66 / 131
生きて欲しいから
しおりを挟む
蝋燭の灯りがゆらゆらと燃えている。
蝋燭一本だけが柔く照らす小さな部屋の中、私とリヒトは正座で布団の上で向かい合っていた。
布団も客間も一つしかないとネズミに押し込められて、今に至るが、まあ、腹割って話すにはある意味丁度いいかもしれない。ただ……。
もじもじと思わず居心地が悪くて、足を動かす。
別にリヒトと二人が気まずくて居心地が悪い訳ではない。その…着てる服がちょっと……いや、だいぶ落ち着かない。
ネズミが寝巻きにと貸してくれた服。リヒトは普通の洋装の寝巻きなのだが、私に貸してくれたのは浴衣だった。いや、貸してくれたのに文句なんて言うべきでは無い。しかし、…この浴衣の正式な着方が…その…。
下着は履かないらしい…。
浴衣に直で…その…心許ない。
下着を履いてない違和感が…浴衣の少し薄い布地が…。
『あの子』のいた世界で夏に見かけた女の子達は下着を付けてなかったのだろうか?
よく、そんな心許ない格好で外を歩けるものだ。私には無理。
「シュネー…その、本当に今日はごめん。僕の事心配してくれたんだよね。ありがとう。」
「私こそごめんなさい。」
きちんと向かい合って話すのが初めてなのでヤケに緊張する。
後、やっぱり服が…浴衣が…。
部屋には私達の声以外一切の音がなく、元々狭い部屋が部屋を包む暗闇でもっと狭く感じる。隣の部屋にはネズミがいる筈なのだが、一切気配を感じない。
気を遣っているなら止めて欲しい。
静か過ぎて一層話辛い。
意を決してリヒトの顔を見やると意外にもリヒトは真っ直ぐに私を見つめていた。
こういうの苦手そうなのに。
「僕は…僕はずっと卑しい生まれから国王にも疎まれて、…城では僕の居場所は無かった。…宰相は僕を傀儡の王とする為に厳しく教育した。………身体には消えない傷がいくつも残ってる。」
ポツポツとリヒトが自身の今までの話をし始める。
きっと言葉に出来ない出来事も多くある筈だ。きっとこの言葉はリヒトの全ては語れない。でも掻い摘んだ話だとしても内容はとても聞いてるこっちが苦しくなってくるものだった。
「『友人』もシュネーは薄々分かっていたと思うけど…、僕を操る為、傀儡の僕が他に壊されない為に付けられた者達で、僕に心許せる友はいなかった。」
「シュヴェルトは? よく抜け出して会いに来てたでしょう。少しは……。」
「あれは君に会いに来てただけなんだ。君が騎士団の鍛錬に参加するまで僕は一度も騎士団の屯所には行った事ない。」
「はい? 」
ー 何て?
思わずポカンっとだらしなく口を開けた。
んっ? あれ?
暗い話がおかしな方向に行き始めた……。
「前にも言ったけど、シュネーを見ていると雪を見ているみたいで落ち着くんだ。」
「髪の色の話じゃなかったですっけ? まさか私の髪をわざわざ見に…はぁ? 」
「出会ってからずっと僕にとって君は何故か特別だった。何故か僕の心を支えてくれる雪の日のように。……君は僕と距離を取りたかったみたいだけどそれでも僕は君を見ているだけでよかった。」
「…………。」
なんだかこっちが聞いてて恥ずかしくなってくるような事をサラッと私の目をきちんと見て言い切る。
私に会いに来てた?
特別?
