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最終章 牙狼の王
血の契約
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会議の翌日、村にいる者たちへ聖妹が託宣を行う儀式、祭典が行われることになった。
教会の前にある広場は、シシルナ島の祭りのようだ。舞台が作られ各国が出し物を競い、屋台が出ていた。あらかじめ計画していたとはいえ、あっという間に手筈を整える共和国、王国の軍は優秀だ。
人々の笑い声や足音、叫び声が混ざり合い、広場全体に生き生きとした空気が満ちている。
「わーい! 大陸中の食べ物が食べれる」
「リコ、スパイの監視を忘れないでね!」
「それなんだけど……」
このテント村にも、数多くの獣人族がいる。商人も、避難民も、この村に遊びにきた者も。
彼女は、いつの間にかテント村にいる獣人族の中に、仲間、いや手下を作ったようだ。情報を集め、味方を確保するリコの目は、楽しげな笑みの中にも鋭さを秘めていた。
「なんだって、スパイの中にも味方を?」
「うん。色々と教えてもらってる。魔術師の直属部隊が誰なのかもね!」
「わかった。任せるよ!」
「任された! だから、ノルド買いに行こうよ!」
そのやり取りを聞いて、拗ねていたのはアマリ。彼女が、外を歩けば大騒動が起きてしまうことをわかっている。
「私も行きたいのに……」
「それなら、私たちが幻影魔術をかけますよ!」
聖妹の護衛に、立候補したブランナ姉妹が言った。アマリの顔が笑顔に変わる。
「じゃ、みんなで行きましょう」
戦いが起きる前なのに、誰にもそんな雰囲気は無いのが、ノルドはおかしかった。そして、その代表がヴァルなのは言うまでもない。用心棒が広場を悠々と散歩していく。
広場は陽光に照らされ、人々の笑顔があふれ、祭りの音楽や屋台の呼び声が心地よく響いている。店を見て回っていると、ノルドは声をかけられる。
「祭りの警備なら、お任せを」
「ローカンさん! 何してるんですか?」
「サン・マリエル公国の遠征軍たよ。俺とヒカリ、それとロッカたちだけだが……昨日もいたぞ! 指揮官殿」
「ごめんなさい、気がつかなくて…」
「良いってことよ。国の序列も参加者も少ないから、壁に立ってたからな」
ノルドが、ローカンと話し込んでいると、ロッカたちもやってきて、昔話で盛り上がる。笑い声が飛び交い、祭りの喧騒の中でも友情の温かさが伝わる。
「おーい、ローカン警備長、お客の誘導、整理をやって!」
大人気店の屋台の店員が、怒声をあげる。
「なんで、俺たちが……」
「ははは、やりましょう。夕飯を楽しみに」
「結婚式の時の恩返しよ」
その響く店員の声……ネラさんだ。店先に立つ彼女の表情は祭りの賑わいに負けず、堂々としている。
屋台の看板 『シダ通りの迷宮亭 特別出店』
店の前には、ヴァルが鎮座していた。その凛とした姿勢が、ここが一番美味しい店であることを示している。
「ここにいたのか?」
「ワオーン!」
「わかってるよ」
「ノルド、久しぶり! 夜食は楽しみにしてて!」
爽やかな声は、キッチンにいるノゾミだ。
「どうしてここに?」
「大陸中の料理が食べれるでしょ!」
「違うよ、ノルド。私たちができるのはこんなことだけ」
「またぁ、儲かりそうだって飛んできただけよ!」
ノゾミが誤魔化し、ネラが本音を言う。
「ありがとう! 夜食楽しみにしてます」
ノルドは、例を言うと彼女たちの邪魔をしないようにその場を去った。
「ノルド、こっちよ!」
広場の隅に、大きなテントがある。その中にテーブルがあり、多国籍の料理が並んでいる。色とりどりの皿や香りが祭りの華やぎをさらに高めていた。
