寄るな。触るな。近付くな。

思っていたのと違う

何かの衝撃で前世の記憶が戻る。

昔、妹が読んでいた漫画や小説ではよくあるおきまりの展開。だいたい、そう言うのって、病気でとか、頭を打ったりとかそういう展開だった筈。

いや、それが良かった。
私もその展開が良かった。

それは七歳になったばかりの少年には衝撃過ぎてトラウマになるレベルの展開。その光景の所為で幼かった少年の意識は何処かに飛んで行ってしまった。

むせる様な青臭い何かの匂い。
熱のこもった吐息に、甘い喘ぎ声。
何度も何度も身体を重ね合わせて愛を確かめ合う二人。

自身がどうやって生まれてきたかなんて全く知らない純真無垢な少年の目の前で繰り広げられる濡れ場。
しかも男と男の…。


ふと、男の下にいた少年が硬直しているこちらに気付く。少年は幼いのに妖艷な笑みを浮かべて、「君もおいでよ。」と上気し、ほんのりピンク色に染まった白い手を差し出した。

その瞬間、遂に少年の心と私の心が限界を迎え、盛大に吐いた。

その後は知らない。
なんたって、吐いた上で意識も手放したから。気付いたら自身の部屋（今世の私の）で寝ていた。

「本当にシュネーは身体が弱いね。」

心配そうに頭を撫でる兄に看病されていて、どうやらそのまま三日寝込んでいたらしい。