ちょっと待って。
話を聞くにリヒトがこういう性格になってしまった一因、私にもあるんじゃ……。
「その……あの頃は自分を守るので精一杯で……いや、すみません。」
「えっ、いや別にシュネーを責めては…。君だって大変だったんでしょう。その、エリアスやフェルゼンの事で…。………今度は君の話を聞かせてよ。」
気にしないでとリヒトが笑う。
もう次は私の話か…………。
やはり、まだゲルダの話はしたくないか。
「私は…まぁ……うん。喧嘩で言ってた事が大体の私の人生。エリアスとも関わりたくなかったし、最初は私が関わっていた人のほとんどと関わりたくないと思ってたな。」
「そうなんだ…。」
「まあ、今は良かったと思って…うん、大体は思って…る。」
「言い切れはしないんだね…。」
私の言葉にリヒトが苦笑いを浮かべて私の髪に手を伸ばす。
そう…言い切れないのが悲しい所。
年々、トラウマが酷くなってる。
今思えば会えてよかったと思う人もいれば一生会わなくてよかったと思う人もいる。まぁ、人間関係ってそういうものか。
私の話を聞きながら私の髪をくるくると指で弄ぶ。やめろと言いたい所だが、さっきの話を聞いたのとあんまりにも嬉しそうに触るものだからつい、許してしまう。
「ただまぁ、私もずっと貴方に思う所はありました。幸せになって欲しいと思ってた。貴方には不思議な、自身でも測り得ない感情を抱いている。正直、それが何なのかは一瞬分かった気もしたのにまた、分からなくなりました。ただ……。」
髪を弄ぶ手をギュッと手で祈るように包み込む。少しでも伝わって欲しいと祈りを込めて。
「生きていて欲しいんです。貴方に生きて欲しいと私は心の底から望んでいるんです。」
握ってるリヒトの手が震える。
その顔には困惑と苦悶の表情が浮かぶ。それ程この人にとって生きる事は辛いのだろう。
「何故? 命を、君の全てを懸けてまで……。何故、こんな価値のない僕を。」
「私には懸ける価値があったのでしょうね。だから『従騎士の誓い』も成立した。だから……。」
それ以上の言葉を飲み込む。
きっとこれ以上続けた所でリヒトはその言葉を受け取ってはくれない。それ程、今、リヒトにとってリヒトの命の、存在の価値は低い。
「これからの話をしませんか? 」
苦しい表情を浮かべるリヒトの手を再度優しく包む。
ゆっくりでいい。焦らなくていい。
この『刑受の森』からはまだ出られないのだから。まだこの関係は始まったばかりなのだから。
「正直、納得は出来ませんが。貴方は処断されてやっと、今まで苦しめられたものから解放された。だったら、好きに生きてみてもいいんじゃないでしょうか? 」
「好きに…? 」
「まだ、苦しいかもしれませんが、それでも今、貴方は自由だ。貴方は何を望みますか? 貴方は私に何を求めます? 」
ゆらりとリヒトの瞳が揺れる。
包んでいた手に更にリヒトの手のもう片方の手が添えられる。望むのもまだ難しいのだろうかと思ったが、意外にも揺れるその瞳には意志がのっていた。
「なら…、なら僕にも君を守らせて。君は僕の『従騎士』だから嫌だろうけど、僕は君を死なせたくも苦しめたくもないんだ。僕も強くなるから君の後ろじゃなくて横に居させて。」
「……無理しないなら善処します。貴方もどうやら『リンク』の戦力に加えられてるみたいですし。」
「それと……。」
「それと? 」
ふわりとリヒトの手が私の首筋に伸びる。そしてあの紋様をするりと撫でた。
「ッんあっ。」
ビリリと電気が走ったように首筋から甘い刺激が走る。手で撫でられただけなのに身体が熱い。この前より酷くなってる。
「君は嫌だと思うけど、触りたいんだ。触れていると満たされるんだ。」
優しく何度も撫でられて頭がクラクラしてくる。足が先程よりも、もじもじと動く。居心地が悪いのではなく熱を逃がそうと。
「……ほ。」
「ほ? 」
「他の事じゃ駄目ですか。」と言い掛けたが、言葉をしまう。
私は未だにあの行為自体を嫌悪してる。
だが、別に首筋を触るだけなら行為には…。ああ、でも催淫効…。うう、でもそれでこの人がひと時でも満たされるなら……。最後までやらな……うん。
頭の中で必死に私と私が葛藤してる。
断るのも受け入れるのもどちらも私には難しい。
ー でも、それを了承したらこの人の心は少しでも軽くなるのだろうか? 私が受け入れたら……少しは。
『一週間に一回は触らせてあげてぇよ。リヒッちゃん頑張ったぢゃん!! 』
よりにもよって、ネズミの言葉が私の頭の中に浮かぶ。余程この時の私は血迷っていた。
「い……。」
「い? 」
「一週間に……一回だけ…なら。」
その答えにリヒトが嬉しそうな表情を浮かべて、私を抱き寄せた。そのあまりに幸せそうな姿に判断は間違いではなかったのかもしれないと一瞬でも思った私を殴りたい。
「ふっ……んんんッ!? や、ひゃんッ……ちょっ!? …リヒ…あッ…やぁあッ!! 」
私の首筋の紋様をざらりと舌でゆっくりと舐め、時折チュッと口で吸い、甘噛みする。そこまで激しいものだと思ってなかった。
てっきり手で触れるくらいだと。ちょっと口塞いでちょっと疼きを我慢すれば終わる事だと思ってた。
それが最初の後悔。
人肌恋しいんだとか。
ゲルダがいなくなったから寂しいんだとか必死に正気になって考えると随分悲しい理由を付けて拒否しなかった。
だから私が…ん?