「みんなで、並んで買ってきたの、食べましょう。ここなら、ビュアン様もお姿を現してくれるでしょう!」
ノルドが席に着くと、同時に彼女が現れる。妖精ビュアンが、光を伴って軽やかに舞い降りた。
「魔人も気がきくわね。さぁ、食べましょう」
そして夜になった。
「それでは、これより聖妹アマリ様より、お言葉を頂きます」
司会は、ガブリエルだ。広場には、その村にいる全ての人がいる。
アマリが、舞台に上がる。それに、合わせて灯りが落とされる。
彼女から、優しく甘い魔力が放たれる。セラの作った服は、その昔、聖女が叙任式典で着た服と同じ。
服につけられた様々な小さな魔石が輝き、彼女を包み守る。
そして、空には、精霊の子が、彼女を慕い現れて会場を照らす。その数は、満天の星を超える。今にも、声が聞こえてきそうだ。
「ただただ美しい!」
「ありがたや、一生の自慢になる」
誰もが、息をつくことすら忘れて、聖妹と空を見上げる。
「こほん」
彼女の声は、風の精霊により拡散される。
「わが、呼びかけに集まった皆にまず、礼を言います。我が姉、聖女ネフェルは未だ目覚めず、その呪いをかけた国は沈黙し、謝罪もありません。今更ですが……これからどうすれば良いでしょうか?」
戦う、それしか無い。皆、心の中で答える。
彼女の前に進み出るのは、ノルドだ。
「聖妹様、私はノルド。獣王国の真の国王になるべき者です。ですが、王位を簒奪され、我が母と一族は殺されました。そして、育ての母は、私の代わりに呪いを受けました」
小芝居なのだが、ノルドは涙が止まらない。セラの部分は、原稿には書かれてなかった。
「そうでしたか? それで貴方はどうするのですか?」
「私に剣をお授け下さい」
「わかりました」
アマリは、短剣を従者から受け取ると、剣を抜き、そこに手を当て血を流した。
「え?」
ノルドは驚く。これも原稿に無かった。
「獣人族の王、ノルド。これは血の契約。必ず約束を果たしなさい!」
ノルドは、剣を受け取り振り上げる。
「皆、我に従え、これより、聖戦を始める」
教会の前にある広場は、シシルナ島の祭りのようだ。舞台が作られ各国が出し物を競い、屋台が出ていた。あらかじめ計画していたとはいえ、あっという間に手筈を整える共和国、王国の軍は優秀だ。
人々の笑い声や足音、叫び声が混ざり合い、広場全体に生き生きとした空気が満ちている。
「わーい! 大陸中の食べ物が食べれる」
「リコ、スパイの監視を忘れないでね!」
「それなんだけど……」
このテント村にも、数多くの獣人族がいる。商人も、避難民も、この村に遊びにきた者も。
彼女は、いつの間にかテント村にいる獣人族の中に、仲間、いや手下を作ったようだ。情報を集め、味方を確保するリコの目は、楽しげな笑みの中にも鋭さを秘めていた。
「なんだって、スパイの中にも味方を?」
「うん。色々と教えてもらってる。魔術師の直属部隊が誰なのかもね!」
「わかった。任せるよ!」
「任された! だから、ノルド買いに行こうよ!」
そのやり取りを聞いて、拗ねていたのはアマリ。彼女が、外を歩けば大騒動が起きてしまうことをわかっている。
「私も行きたいのに……」
「それなら、私たちが幻影魔術をかけますよ!」
聖妹の護衛に、立候補したブランナ姉妹が言った。アマリの顔が笑顔に変わる。
「じゃ、みんなで行きましょう」
戦いが起きる前なのに、誰にもそんな雰囲気は無いのが、ノルドはおかしかった。そして、その代表がヴァルなのは言うまでもない。用心棒が広場を悠々と散歩していく。
広場は陽光に照らされ、人々の笑顔があふれ、祭りの音楽や屋台の呼び声が心地よく響いている。店を見て回っていると、ノルドは声をかけられる。
「祭りの警備なら、お任せを」
「ローカンさん! 何してるんですか?」
