな時こそ船の出番だろ」
セーヴァス組は動かず、遠巻きにその様子を眺めていた。ただし、すぐにでも突撃できるよう陣形を整え、静かに前線を詰めていく。
その瞬間だった。
対岸の瓦礫から、オークたちが一斉に姿を現した。十体。そのうち一体は、他のオークたちとは異なる威圧感を放ち、指揮官のような存在だった。
奇妙なことに、彼らはただ姿を見せるだけで、攻撃の気配を一切見せなかった。
「オーク……? 話が違うな。大型のオーガがいるはずだったのに……」
「まあ、数ではこちらが圧倒している」
「……にしても、なぜ何もしない?」
全員が同じ考えに至った。――橋を渡り、総攻撃に移るべきだと。
だが、その刹那。
「やめろ! 渡るな! 殺される!」
「頼む……こっちに来ないでくれ!」
「リーダー……助けてくれっ!」
叫び声が響いた。その声の主を探すと、村の中央――唯一開けた空き地に、磔にされた四人の冒険者が見えた。
無理やり服を剥がされたのか、彼らの身体はほぼ裸。傷だらけで血まみれの姿が痛々しく晒されている。足元にはオークの警備兵が二体。槍を構え、今にも突き刺しそうにしていた。
その背後、瓦礫の上には指揮官らしきオークを含む七体が陣取っており、合計で九体がその一角を防衛している。
「魔法で狙えるか? いや、距離があるし、こちらはバラバラだ。連携もない」
「一度退いて、作戦を立て直すべきだろう」
「犠牲はつきものだ。突入すれば、全員は無理でも何人かは助けられる」
「ふざけるな! うちのシーフを見殺しにする気か!」
怒声が飛び交い、冒険者たちの間で口論が勃発した。数人は取っ組み合いに発展する。
「やめろ! 敵に背を向けるな!」
ベテラン冒険者が叫び、辺りを鋭く見渡す。空気が張り詰める。
実際、ここにいる冒険者の四つのグループは、すでにシーフを一人ずつ失っていたのだ。
議論の末、仮橋は一度引き上げられ、全体での協議が行われることとなった。
「提示された条件と違う。オークが二十体近く、村を要塞化している。撤退すべきだ」
何人かが荷物をまとめ始める。
「ちょっと待て! これだけ人数がいるんだ。やればすぐに片付けられる!」
「人質がいる。オークがこんな戦術を取るなんて、聞いたことがない。これは普通じゃない」
「わかった。司令部に連絡して、指示を仰ごう。無断撤退は罰則対象だ!」
その場の分裂は、なんとか回避された。伝令係の冒険者が馬に乗り、司令部へ向かう。しかし、時間が経過しても、戻ってくることはなかった。
「遅い……何かあったのか……」
そして、日が傾き、夕闇が迫ったその時。
「ぴー」
鋭い口笛が響く。直後、瓦礫の陰からオークたちが現れ、一斉に魔物の森へと駆け出していった。
「援軍か……? だが、馬の音はしない」
その時、磔にされた人質の足元で異変が起きる。見張りのオークが無言で槍を振り上げ――
「ズブッ」
肉を貫く重い音が響き、悲鳴が上がった。
「ぐあああっ!」
他の人質も、次々と頭を垂れ、ぐったりと崩れ落ちていく。
その上で、指揮官のオークが悠然と姿を見せ、こちらを一瞥してにやりと笑った。何事もなかったかのように、森の奥へと引き上げていった。
「……一体、何が起こっているんだ!?」
「そんなことより、急げ! 助けられるうちに!」
「よし! もう一度橋を渡す!」
冒険者たちは再び前進を始めた。空はすでに暗く、夜が辺りを包み始めていた。
橋を渡った彼らは、倒れた人質のもとへ駆け寄る。
「魔物の反応、なし」
「こちらも異常なし」
暗闇の中、冒険者たちは臨戦態勢を維持しながら救助を試みる。松明と光魔法が、わずかに周囲を照らしていた。
「しっかりしろ、今助ける!」
だが――。
「どかん!」
轟音が夜を裂いた。渡ってきた橋が爆発し、崩れ落ちた。
アズーリア村に取り残された冒険者たち。水堀は深く、絶望が静かに押し寄せてくる。
「まずい……!」
我先にと水際へ走る者が現れ、次々に冷たい水へと飛び込んでいく。
「俺たちも逃げよう!」
暗闇の中、雪崩のように走り出す冒険者たち。その先頭にいたのは、あの慎重だったベテランだった。恐怖に負け、戦場からの脱出を最優先したのだ。
「ここで……名をあげようと思っていたのに――」
かつての穏やかな村の面影は、すでにほとんど失われている。周囲では荒々しい土木工事が進行中で、裏手には魔物の森が広がり、他の三方は深い水堀によって囲まれていた。
「飛び越えるのは、無理そうだな」
