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蠱惑の魔剣
魂を縛る契約と魔剣の魔力
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「ラゼル王子のスキルは、暗示して支配するものだ。これは蠱惑の魔剣に備わる力の一つであり、彼のスキルを強化している」
「そうか……それでお前たちは、奴隷というわけか?」
「私たちは……まさに奴隷だ。そして、ラゼルが死ねば、私たちも共に死を迎える」
その言葉を告げた直後、カリスの瞳から光が一瞬で消え失せた。
まるで魂を抜かれたかのように、彼女はすとんと膝を折った。
慌ててセラが駆け寄り、倒れた彼女の身体をそっと抱きしめる。
「……失敗したか。奴の契約は想像以上に強力だ。私の催眠術でも、到底逃れられない」
サルサの声が冷たく響き、凍りついた空気を切り裂いた。
二人は、床に横たわるカリスの蒼白な顔を見つめた。
彼女の唇はかすかに震えていたが、言葉は出なかった。
「カリスは、王国の大学の奨学生だったらしい。天才魔術師と称されていたとも」
セラの声には、怒りと同時に深い憐憫がにじんでいた。
「しかし、カリスを敵視していた貴族の子息が罠を仕掛け、奴隷にしてしまったのだ」
語るほどに、セラの瞳は翳り、その奥には怒りを超えた慈しみが宿る。
「……よくある話だな」
サルサは視線を伏せ、遠くを見据えるように言葉を続けた。
「私も似た経験を持っている。お前も。だが、彼女には救いの手が届かなかったのだろう」
セラから、迷いの混じった声が漏れた。
「サルサ様……これからどうすべきでしょうか?」
頼る声に、サルサは短く返した。
「明日、マルカスたちが戻るはずだ。まずは彼らの話を聞こう。それから判断する」
※
二日目の討伐では、マルカスたちが作戦を大胆に変更した。
「援護はするな!」
マルカスが断固たる口調でドラガンやサガンに命じる。
もし彼らが「島主の命令だ」と言って助けに入れば、ラゼルはいつまでも魔剣を抜かないだろう。
だが、ただ見ているだけでは、何も得られない。
ラゼルの魔剣の力を確認するには、彼をあえて孤立させるほかないのだ。
「手ぶらで帰れば、姐さんに叱られるからな」
マルカスは皮肉を含んだ笑みを浮かべ、魔物の群れの中にラゼルを置き去りにし、先へ進んだ。
カノンも軽やかに笑いながら、後に続く。
ラゼルは二人を慌てて追おうとしたが、一瞬判断が遅れた。
その隙をつくように、ゾンビやスケルトンの群れが彼を取り囲む。
爛れた肉の匂い、軋む骨の音が周囲に満ち、腐臭と瘴気が立ち込めていた。
しかし、彼は剣を抜かなかった。
「さて……今のうちに餌を撒くか?」
マルカスは十字路に立つと、魔物を引き寄せる薬を撒き始めた。
通路の先から、魔物がざわざわと集まってくる。
その中には、この階層には珍しい魔獣の姿もあった。
「マルカス先生、やることが……本当に出鱈目ですね」カノンは強引すぎる作戦に呆れ顔だ。
迫る魔物たちに、マルカスは闇魔術をかけている。
まるで魔物が彼に操られているかのように、速度を増してラゼルへと突き進む。
「そんな珍しい魔術をお持ちなんですか?」
カノンが訊ねる。
「さすがにこの距離じゃばれるか。秘密だよ。簡単な誘導魔術さ。俺のは、相手がかなり限定されるんだ」
後衛が抜けたドラガンたちは、迫る魔物の波に必死で応戦しており、援護はできない。
「なぜ、この階層にこんなに珍しい魔獣が集まってくるのだ?」
ドラガンのぼやきが、張り詰めた空気の中で響く。
その間にも、ラゼルの周囲には次々と魔物が現れ、重なるように群れていった。
猛獣が襲いかかる。
だが、彼はなおも剣を抜かない。
「……これでもまだ抜かないのか?」
カノンが呟く。
その声には苛立ちと畏怖が入り混じっていた。
「仕方ない、救助に――」
マルカスが振り返ったその瞬間だった。
ラゼルが叫ぶように声を上げた。
空気が裂ける。
背中の大剣が、軋むような音を立てて抜かれた。
その刹那――世界は異質な光に染まった。
空気は震え、ダンジョンの瘴気が逆流する。
螺旋を描く妖しい光をまとった魔剣が、音もなく夜を裂いた。
一体、また一体。
魔物たちは、砂のように風に削られ、無言で崩れ去っていった。
その立ち回りは狂戦士のようだが――獣のそれとは違う。冷たく、そして整然としている。
「……なるほどな」
マルカスの目が細まり、わずかな警戒の色を浮かべた。
「だが、魔力を使っているようには見えないな」
「どういう意味です?」
カノンが問う。
「奴の能力が、一段階上がったように見える。だが、それだけだ」
マルカスは魔剣を凝視しながら言った。
「あの剣に蓄えられている魔力――本当の力はまだ目覚めていない。
この程度では、引きずり出せないようだ」
「どうすれば、引き出せるのでしょうか?」
「いや、あの魔剣に溜まっている魔力の量は、そこが見えない。俺は今まで引きずり出そうと考えていたが、それはとても危険なことじゃないかと考え直したよ」