「サン・マリエル公国の遠征軍たよ。俺とヒカリ、それとロッカたちだけだが……昨日もいたぞ! 指揮官殿」
「ごめんなさい、気がつかなくて…」
「良いってことよ。国の序列も参加者も少ないから、壁に立ってたからな」
ノルドが、ローカンと話し込んでいると、ロッカたちもやってきて、昔話で盛り上がる。笑い声が飛び交い、祭りの喧騒の中でも友情の温かさが伝わる。
「おーい、ローカン警備長、お客の誘導、整理をやって!」
大人気店の屋台の店員が、怒声をあげる。
「なんで、俺たちが……」
「ははは、やりましょう。夕飯を楽しみに」
「結婚式の時の恩返しよ」
その響く店員の声……ネラさんだ。店先に立つ彼女の表情は祭りの賑わいに負けず、堂々としている。
屋台の看板 『シダ通りの迷宮亭 特別出店』
店の前には、ヴァルが鎮座していた。その凛とした姿勢が、ここが一番美味しい店であることを示している。
「ここにいたのか?」
「ワオーン!」
「わかってるよ」
「ノルド、久しぶり! 夜食は楽しみにしてて!」
爽やかな声は、キッチンにいるノゾミだ。
「どうしてここに?」
「大陸中の料理が食べれるでしょ!」
「違うよ、ノルド。私たちができるのはこんなことだけ」
「またぁ、儲かりそうだって飛んできただけよ!」
ノゾミが誤魔化し、ネラが本音を言う。
「ありがとう! 夜食楽しみにしてます」
ノルドは、例を言うと彼女たちの邪魔をしないようにその場を去った。
「ノルド、こっちよ!」
広場の隅に、大きなテントがある。その中にテーブルがあり、多国籍の料理が並んでいる。色とりどりの皿や香りが祭りの華やぎをさらに高めていた。
「みんなで、並んで買ってきたの、食べましょう。ここなら、ビュアン様もお姿を現してくれるでしょう!」
ノルドが席に着くと、同時に彼女が現れる。妖精ビュアンが、光を伴って軽やかに舞い降りた。
「魔人も気がきくわね。さぁ、食べましょう」
そして夜になった。
「それでは、これより聖妹アマリ様より、お言葉を頂きます」
司会は、ガブリエルだ。広場には、その村にいる全ての人がいる。
アマリが、舞台に上がる。それに、合わせて灯りが落とされる。
彼女から、優しく甘い魔力が放たれる。セラの作った服は、その昔、聖女が叙任式典で着た服と同じ。
服につけられた様々な小さな魔石が輝き、彼女を包み守る。
そして、空には、精霊の子が、彼女を慕い現れて会場を照らす。その数は、満天の星を超える。今にも、声が聞こえてきそうだ。
「ただただ美しい!」
「ありがたや、一生の自慢になる」
誰もが、息をつくことすら忘れて、聖妹と空を見上げる。
「こほん」
彼女の声は、風の精霊により拡散される。
「わが、呼びかけに集まった皆にまず、礼を言います。我が姉、聖女ネフェルは未だ目覚めず、その呪いをかけた国は沈黙し、謝罪もありません。今更ですが……これからどうすれば良いでしょうか?」
戦う、それしか無い。皆、心の中で答える。
彼女の前に進み出るのは、ノルドだ。
「聖妹様、私はノルド。獣王国の真の国王になるべき者です。ですが、王位を簒奪され、我が母と一族は殺されました。そして、育ての母は、私の代わりに呪いを受けました」
小芝居なのだが、ノルドは涙が止まらない。セラの部分は、原稿には書かれてなかった。
「そうでしたか? それで貴方はどうするのですか?」
「私に剣をお授け下さい」
「わかりました」
アマリは、短剣を従者から受け取ると、剣を抜き、そこに手を当て血を流した。
「え?」
ノルドは驚く。これも原稿に無かった。
「獣人族の王、ノルド。これは血の契約。必ず約束を果たしなさい!」
ノルドは、剣を受け取り振り上げる。
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