それ、私が埋めるものなのだろうか。いや、…気付いたら何かが終わる。
私の何かが終わってしまう。
だから受け入れ続けた。
何が終わるんだか自分でも分からないのに。それを考える事も拒絶するように。
そんな葛藤を抱きつつ、一週間、二週間、三週間、それが続くに連れて私の何かが変わっていく。
熱に浮かされて、痺れるような甘い疼きに堪え性のない身体が首筋を甘噛みされただけで感じて吐精した時は軽く絶望した。
その上で一番自身で許せない事は、何時の間にかにリヒトの手が首筋だけでなく、私のつるりとしたあの部分に伸びたというのに…。拒否することもなく、寧ろだらしなく強請るように足を自ら開てた自分がいた事だ。
トラウマはどうした!?
お前はここに何しに来た!?
私は血迷ったあの時の私を殴りたい。
あの時血迷わなければこんな事にはならなかった。
蝋燭一本だけが柔く照らす小さな部屋の中、私とリヒトは正座で布団の上で向かい合っていた。
布団も客間も一つしかないとネズミに押し込められて、今に至るが、まあ、腹割って話すにはある意味丁度いいかもしれない。ただ……。
もじもじと思わず居心地が悪くて、足を動かす。
別にリヒトと二人が気まずくて居心地が悪い訳ではない。その…着てる服がちょっと……いや、だいぶ落ち着かない。
ネズミが寝巻きにと貸してくれた服。リヒトは普通の洋装の寝巻きなのだが、私に貸してくれたのは浴衣だった。いや、貸してくれたのに文句なんて言うべきでは無い。しかし、…この浴衣の正式な着方が…その…。
下着は履かないらしい…。
浴衣に直で…その…心許ない。
下着を履いてない違和感が…浴衣の少し薄い布地が…。
『あの子』のいた世界で夏に見かけた女の子達は下着を付けてなかったのだろうか?
よく、そんな心許ない格好で外を歩けるものだ。私には無理。
「シュネー…その、本当に今日はごめん。僕の事心配してくれたんだよね。ありがとう。」
「私こそごめんなさい。」
きちんと向かい合って話すのが初めてなのでヤケに緊張する。
後、やっぱり服が…浴衣が…。
部屋には私達の声以外一切の音がなく、元々狭い部屋が部屋を包む暗闇でもっと狭く感じる。隣の部屋にはネズミがいる筈なのだが、一切気配を感じない。
気を遣っているなら止めて欲しい。
静か過ぎて一層話辛い。
意を決してリヒトの顔を見やると意外にもリヒトは真っ直ぐに私を見つめていた。
こういうの苦手そうなのに。
「僕は…僕はずっと卑しい生まれから国王にも疎まれて、…城では僕の居場所は無かった。…宰相は僕を傀儡の王とする為に厳しく教育した。………身体には消えない傷がいくつも残ってる。」
ポツポツとリヒトが自身の今までの話をし始める。
きっと言葉に出来ない出来事も多くある筈だ。きっとこの言葉はリヒトの全ては語れない。でも掻い摘んだ話だとしても内容はとても聞いてるこっちが苦しくなってくるものだった。
「『友人』もシュネーは薄々分かっていたと思うけど…、僕を操る為、傀儡の僕が他に壊されない為に付けられた者達で、僕に心許せる友はいなかった。」
「シュヴェルトは? よく抜け出して会いに来てたでしょう。少しは……。」
「あれは君に会いに来てただけなんだ。君が騎士団の鍛錬に参加するまで僕は一度も騎士団の屯所には行った事ない。」
「はい? 」
ー 何て?
