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バシャンッ
「くっ」
私は転んでしまった。
逆を言えば、よくここまで転ばずにいられたものだ。
まだ、病み上がりの私は再び心も身体も弱り切っていた。
「これ・・・っ、そこのお嬢さん」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・んぐっ」
私は弾む呼吸を整えて、老婆の声のする方を見る。
紫のローブを身にまとった老婆はたいそう立派な杖と煌びやかな装飾品を付けている。
「中に・・・お入り」
雨の音がうるさかったけれど、ぽつりと言った老婆の言葉はなぜかよく聞こえた。まるで、耳元で直接話しかけているかのような感覚だった。老婆はそう言い残すと、店の中に入ってしまう。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・っ」
私は走りたかった。
けれど、運動神経がない私が走っても結果はこの様だ。
息は絶え絶え、もう足だって力が入らない。
極めつけはおまけに意志も弱い。
走って、お父様とお母様の墓に行ったのち、自分の家に帰ることを目標に、道中で死んでも構わないと思いながら走って来たけれど、重い服は私の歩みを鈍らせて、満身創痍だ。
この老婆の発言が優しさに満ち溢れていたのであれば、私はその店には入らなかっただろう。
けれど、ちらっと見えた老婆の口元は笑っており、哀れみでも、優しさでもない別のなにか・・・そう、私のことを面白そうなピエロを見るように見ていた気がした。
ギーーーィッ
カランコロン、カランコロンッ
だから、私は老婆の店へ入った。
「はてさて、そこにお座りくださいな」
老婆は奥で座っており、テーブルには大きな水晶玉が置いてあった。
「あの・・・私、お金を・・・」
「いいから、いいから・・・」
そう言って、老婆は椅子へ座るように手で促す。
私はびしょびしょだったので、玄関でスカートを絞り、中に入っていく。けれど、力のない私ではちゃんと絞り切ることができず、ぽたぽた水滴がたれてしまっている。けれど、それでも老婆は入って来いと手を招いているので、お店の奥へと進んでいく。店の中は老婆の近くにろうそくが灯っているだけで、他は暗くてよく見えなかった。
「失礼します・・・」
いつ死んでも構わない。そう思っていたけれど、その老婆の怖さは死と違った別次元の怖さだった。
少し警戒しながら、私は水晶と老婆の前に座った。
ニヤッ
不気味に笑う老婆の歯はほとんどない。
そんな老婆は水晶に両手をかざし、水晶の周りを撫でるように手を動かす。
「ふふ・・・っ。やっぱり面白いぞえ・・・」
ニヤッ
今度の笑い方は卑しい笑い方だった。
「何がでしょうか?」
そう尋ねると老婆は、
「ひぇっひぇっひぇっひぇ・・・」
と笑う。
ちょっと、不快だ。
その水晶には何が見えているのだろうか?
何も見えていないで、私を騙そうとしているのか?
それとも、過去。
それとも―――
「あんたには逃げることは許されないよ」
私が水晶を覗いていると老婆はそう呟いた。
「くっ」
私は転んでしまった。
逆を言えば、よくここまで転ばずにいられたものだ。
まだ、病み上がりの私は再び心も身体も弱り切っていた。
「これ・・・っ、そこのお嬢さん」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・んぐっ」
私は弾む呼吸を整えて、老婆の声のする方を見る。
紫のローブを身にまとった老婆はたいそう立派な杖と煌びやかな装飾品を付けている。
「中に・・・お入り」
雨の音がうるさかったけれど、ぽつりと言った老婆の言葉はなぜかよく聞こえた。まるで、耳元で直接話しかけているかのような感覚だった。老婆はそう言い残すと、店の中に入ってしまう。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・っ」
私は走りたかった。
けれど、運動神経がない私が走っても結果はこの様だ。
息は絶え絶え、もう足だって力が入らない。
極めつけはおまけに意志も弱い。
走って、お父様とお母様の墓に行ったのち、自分の家に帰ることを目標に、道中で死んでも構わないと思いながら走って来たけれど、重い服は私の歩みを鈍らせて、満身創痍だ。
この老婆の発言が優しさに満ち溢れていたのであれば、私はその店には入らなかっただろう。
けれど、ちらっと見えた老婆の口元は笑っており、哀れみでも、優しさでもない別のなにか・・・そう、私のことを面白そうなピエロを見るように見ていた気がした。
ギーーーィッ
カランコロン、カランコロンッ
だから、私は老婆の店へ入った。
「はてさて、そこにお座りくださいな」
老婆は奥で座っており、テーブルには大きな水晶玉が置いてあった。
「あの・・・私、お金を・・・」
「いいから、いいから・・・」
そう言って、老婆は椅子へ座るように手で促す。
私はびしょびしょだったので、玄関でスカートを絞り、中に入っていく。けれど、力のない私ではちゃんと絞り切ることができず、ぽたぽた水滴がたれてしまっている。けれど、それでも老婆は入って来いと手を招いているので、お店の奥へと進んでいく。店の中は老婆の近くにろうそくが灯っているだけで、他は暗くてよく見えなかった。
「失礼します・・・」
いつ死んでも構わない。そう思っていたけれど、その老婆の怖さは死と違った別次元の怖さだった。
少し警戒しながら、私は水晶と老婆の前に座った。
ニヤッ
不気味に笑う老婆の歯はほとんどない。
そんな老婆は水晶に両手をかざし、水晶の周りを撫でるように手を動かす。
「ふふ・・・っ。やっぱり面白いぞえ・・・」
ニヤッ
今度の笑い方は卑しい笑い方だった。
「何がでしょうか?」
そう尋ねると老婆は、
「ひぇっひぇっひぇっひぇ・・・」
と笑う。
ちょっと、不快だ。
その水晶には何が見えているのだろうか?
何も見えていないで、私を騙そうとしているのか?
それとも、過去。
それとも―――
「あんたには逃げることは許されないよ」
私が水晶を覗いていると老婆はそう呟いた。
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