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王都組③
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ー そうだった。…コイツはアホなんだった。
溜息が口から溢れるのを抑えて、もう一度この恋を終わらせるために口を開く。
「……俺の言った抱けるかっていうのは俺とまぐわえるかって事だ。」
「まぐわうって何だ? 」
あー、もう、ヤダ、コイツ。
アホ過ぎんだろ。
思わず頭と顔に血がのぼる。
何故伝わらない。
こっちは早く、早くこの報われない恋を終わらせようと必死なのに……。
「まぐわうってッ…言うのは!! 俺とッ子供が出来る行為をッするって事だアホッ!! 」
顔が熱い。言ってて恥ずかしい。
でも流石にこれで分かっただろう。
これでコイツは俺から離れていく。
俺があの俺よりも持ってるシュネー・フリューゲルに負けて失恋したんじゃなくて、俺の手で失恋するんだ。
何を言っても拒絶しても離れず俺といて、隣で分け隔てない笑顔をくれたお前に、お前への恋心に俺自ら鉄槌を下すんだ。
アイツに負けて惨めになるくらいなら。
「子供ができる? 子供ってクリスマスの夜に赤い服着た白ひげのじいさんが連れてきてくれんだろ? 」
こてんっとシュヴェルトが首を傾げて、さも理解出来ない顔をこちらに向ける。
ー は? 何言ってんの??
「父さんが言ってだぞ。だからもうそれ以上俺に聞くなって。殴るぞって。」
「…………。」
ふと冷静になってシュヴェルトの言葉と何時もの言動から汲み取って考える。
シュヴェルトは一度気になった事を自身が理解出来るまで質問するクセがある。それも相手が答え辛い事程知りたがり、まるで幼い子供のような純粋な目で根掘り葉掘り聞きたがる。
おそらく、シュヴェルトが質問責めにしたのだろう。
「子供ってどうやって生まれてくるんだろうなぁ。」とふと疑問に思った事を。そして根掘り葉掘り聞いた結果、彼の父、騎士団長は羞恥に耐えられなくなり、そう言って教える事から逃げたのだろう。
何故かサンタをコウノトリのくだりの代わりに使って。
ー 純粋な曇りない目に耐えられなくなって、息子の性教育から逃げたな!!
「……何をやってんだろう。」
火が出そうな程熱い顔を覆う。
銀色の瞳は恥辱に潤んでいる。
うわぁ、あれだけヤケになって関係迫ったのに全く…全く理解されなかった。
ただただ、恥ずかしい事言っただけじゃないか!!
ふざけんな!!
コイツもう十六歳だぞ!!
性教育くらいちゃんとしろッ!!
「よし!! これで相棒の事はオッケーだな。レオノールは優しい奴だから協力してくれると思ってたぜ。」
何時の間にかシュヴェルトの中では協力を承諾した事になってる。
先程の事でかなり心にダメージを負っていた。それでも「ふざけんな。」と否定しようとした。が、言う前にシュヴェルトが声を上げた。
「あっ!! 子供といえばさ、子供ってまず結婚しないと赤い服着た白ひげのじいさんは連れてきてくれないだろ。そうするとまず俺とレオノールが子供を作る為には結婚しないと。」
「……サンタは子供を授けてくれませんし、さっきの事は一旦忘れてください。一旦、…一旦なかった事に……。」
「でさあ。レオノールをこの家置いて置けないって思うんだ。そんな怪我負っちゃうし。それで俺、名案が浮かんだんだ。」
「話を聞け!! 」
一度こうと決めたら止まらない能天気なアホは得意げにトンデモない宣言を投下する。
「俺とレオノールが結婚すれば良いんだ!! 」
「はぁ!? 」
ー 何て!?