思わずポカンっとだらしなく口を開けた。
んっ? あれ?
暗い話がおかしな方向に行き始めた……。
「前にも言ったけど、シュネーを見ていると雪を見ているみたいで落ち着くんだ。」
「髪の色の話じゃなかったですっけ? まさか私の髪をわざわざ見に…はぁ? 」
「出会ってからずっと僕にとって君は何故か特別だった。何故か僕の心を支えてくれる雪の日のように。……君は僕と距離を取りたかったみたいだけどそれでも僕は君を見ているだけでよかった。」
「…………。」
なんだかこっちが聞いてて恥ずかしくなってくるような事をサラッと私の目をきちんと見て言い切る。
私に会いに来てた?
特別?
ちょっと待って。
話を聞くにリヒトがこういう性格になってしまった一因、私にもあるんじゃ……。
「その……あの頃は自分を守るので精一杯で……いや、すみません。」
「えっ、いや別にシュネーを責めては…。君だって大変だったんでしょう。その、エリアスやフェルゼンの事で…。………今度は君の話を聞かせてよ。」
気にしないでとリヒトが笑う。
もう次は私の話か…………。
やはり、まだゲルダの話はしたくないか。
「私は…まぁ……うん。喧嘩で言ってた事が大体の私の人生。エリアスとも関わりたくなかったし、最初は私が関わっていた人のほとんどと関わりたくないと思ってたな。」
「そうなんだ…。」
「まあ、今は良かったと思って…うん、大体は思って…る。」
「言い切れはしないんだね…。」
私の言葉にリヒトが苦笑いを浮かべて私の髪に手を伸ばす。
そう…言い切れないのが悲しい所。
年々、トラウマが酷くなってる。
今思えば会えてよかったと思う人もいれば一生会わなくてよかったと思う人もいる。まぁ、人間関係ってそういうものか。
私の話を聞きながら私の髪をくるくると指で弄ぶ。やめろと言いたい所だが、さっきの話を聞いたのとあんまりにも嬉しそうに触るものだからつい、許してしまう。
「ただまぁ、私もずっと貴方に思う所はありました。幸せになって欲しいと思ってた。貴方には不思議な、自身でも測り得ない感情を抱いている。正直、それが何なのかは一瞬分かった気もしたのにまた、分からなくなりました。ただ……。」
髪を弄ぶ手をギュッと手で祈るように包み込む。少しでも伝わって欲しいと祈りを込めて。
「生きていて欲しいんです。貴方に生きて欲しいと私は心の底から望んでいるんです。」
握ってるリヒトの手が震える。
その顔には困惑と苦悶の表情が浮かぶ。それ程この人にとって生きる事は辛いのだろう。
「何故? 命を、君の全てを懸けてまで……。何故、こんな価値のない僕を。」
「私には懸ける価値があったのでしょうね。だから『従騎士の誓い』も成立した。だから……。」
それ以上の言葉を飲み込む。
きっとこれ以上続けた所でリヒトはその言葉を受け取ってはくれない。それ程、今、リヒトにとってリヒトの命の、存在の価値は低い。
「これからの話をしませんか? 」
苦しい表情を浮かべるリヒトの手を再度優しく包む。
ゆっくりでいい。焦らなくていい。
この『刑受の森』からはまだ出られないのだから。まだこの関係は始まったばかりなのだから。
「正直、納得は出来ませんが。貴方は処断されてやっと、今まで苦しめられたものから解放された。だったら、好きに生きてみてもいいんじゃないでしょうか? 」
「好きに…? 」
「まだ、苦しいかもしれませんが、それでも今、貴方は自由だ。貴方は何を望みますか? 貴方は私に何を求めます? 」
ゆらりとリヒトの瞳が揺れる。
包んでいた手に更にリヒトの手のもう片方の手が添えられる。望むのもまだ難しいのだろうかと思ったが、意外にも揺れるその瞳には意志がのっていた。
「なら…、なら僕にも君を守らせて。君は僕の『従騎士』だから嫌だろうけど、僕は君を死なせたくも苦しめたくもないんだ。僕も強くなるから君の後ろじゃなくて横に居させて。」
「……無理しないなら善処します。貴方もどうやら『リンク』の戦力に加えられてるみたいですし。」
「それと……。」
「それと? 」
ふわりとリヒトの手が私の首筋に伸びる。そしてあの紋様をするりと撫でた。
「ッんあっ。」
ビリリと電気が走ったように首筋から甘い刺激が走る。手で撫でられただけなのに身体が熱い。この前より酷くなってる。
「君は嫌だと思うけど、触りたいんだ。触れていると満たされるんだ。」
