偽物勇者は愛を乞う

きっせつ

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「勇者じゃないってサイコー」

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白い光が空から降りしきる。
その光をニルは片方だけになってしまった瞳で眺め、焼け付く様に痛む右手を見やった。

ニルの右手の甲に刻まれた勇者の印は焼け付く熱と共に蒸発する様に光の粒へと変わった。光の粒は空から降っていた白い光と共に召喚陣の真ん中で収縮し、人の形へと姿を変えた。

「奇跡だ…」

誰かの感嘆の声と共にニルの前に姿を現したのは見慣れぬ格好をした異世界人。その右手の甲には六年間、ニルの右手の甲に刻まれていたあの勇者の印が輝いていた。


ニルは勇者だった。
ニルが十歳の頃に右手の甲に勇者の印が浮かび上がり、平民だったニルは勇者として王城で育てられた。この瞬間まで魔王を倒すべく、仲間達と戦い続けていた。
魔王幹部戦で左目を失いながらもニルはなんとか勝ち続け、人類を魔王の魔の手から守り続けてきたのだ。

しかし、そんなある日、とある有名な預言者が本物の勇者は異世界から現ると予言した。予言はやがて人々の中で疑惑となり、そして今、確信へと変わってしまった。

「この偽物めっ!私達を騙していたのだな!!」

真の勇者を前に神官達はニルを罵った。
死線を共に乗り越えた仲間達もニルを嘘吐きだと軽蔑の目を向ける。

全てを失い、偽物として国からも疎まれ、生まれ故郷にも帰れなくなってしまったニルは逃げるように人里離れた森の奥の小屋に隠遁した。

栄光から転落へと一気に落ちてしまったニル。だが、彼は…。


「はぁー。勇者じゃないってサイコー!!!」

没落人生を心の底からエンジョイしていた。
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