「そしてレオノールが俺の家、デーゲンに籍を入れればもう、ここに居なくていいし、俺の家なら家族皆んな優しいからレオノールも幸せになれるぞ。よし、今日からレオノールはレオノール・デーゲンだ!! 」
これで解決だなっと満足気にシュヴェルトは俺の手に巻かれたハンカチをもう一度巻き直す。俺はあまりの予想外というかもう訳の分からない展開に、コイツのワールドについて行けずに一瞬、言葉を失った。
はたとシュネー・フリューゲルの顔が浮かび、正気に戻る。
しっかりしろ。
コイツが好きなのはシュネーだ。
あんなに仲睦まじそうに学園の中庭で昼食をあーんして食べさせてたじゃないか(シュネーの皿に余計なお節介で肉を追加したのが角度的にそうレオノールには見えただけ)。フェルゼンとの事以降、二人で仲睦まじくいるようになったらアイツは俺の恋心を知っているかのように可哀想なものを見る目で……(ヴィルマからレオノールが攻略対象も悪役もやってると聞き、大変だなと同情の目を向けていただけ)。
「シュネー・フリューゲルは…。シュネー・フリューゲルの事好きでしょうアンタは!! 」
「うん、大好きだぜ。」
ー ほうら、みろ。
レオノールは混乱する頭にそう言い聞かせる。正気に戻ったっと自身では思っているが実際は相当混乱している。
「相棒だからな!! 背中を任せる戦友だから大好きだぞ!! 」
「えっ……。」
ー ん?
思わず眼鏡がずり落ちる。
えっ? 好きってそういう…。
いや、当たり前といえば…え?
「これからはレオノール。いや、今日からレオって呼ぶな。…レオの事も今まで以上大好きになるな!! 何たって夫婦になったんだからな。」
結婚を承諾はしていない。
だが何時の間にかに彼の中で俺達は夫婦になってる。苦言を呈したいが、一旦失って帰ってきた言葉がまた行方不明になり、言葉が出てこない。
その上、『大好き』と言われて、思考が停止する。顔が茹で蛸のように真っ赤になっていく。
俺にはこの世界で大っ嫌いな人間が三人いる。
一人は自身だけが虐げられ傀儡としてしか生きられないと諦めた男。
もう一人は俺達と同じで幸せにはなれない側の人間なのにそれでも足掻こうとする男。
そしてもう一人は……。
そしてもう一人はいとも簡単に俺を天国にも地獄にも突き落とす、俺の心を掻き乱すこの男。
俺が拒絶しても離れない。
何時だって分け隔てない笑顔と優しさをくれる能天気で自由人で身勝手でアホな男。
ーーーーーーーーーーーーーーー
なんちゃってキャラ紹介
レオノール・シルト
宰相の息子。ツンデレ。頭がいいがアホには勝てない。恋は盲目。
シュヴェルト・デーゲン
騎士団長んとこの次男。いい奴だがアホ。後、子供みたいに純粋。度々、騎士団の仲間達に本来ならば聞き辛い事を純粋に聞いてくる。一部では(特に大人から)恐れられている。騎士団長は息子の性教育を早々に匙を投げた。
溜息が口から溢れるのを抑えて、もう一度この恋を終わらせるために口を開く。
「……俺の言った抱けるかっていうのは俺とまぐわえるかって事だ。」
「まぐわうって何だ? 」
あー、もう、ヤダ、コイツ。
アホ過ぎんだろ。
思わず頭と顔に血がのぼる。
何故伝わらない。
こっちは早く、早くこの報われない恋を終わらせようと必死なのに……。
「まぐわうってッ…言うのは!! 俺とッ子供が出来る行為をッするって事だアホッ!! 」
顔が熱い。言ってて恥ずかしい。
でも流石にこれで分かっただろう。
これでコイツは俺から離れていく。
俺があの俺よりも持ってるシュネー・フリューゲルに負けて失恋したんじゃなくて、俺の手で失恋するんだ。
何を言っても拒絶しても離れず俺といて、隣で分け隔てない笑顔をくれたお前に、お前への恋心に俺自ら鉄槌を下すんだ。
アイツに負けて惨めになるくらいなら。
「子供ができる? 子供ってクリスマスの夜に赤い服着た白ひげのじいさんが連れてきてくれんだろ? 」
こてんっとシュヴェルトが首を傾げて、さも理解出来ない顔をこちらに向ける。
ー は? 何言ってんの??
「父さんが言ってだぞ。だからもうそれ以上俺に聞くなって。殴るぞって。」
「…………。」
ふと冷静になってシュヴェルトの言葉と何時もの言動から汲み取って考える。
シュヴェルトは一度気になった事を自身が理解出来るまで質問するクセがある。それも相手が答え辛い事程知りたがり、まるで幼い子供のような純粋な目で根掘り葉掘り聞きたがる。
おそらく、シュヴェルトが質問責めにしたのだろう。
「子供ってどうやって生まれてくるんだろうなぁ。」とふと疑問に思った事を。そして根掘り葉掘り聞いた結果、彼の父、騎士団長は羞恥に耐えられなくなり、そう言って教える事から逃げたのだろう。
何故かサンタをコウノトリのくだりの代わりに使って。
ー 純粋な曇りない目に耐えられなくなって、息子の性教育から逃げたな!!