優しく何度も撫でられて頭がクラクラしてくる。足が先程よりも、もじもじと動く。居心地が悪いのではなく熱を逃がそうと。
「……ほ。」
「ほ? 」
「他の事じゃ駄目ですか。」と言い掛けたが、言葉をしまう。
私は未だにあの行為自体を嫌悪してる。
だが、別に首筋を触るだけなら行為には…。ああ、でも催淫効…。うう、でもそれでこの人がひと時でも満たされるなら……。最後までやらな……うん。
頭の中で必死に私と私が葛藤してる。
断るのも受け入れるのもどちらも私には難しい。
ー でも、それを了承したらこの人の心は少しでも軽くなるのだろうか? 私が受け入れたら……少しは。
『一週間に一回は触らせてあげてぇよ。リヒッちゃん頑張ったぢゃん!! 』
よりにもよって、ネズミの言葉が私の頭の中に浮かぶ。余程この時の私は血迷っていた。
「い……。」
「い? 」
「一週間に……一回だけ…なら。」
その答えにリヒトが嬉しそうな表情を浮かべて、私を抱き寄せた。そのあまりに幸せそうな姿に判断は間違いではなかったのかもしれないと一瞬でも思った私を殴りたい。
「ふっ……んんんッ!? や、ひゃんッ……ちょっ!? …リヒ…あッ…やぁあッ!! 」
私の首筋の紋様をざらりと舌でゆっくりと舐め、時折チュッと口で吸い、甘噛みする。そこまで激しいものだと思ってなかった。
てっきり手で触れるくらいだと。ちょっと口塞いでちょっと疼きを我慢すれば終わる事だと思ってた。
それが最初の後悔。
人肌恋しいんだとか。
ゲルダがいなくなったから寂しいんだとか必死に正気になって考えると随分悲しい理由を付けて拒否しなかった。
だから私が…ん?
それ、私が埋めるものなのだろうか。いや、…気付いたら何かが終わる。
私の何かが終わってしまう。
だから受け入れ続けた。
何が終わるんだか自分でも分からないのに。それを考える事も拒絶するように。
そんな葛藤を抱きつつ、一週間、二週間、三週間、それが続くに連れて私の何かが変わっていく。
熱に浮かされて、痺れるような甘い疼きに堪え性のない身体が首筋を甘噛みされただけで感じて吐精した時は軽く絶望した。
その上で一番自身で許せない事は、何時の間にかにリヒトの手が首筋だけでなく、私のつるりとしたあの部分に伸びたというのに…。拒否することもなく、寧ろだらしなく強請るように足を自ら開てた自分がいた事だ。
トラウマはどうした!?
お前はここに何しに来た!?
私は血迷ったあの時の私を殴りたい。
あの時血迷わなければこんな事にはならなかった。
57
あなたにおすすめの小説
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~
荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。
弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。
そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。
でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。
そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います!
・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね?
本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。
そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。
お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます!
2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。
2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・?
2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。
2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる