アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

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魔物の罠

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「馬鹿! 狙われるだけだぞ!」
だが、混乱した冒険者たちは聞く耳を持たず、次々に水堀へ飛び込んだ。

「だめだ! 毒水だ、入るな!」
「これくらい大丈夫だ。いける!」
毒が水に溶けているらしいが、それほど強力ではない。
それでも、体力はじわじわと削られていくだろう。
だが、問題はそれだけではなかった。

 暗闇の水底には、冒険者たちを狙う魔物——魔牙魚が潜んでいた。
 オークたちが森の湖から捕らえ、この場所に放していたのだ。戦闘は、水中で繰り広げられた。

 泳ぎながらの戦いに慣れていない冒険者たちは、明らかに不利だった。
魔牙魚は足や腕、露出した部分を執拗に狙い、鋭い牙で噛みついてくる。
魚の群れは一度通り過ぎると、すぐに反転して再び襲いかかった。

「だめだ……戻ってこい!」
岸から投げられたロープを掴もうとする者もいたが、力尽きた者たちは、静かに水底へと引きずり込まれていった。

 一方で、なんとか渡りきったベテラン冒険者たちが、川から這い上がろうとしたその瞬間——
膝をつき、崩れ落ちた。

 大槍で、全身を貫かれていた。しかも、何本も。
「ははは!」
そこには、魔物の森に消えたはずのオークたちが待ち構えていた。
その笑い声が、森の奥からも呼応するように響く。

 果たして、オークたちの待ち伏せを逃れ、無事に渡り切った者はいただろうか。
「ここで迎撃しよう。朝になってから行動だ」
シーフたちを十字架から外す作業と治癒が始まる。
 冒険者たちはその場で体勢を整え、逃亡に失敗した者たちも、所在なさげに戻ってきた。

——そのときだった。
「どかん」
突然、彼らのいる場所が地盤沈下し、大穴が開いた。
瓦礫が降り注ぎ、隣の井戸の水が勢いよく流れ込んでくる。
それは、冒険者たちが集まるのを見越して仕掛けられていた爆薬だった。

 すぐさま、魔物の森から火のついた槍が飛んでくる。
井戸の水には黒油が混じっており、大きな爆発が起こった。
「ぴぴーっ!」

 大きな口笛の音が響くと、魔物の森からオークたちが戻ってきて、大穴を囲んだ。
「焦る必要はない。少しずつ体力を奪え。こちらには、まだまだお代わりがあるからな」
 オークを率いるドルムは、荷台を見つめながら、にやりと微笑んだ。

※※
 一方、司令部からギルド長の指示を受けて、ルーカスは若い冒険者たちの足取りを追い、夜の森へと足を踏み入れた。

「まったく、面倒なことになったな……」
 光魔法で足元を照らし、索敵魔法で周囲を探る。
「これはまずいな」

 反応は点々と広がっており、それぞれが別方向へ散っている。しかも、そのほとんどが微弱だ。
「仕方ない。近くの者から行くか」

 ルーカスは弓を構え、罠に注意しながら慎重に歩を進める。
 すぐに足元の異変に気づき、ひらりと避けた。スカウトの職ゆえの身のこなしだ。
 だが、次の瞬間、目当ての冒険者の反応がふっと消える。

「あらら……」
 舌打ちを飲み込み、次の反応を追ってさらに森の奥へ向かう。
 だが、またしても魔法の反応が途切れた。
「状況を確認しよう」
 反応が途絶えた地点に向かうと、ぽっかりと大穴が開いていた。

 その中には、焼け焦げた冒険者の遺体。防具には槍が深く突き刺さっている。
「こんな大穴に……毒でも使ったか」
 ルーカスの眼差しが鋭くなる。
 足跡を確かめると、やはりオーク――しかも集団だ。

「投げ槍の作りも悪くないな」
 思わず感心しかけるが、すぐに気を引き締め直す。

 このまま一人で深入りするのは危険すぎる。
「救援を求めたのに、送り込まれたのは低ランクの連中ばかりか……。こんな夜の森で、単独でオーク相手にやれってのか」
 皮肉を零すが、自分の指示だったことは棚に上げる。
 ともかく、生存者を連れ帰らねば任務は果たせない。

 ルーカスはスキル《ステルス》を起動し、エルフの妙薬で匂いを消す。
「……疲れるな」
 長い銀髪が静かに揺れ、彼は魔力の微かな気配を頼りに森を駆けた。

 やがて、気配の先に人影を捉える。
 若い女冒険者が、オーク三匹に囲まれていた。
 両手と首を縛られ、血を流し、顔には絶望の色が濃く浮かんでいる。

 ルーカスは木陰に身を潜め、弓を引いた。
 一射、二射、三射――連射で縄を次々と断ち切る。

「走れ!」
 姿を現すと同時に声を飛ばす。女冒険者は反射的に駆け出した。
 ルーカスは矢を連ねながら後退し、オークたちの投げ槍を軽やかにかわす。
 女が近づいたのを確認し、腰の短剣を抜いて彼女に向かって投げた。

 「ありがとう……!」
 彼女は受け取った刃を握り直し、振り返って応戦の構えを取る。
 オークたちは一瞬、顔を見合わせると、低く唸りながら森の奥へ退いていった。
 探索魔法で周囲を確認すると、敵の気配はすでに遠ざかっている。

 だが、他の冒険者の反応はどこにもない。
 ルーカスは一瞬、額に手を当てたが、すぐに顔を上げた。
「これが戦いだ。――さあ、帰るぞ」
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