「……何をやってんだろう。」
火が出そうな程熱い顔を覆う。
銀色の瞳は恥辱に潤んでいる。
うわぁ、あれだけヤケになって関係迫ったのに全く…全く理解されなかった。
ただただ、恥ずかしい事言っただけじゃないか!!
ふざけんな!!
コイツもう十六歳だぞ!!
性教育くらいちゃんとしろッ!!
「よし!! これで相棒の事はオッケーだな。レオノールは優しい奴だから協力してくれると思ってたぜ。」
何時の間にかシュヴェルトの中では協力を承諾した事になってる。
先程の事でかなり心にダメージを負っていた。それでも「ふざけんな。」と否定しようとした。が、言う前にシュヴェルトが声を上げた。
「あっ!! 子供といえばさ、子供ってまず結婚しないと赤い服着た白ひげのじいさんは連れてきてくれないだろ。そうするとまず俺とレオノールが子供を作る為には結婚しないと。」
「……サンタは子供を授けてくれませんし、さっきの事は一旦忘れてください。一旦、…一旦なかった事に……。」
「でさあ。レオノールをこの家置いて置けないって思うんだ。そんな怪我負っちゃうし。それで俺、名案が浮かんだんだ。」
「話を聞け!! 」
一度こうと決めたら止まらない能天気なアホは得意げにトンデモない宣言を投下する。
「俺とレオノールが結婚すれば良いんだ!! 」
「はぁ!? 」
ー 何て!?
「そしてレオノールが俺の家、デーゲンに籍を入れればもう、ここに居なくていいし、俺の家なら家族皆んな優しいからレオノールも幸せになれるぞ。よし、今日からレオノールはレオノール・デーゲンだ!! 」
これで解決だなっと満足気にシュヴェルトは俺の手に巻かれたハンカチをもう一度巻き直す。俺はあまりの予想外というかもう訳の分からない展開に、コイツのワールドについて行けずに一瞬、言葉を失った。
はたとシュネー・フリューゲルの顔が浮かび、正気に戻る。
しっかりしろ。
コイツが好きなのはシュネーだ。
あんなに仲睦まじそうに学園の中庭で昼食をあーんして食べさせてたじゃないか(シュネーの皿に余計なお節介で肉を追加したのが角度的にそうレオノールには見えただけ)。フェルゼンとの事以降、二人で仲睦まじくいるようになったらアイツは俺の恋心を知っているかのように可哀想なものを見る目で……(ヴィルマからレオノールが攻略対象も悪役もやってると聞き、大変だなと同情の目を向けていただけ)。
「シュネー・フリューゲルは…。シュネー・フリューゲルの事好きでしょうアンタは!! 」
「うん、大好きだぜ。」
ー ほうら、みろ。
レオノールは混乱する頭にそう言い聞かせる。正気に戻ったっと自身では思っているが実際は相当混乱している。
「相棒だからな!! 背中を任せる戦友だから大好きだぞ!! 」
「えっ……。」
ー ん?
思わず眼鏡がずり落ちる。
えっ? 好きってそういう…。
いや、当たり前といえば…え?
「これからはレオノール。いや、今日からレオって呼ぶな。…レオの事も今まで以上大好きになるな!! 何たって夫婦になったんだからな。」
結婚を承諾はしていない。
だが何時の間にかに彼の中で俺達は夫婦になってる。苦言を呈したいが、一旦失って帰ってきた言葉がまた行方不明になり、言葉が出てこない。
その上、『大好き』と言われて、思考が停止する。顔が茹で蛸のように真っ赤になっていく。
俺にはこの世界で大っ嫌いな人間が三人いる。
一人は自身だけが虐げられ傀儡としてしか生きられないと諦めた男。
もう一人は俺達と同じで幸せにはなれない側の人間なのにそれでも足掻こうとする男。
そしてもう一人は……。
そしてもう一人はいとも簡単に俺を天国にも地獄にも突き落とす、俺の心を掻き乱すこの男。
俺が拒絶しても離れない。
何時だって分け隔てない笑顔と優しさをくれる能天気で自由人で身勝手でアホな男。
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