冒険者たちは王都組、セーヴァス組、ウエストグラン組の三手に分かれて、それぞれの地点で作戦を練っていた。互いに警戒を怠らず、少しずつ位置を調整しながら、相手の動きを探っている。
「……だが、敵の姿が見えない」
廃墟となった村の瓦礫は、敵の潜伏場所として最適だった。探知スキルを駆使しても、その気配は霧のように掴むことができない。
「本当にいるのか? 大型のオーガがいるはずだったが……」
その疑念を打ち消すかのように、瓦礫の隙間から時折、槍が飛んできた。それは確かに、そこに“何か”が隠れている証拠だった。
「昨日、斥候が何人も帰ってきていない。油断するな」
年季の入った外套を羽織ったベテラン冒険者が、周囲を見渡して声を上げた。その声には緊張感が漂う。酒の匂いがほのかに漂い、手はわずかに震えていたが、その目は鋭かった。
「またあのおっさんかよ。引退間際のくせに、説教ばかりだな」
「まあ、あいつ、ソロで来てるらしいぜ。仲間もいないんだろ」
「昨日、手が震えてたし、目もうつろだったぞ。あれで戦えるのか?」
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その時、王都組が橋の架設を始めた。盾を構えたタンク職が前に立ち、後方では戦士たちが木材を継ぎ足し、慎重に仮橋を運び込んでいる。
「ははっ、こんな時こそ船の出番だろ」
セーヴァス組は動かず、遠巻きにその様子を眺めていた。ただし、すぐにでも突撃できるよう陣形を整え、静かに前線を詰めていく。
その瞬間だった。
対岸の瓦礫から、オークたちが一斉に姿を現した。十体。そのうち一体は、他のオークたちとは異なる威圧感を放ち、指揮官のような存在だった。
奇妙なことに、彼らはただ姿を見せるだけで、攻撃の気配を一切見せなかった。
「オーク……? 話が違うな。大型のオーガがいるはずだったのに……」
「まあ、数ではこちらが圧倒している」
「……にしても、なぜ何もしない?」
全員が同じ考えに至った。――橋を渡り、総攻撃に移るべきだと。
だが、その刹那。
「やめろ! 渡るな! 殺される!」
「頼む……こっちに来ないでくれ!」
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その背後、瓦礫の上には指揮官らしきオークを含む七体が陣取っており、合計で九体がその一角を防衛している。
「魔法で狙えるか? いや、距離があるし、こちらはバラバラだ。連携もない」
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「やめろ! 敵に背を向けるな!」
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実際、ここにいる冒険者の四つのグループは、すでにシーフを一人ずつ失っていたのだ。
議論の末、仮橋は一度引き上げられ、全体での協議が行われることとなった。
「提示された条件と違う。オークが二十体近く、村を要塞化している。撤退すべきだ」
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「わかった。司令部に連絡して、指示を仰ごう。無断撤退は罰則対象だ!」
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「遅い……何かあったのか……」
そして、日が傾き、夕闇が迫ったその時。
「ぴー」
鋭い口笛が響く。直後、瓦礫の陰からオークたちが現れ、一斉に魔物の森へと駆け出していった。
「援軍か……? だが、馬の音はしない」
その時、磔にされた人質の足元で異変が起きる。見張りのオークが無言で槍を振り上げ――
「ズブッ」
肉を貫く重い音が響き、悲鳴が上がった。
「ぐあああっ!」
他の人質も、次々と頭を垂れ、ぐったりと崩れ落ちていく。
その上で、指揮官のオークが悠然と姿を見せ、こちらを一瞥してにやりと笑った。何事もなかったかのように、森の奥へと引き上げていった。
「……一体、何が起こっているんだ!?」
「そんなことより、急げ! 助けられるうちに!」
「よし! もう一度橋を渡す!」
冒険者たちは再び前進を始めた。空はすでに暗く、夜が辺りを包み始めていた。
橋を渡った彼らは、倒れた人質のもとへ駆け寄る。
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