【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。

西東友一

文字の大きさ
16 / 28

16

しおりを挟む
 フロリアが去った後、私とリチャードは顔を見合わせた。

「キミは変わらないね」

「変わったでしょ?ホラっ」

 私は頭と腰に手を当ててくねっとして見た。

「ああ、そうだね。とても魅力的な女性になった」

「ちょっと・・・ふざけたのに、そんなマジマジと言われると・・・」

 照れてしまう。
 小さい頃には見せなかった、余裕があって微笑む姿はちょっとだけかっこいい。
 昔はこんな風にすれば、アタフタしてた気がするけれど、

「あははっ。でも、性格は変わらないね」
 
 今ではこんなに強きというか、小生意気になってしまった。

(ちょっと、余裕があり過ぎじゃない?)

 ちょっと自分の中で芽生えつつある感情がその余裕を見るとヤキモキさせられる。

「リチャードのいじわるっ。貴方は逆に変わったわね」

 私は自分で言っておきながら、少し寂しくなる。

「ほんとに・・・変わっちゃったね」

 私の言葉を聞いてリチャードも悲しい顔をする。

「ボクも背負うものがあるからね。もう、子どもじゃいられない・・・」

「・・・そう」

 私の知らないリチャードがいる。
 それが、寂しかった。

「でも、私は・・・昔の優しい貴方が好きよ?」

 リチャードは何も答えなかった。
 確か、リチャードのお父様は大変厳しい方だった気がする。それも、リチャードが一人息子で彼の器を信じてのことだとは思うけれど、私は彼が折れてしまうんじゃないかとも心配するくらいスパルタだった。

 でも、それは杞憂でリチャードは乗り越えて、今のリチャードになったんだとも思った。
 人の上に立つのであれば、優しいだけではいられない。優しいだけの自分ではいられないということなのかもしれない。それは・・・わかるんだけれども・・・。

(いいえ、もしかしたら、リチャードにもいい人が・・・)

 もう一つの可能性。
 私が婚約をしていたように、リチャードだって年頃の青年だ。
 まして、こんなにも魅力的で優しい上、王子であれば王家を絶やすわけにもいかないわけだし・・・。

(私はここにいていいのだろうか?さっき逃げ出したのが正解・・・)

「あっ、そうよ。手紙」

 フロリアとリチャードの掛け合いがあまりにも過激だったので忘れてしまっていたけれど、私が戻ってきた一番の理由を思い出す。

「ああ・・・。ねぇ、約束してくれるかい?」

 胸の内ポケットから手紙を出すリチャード。
 小さい頃からよく家で目にした封蝋印と遠目でもわかる父の筆跡で書かれた文字たち。

「何を?」

 私はリチャードの手に持っていた手紙に目線を奪われていたけれど、リチャードの顔を見ると、とても不安そうな顔をしている。

「これを読んでもボクを嫌いにならないでいてほしい」

 私は思いもしない言葉がリチャードから出てきたので怪訝な顔でリチャードを見つめてしまった。
 すると、成長して頼もしくなったリチャードがバツの悪くなった子どものように私から目線を逸らして、視線を落とした。

しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する

下菊みこと
恋愛
妹のために尽くしてきた姉、妹の裏切りで幸せになる。 ナタリアはルリアに婚約者を取られる。しかしそのおかげで力を遺憾なく発揮できるようになる。周りはルリアから手のひらを返してナタリアを歓迎するようになる。 小説家になろう様でも投稿しています。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

病弱を演じていた性悪な姉は、仮病が原因で大変なことになってしまうようです

柚木ゆず
ファンタジー
 優秀で性格の良い妹と比較されるのが嫌で、比較をされなくなる上に心配をしてもらえるようになるから。大嫌いな妹を、召し使いのように扱き使えるから。一日中ゴロゴロできて、なんでも好きな物を買ってもらえるから。  ファデアリア男爵家の長女ジュリアはそんな理由で仮病を使い、可哀想な令嬢を演じて理想的な毎日を過ごしていました。  ですが、そんな幸せな日常は――。これまで彼女が吐いてきた嘘によって、一変してしまうことになるのでした。

没落寸前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更手のひらを返しても遅いのです。

木山楽斗
恋愛
両親が亡くなってすぐに兄が失踪した。 不幸が重なると思っていた私に、さらにさらなる不幸が降りかかってきた。兄が失踪したのは子爵家の財産のほとんどを手放さなければならい程の借金を抱えていたからだったのだ。 当然のことながら、使用人達は解雇しなければならなくなった。 多くの使用人が、私のことを罵倒してきた。子爵家の勝手のせいで、職を失うことになったからである。 しかし、中には私のことを心配してくれる者もいた。 その中の一人、フェリオスは私の元から決して離れようとしなかった。彼は、私のためにその人生を捧げる覚悟を決めていたのだ。 私は、そんな彼とともにとあるものを見つけた。 それは、先祖が密かに残していた遺産である。 驚くべきことに、それは子爵家の財産をも上回る程のものだった。おかげで、子爵家は存続することができたのである。 そんな中、私の元に帰ってくる者達がいた。 それは、かつて私を罵倒してきた使用人達である。 彼らは、私に媚を売ってきた。もう一度雇って欲しいとそう言ってきたのである。 しかし、流石に私もそんな彼らのことは受け入れられない。 「今更、掌を返しても遅い」 それが、私の素直な気持ちだった。 ※2021/12/25 改題しました。(旧題:没落貴族一歩手前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更掌を返してももう遅いのです。)

王都を追放された私は、実は幸運の女神だったみたいです。

冬吹せいら
恋愛
ライロット・メンゼムは、令嬢に難癖をつけられ、王都を追放されることになった。 しかし、ライロットは、自分でも気が付いていなかったが、幸運の女神だった。 追放された先の島に、幸運をもたらし始める。 一方、ライロットを追放した王都には、何やら不穏な空気が漂い始めていた。

姉の代わりになど嫁ぎません!私は殿方との縁がなく地味で可哀相な女ではないのだから─。

coco
恋愛
殿方との縁がなく地味で可哀相な女。 お姉様は私の事をそう言うけど…あの、何か勘違いしてません? 私は、あなたの代わりになど嫁ぎませんので─。

【完結済み】妹の婚約者に、恋をした

鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。 刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。 可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。 無事完結しました。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

処理中です...