ミステリーSS集

神在琉葵(かみありるき)

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ガラスの檻

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「すごいところね。」

 「確かに……」

 「本当にこっちで合ってるのよね?」

 「あぁ、間違いない。」



 俺は恋人の彩と一緒に、険しい山道を歩いていた。
いや、道なんてものはないに等しい。
こんなところに来たのには、理由がある。
 理由がなければ、こんなところにわざわざやって来る者はいないだろう。
 俺は、父にあるものを研究所に持って来て欲しいと頼まれたのだ。



 大人になってから、父との交流はないに等しかった。
 優秀な兄達とは違い、俺は頭が良くないから医者にも科学者にもなれなかった。
 父はそんな俺をあからさまに避けた。
そのうち、父はこの山奥の研究所にこもりっきりとなり、俺とはさらに疎遠になった。
その父から突然、言われたのだ。
 家にあるファイルを研究所まで持って来て欲しいと。
 俺は初めて父に必要とされたことがなんとも嬉しく、簡単にその頼みを引き受けた。



 近い将来に結婚するつもりの彩のことも紹介したかった。
だから、彩も連れて来たのだ。



 「あ、あれじゃないか?」

 「あ、そうだよ、きっとあれだよね!」

 俺達は山道を何時間も歩き、ようやく父の研究所を発見した。



 *



インターホンを押すと、背の高い鋭い目つきの男が現れた。



 「春日教授の息子さんですね。」

 「はい。」

 「私は、研究員の森田です。
この方は…?」

 森田と名乗る男は、彩を疎まし気にみつめた。



 「こちらは、高木彩さん。
 俺の婚約者です。」

 「婚約者……」

 森田は、再び、いやな目つきで彩をみつめた。



 「……どうぞお入りください。」

 俺たちはようやく建物の中に通された。
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