さて、どうしたもんか……あの剣について、グラシアスに調べさせる必要があるなとマルカスは考えた。
「さあ、帰ろう。同じ暗闇でもここは落ちつかない」
ドラガンたちが怒っているのを無視して歩き出した。
「そうか……それでお前たちは、奴隷というわけか?」
「私たちは……まさに奴隷だ。そして、ラゼルが死ねば、私たちも共に死を迎える」
その言葉を告げた直後、カリスの瞳から光が一瞬で消え失せた。
まるで魂を抜かれたかのように、彼女はすとんと膝を折った。
慌ててセラが駆け寄り、倒れた彼女の身体をそっと抱きしめる。
「……失敗したか。奴の契約は想像以上に強力だ。私の催眠術でも、到底逃れられない」
サルサの声が冷たく響き、凍りついた空気を切り裂いた。
二人は、床に横たわるカリスの蒼白な顔を見つめた。
彼女の唇はかすかに震えていたが、言葉は出なかった。
「カリスは、王国の大学の奨学生だったらしい。天才魔術師と称されていたとも」
セラの声には、怒りと同時に深い憐憫がにじんでいた。
「しかし、カリスを敵視していた貴族の子息が罠を仕掛け、奴隷にしてしまったのだ」
語るほどに、セラの瞳は翳り、その奥には怒りを超えた慈しみが宿る。
「……よくある話だな」
サルサは視線を伏せ、遠くを見据えるように言葉を続けた。
「私も似た経験を持っている。お前も。だが、彼女には救いの手が届かなかったのだろう」
セラから、迷いの混じった声が漏れた。
「サルサ様……これからどうすべきでしょうか?」
頼る声に、サルサは短く返した。
「明日、マルカスたちが戻るはずだ。まずは彼らの話を聞こう。それから判断する」
※
二日目の討伐では、マルカスたちが作戦を大胆に変更した。
「援護はするな!」
マルカスが断固たる口調でドラガンやサガンに命じる。
もし彼らが「島主の命令だ」と言って助けに入れば、ラゼルはいつまでも魔剣を抜かないだろう。
だが、ただ見ているだけでは、何も得られない。
ラゼルの魔剣の力を確認するには、彼をあえて孤立させるほかないのだ。
「手ぶらで帰れば、姐さんに叱られるからな」
マルカスは皮肉を含んだ笑みを浮かべ、魔物の群れの中にラゼルを置き去りにし、先へ進んだ。
カノンも軽やかに笑いながら、後に続く。
ラゼルは二人を慌てて追おうとしたが、一瞬判断が遅れた。
その隙をつくように、ゾンビやスケルトンの群れが彼を取り囲む。
爛れた肉の匂い、軋む骨の音が周囲に満ち、腐臭と瘴気が立ち込めていた。
しかし、彼は剣を抜かなかった。
「さて……今のうちに餌を撒くか?」
マルカスは十字路に立つと、魔物を引き寄せる薬を撒き始めた。
通路の先から、魔物がざわざわと集まってくる。
その中には、この階層には珍しい魔獣の姿もあった。
「マルカス先生、やることが……本当に出鱈目ですね」カノンは強引すぎる作戦に呆れ顔だ。
迫る魔物たちに、マルカスは闇魔術をかけている。
まるで魔物が彼に操られているかのように、速度を増してラゼルへと突き進む。
「そんな珍しい魔術をお持ちなんですか?」
カノンが訊ねる。
「さすがにこの距離じゃばれるか。秘密だよ。簡単な誘導魔術さ。俺のは、相手がかなり限定されるんだ」
後衛が抜けたドラガンたちは、迫る魔物の波に必死で応戦しており、援護はできない。
「なぜ、この階層にこんなに珍しい魔獣が集まってくるのだ?」
ドラガンのぼやきが、張り詰めた空気の中で響く。
その間にも、ラゼルの周囲には次々と魔物が現れ、重なるように群れていった。
猛獣が襲いかかる。
だが、彼はなおも剣を抜かない。
「……これでもまだ抜かないのか?」
カノンが呟く。
その声には苛立ちと畏怖が入り混じっていた。
「仕方ない、救助に――」
マルカスが振り返ったその瞬間だった。
ラゼルが叫ぶように声を上げた。
空気が裂ける。
背中の大剣が、軋むような音を立てて抜かれた。
その刹那――世界は異質な光に染まった。
空気は震え、ダンジョンの瘴気が逆流する。
螺旋を描く妖しい光をまとった魔剣が、音もなく夜を裂いた。
一体、また一体。
魔物たちは、砂のように風に削られ、無言で崩れ去っていった。
その立ち回りは狂戦士のようだが――獣のそれとは違う。冷たく、そして整然としている。
「……なるほどな」
マルカスの目が細まり、わずかな警戒の色を浮かべた。
「だが、魔力を使っているようには見えないな」
「どういう意味です?」
カノンが問う。
「奴の能力が、一段階上がったように見える。だが、それだけだ」
マルカスは魔剣を凝視しながら言った。
「あの剣に蓄えられている魔力――本当の力はまだ目覚めていない。
この程度では、引きずり出せないようだ」
「どうすれば、引き出せるのでしょうか?」
「いや、あの魔剣に溜まっている魔力の量は、そこが見えない。俺は今まで引きずり出そうと考えていたが、それはとても危険なことじゃないかと考え直したよ」
さて、どうしたもんか……あの剣について、グラシアスに調べさせる必要があるなとマルカスは考えた。
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