アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

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面会

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 大魔道船は、やがて河岸の船着場に静かに着いた。
 出迎えに来ていたのはダリオスだった。頭の切れる男で、相手とも顔見知りだ。少なくとも、いきなり戦闘になる展開は避けられそうだった。 

「アキラハウスに、早く戻りましょう」
 ステラが手を取ってくる。アリアも並んで歩き出した。
 船着場から、賑やかな声が響いてきた。
「アキラ、服を準備してますよー!」
 ラピスの声だ。 

「服って……なんの?」
「何言ってるんですか? あなたはエリシオンの国王ですよ!」
「国王って柄じゃないんだよ、俺……」

「では三択いきます!」
 どうやら事前に用意していたらしい。ラピスはノリノリで宣言する。
「大統領、領主、守護者!」
「うーん……この中なら、守護者かな」

「ほら、やっぱり。そう言うと思ってました」
 笑いながら言うラピスに、アキラも自然と頬をゆるめる。
「……って、これ派手すぎないか?」

 軍服風の装いに、魔術師らしい黒いコート。一見すると引き締まった印象だが、脱ぐと中には青と緑の装飾がきらびやかなジャケット、白のズボン。完全に舞台衣装のようだった。

「正装ですから、我慢してください!」
「……公式の時だけだよ、着るのは……」
 本音では、普通のスーツでよかったが、それは言わずに飲み込んだ。

 面会の時間が来た。
 姿を現したのは、峠で見かけた威圧感のある男――アルマダだった。
 まさに海賊という印象の男。荒くれた風貌にがっしりとした体格、まとう空気は剣呑そのもの。

「俺はネグロクサ商会、副会長のアマルダだ。話があって来た」
「アキラです。エリシオンの守護者を務めています」
「ふうん……」

 アルマダの目が、アキラを値踏みするように動く。

「お茶をどうぞ」
 ステラが丁寧に人数分のカップを並べる。
 同席しているのは、ネグロクサ商会コール支店長、ダリオス、アリア。香ばしい茶菓子の香りが室内に満ちる。

 ギルドホールには、両陣営の他の者たちが控えていた。

「……酒が良いんだがな」
 アルマダは無遠慮に机へ両足を投げ出し、椅子に踏ん反り返った。

 ――その瞬間。
 ステラが無言でトレイを振りかざし、ぱこん、とアルマダの頭を叩いた。
 場に、見事な音が響き渡る。

 一瞬、時間が止まった。
 アキラも、アルマダも、他の全員も、ぽかんと口を開けている。

「態度が悪いです。大の大人がすることではありません。熊みたいですね。では、失礼します」  

 ステラはぴしっと言い放ち、すました顔で壁の定位置に戻った。
 アルマダはひと呼吸置いて、ふっと吹き出した。
「はは、悪い悪い。商人の癖が抜けなくてな」 

「それは……あなただけですよ」
 ダリオスがぼそりと呟いた。
「ところで、あの島と……武器庫のことだがな。あれは元々、うちの商会の持ち物だ」
 アルマダの口調が変わる。眼光が鋭くなる。

「まさか、こんなところに村ができてるとは思ってなかったな」
「でも、あなた方はすでに放棄してましたよね? それに、武器庫も本当に“あなたたち”の物なんですか?」

「……なんだと?」
「アストリア様の管理下にあったはずです」
 アルマダの表情がぴくりと動く。
「……なるほど、詳しいな。じゃあ本題に入ろうか」

 空気が変わる。アルマダの身体から、確かな魔力が立ち上り始めた。

「――ヴァイオレット王女は、どこにいる?」
 低く唸るような声が響く。その魔力は空気を微かに震わせるほど重く、強い。圧に呑まれそうになる中――

 アリアが、すっとアキラの前に出た。

「相変わらずですね、アルマダ様。そんなだからアストリア様に“短気な大熊”って言われるんですよ」

「……貴様、アストリア様の口からそれを……!」
「もうすぐ到着されます。アストリア様の子を守る役目を受けたのは、あなただけじゃありません」

 その瞬間、重々しい扉が開かれた。
 護衛に立つフェニックスとノワールを従え――ヴァイオレット王女が静かに入室する。
「おおっ……!」

 アルマダは即座に立ち上がり、まっすぐな敬礼を捧げた。

「はじめまして、アストリアの子、ヴァイオレットです。母が世話になりました」

「ネグロクサのアルマダです。アストリア様には、我が主人が忠誠を誓っておりました。もちろん、配下全員も同じです。引き続き、ご息女お二方に陰にて仕えよと仰せつかっております」

 雄弁に話すアルマダを見て、フェニックスは懐かしさを感じた。

「ありがとうございます。心強く感じます。さて、フェニックス。旧知なのですよね?」

「はい、アルマダ様には昔、ありがたい導きの言葉を頂きました。それと長年、様々な支援も。今は亡きアストリアに代わり、御礼申し上げます」

 フェニックスとノワールは深く頭を下げた。
「ははは、王国の宰相様に頭を下げられるとは、どうしたものか」
「いえ、今や我ら犯罪者ですので」
「面白い冗談が、王国では流行っているようですね」

 傍若無人の男、アルマダが意を決したように、フェニックスに尋ねた。

「ひとつ、お聞きしたいのですが――ヴァイオレット様の双子のお姉様、ソラリス様はどこに? 安全なところにいるのでしょうか?」

「……」
 交渉術に優れているフェニックスが、黙り込んだ。嘘を言うつもりはなかった。

「私がお答えしましょう。味方に隠し事はしません。あなた方は、姉ソラリスが聖女として聖王国に留学していることくらい、知ってますよね?」

 ヴァイオレットが答える。
「すみません。知っています」

「姉ソラリスは、母アストリアと同じ力を持っています。意味は、おわかりですね」
 その言葉には、嫉妬も、誇りもなかった。ただ、真実だけがあった。
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