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「ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございますっ」
兵士たちに床に押さえつけられながらフロリアがリチャードに感謝を述べる。
「何がだい?フロリア」
言葉も表情も穏やかだけれど、リチャードは明らかに怒っている。
「それは赦していただいて・・・」
フロリアは緊張しながら答える。兵士たちもそんなに怒るリチャードを見たことがない様子で困惑している。
「ボクは何も赦していないよ。仮に赦すとすれば何を赦せばいいのかわかるかな?フロリア」
「そっ、それは・・・」
ギロッ
フロリアが私を睨む。
「おいっ」
それを見たリチャードはフロリアを睨んで見下す。
いつ、死刑と言ってもおかしくない状況だ。
「貴族であるアリア様に失言を申しましたぁっ」
「そうだよね。それの何がいけないのかな?」
「平民のわたくしめが、貴族の方に失礼を働き、リチャード様の名を穢す・・・」
「ボクの名前がどうこうなんてどうでもいいんだよ、フロリア・・・。キミはまず主人であるボクよりも前に謝罪しなければならない人がいることをまだわかってくれないのかい?」
「それは・・・」
フロリアは頭を上げない。
どうあっても私には謝りたくない意地があるようだ。
貴族に対しての恨みなのか、それともリチャードへの・・・。
「ねぇ、もう・・・、もういいからリチャード」
私はリチャードを諭す。
「なぜだ、アリア・・・彼女が言ったことなんて詭弁なんだよ?」
「別に気にしてないから・・・」
「なら、あの雨の中逃げたりしないだろう?」
必死に怒るリチャード。
その気迫に私は言葉が詰まる。
「ボクはもう・・・動けないで後悔したくないんだ」
私にはリチャードが何を後悔しているのかわからないが、その後悔を彼はかなり悔いているようだ。
「そうね・・・気にしていたわ、さっきまで。でも、今は大丈夫。だって・・・貴方がいるもの」
じーっと、見つめ合う私とリチャード。
リチャードの目もいつになく真剣で少し怖いけれど、私は折れる気がない。
私のためとはいえ、こんな悪役みたいなのはリチャードには似合わないもの。
「キミには勝てないよ、アリア・・・っ。彼女をどうしたい?」
先に折れてくれたのはやっぱり、リチャードだった。
ため息をついたリチャードは苦笑いしながら、いつもの顔に戻った。
(よかったぁ・・・)
「今までどおりで、お願いします」
私がちらっとフロリアを見ると、髪の隙間から睨んだ目が見ている。
「大丈夫だと思うかい?ボクはキミの身体に何かあったらと思うと・・・」
「大丈夫よ。私だって強いんだから、でしょ」
私はシャドーボクシングをしてみる。我ながら、パンチがネコパンチで弱そうだ。
昔はこれで、びびっていたリチャードは温かい目で私を見ている。昔は剣の稽古も泣いていたけれど、今の逞しい身体を見れば、私は彼に剣も体術ももう勝てないだろう。
「はははっ。わかったよ、よし。離してくれ」
兵士たちがフロリアを離す。
「ありがとうございます、リチャード様」
「次はないよ、フロリア」
「・・・はい」
睨みはしなかったが、フロリアは怪訝な顔で私を見た。
「よし、下がってくれ」
「はいっ」
フロリアはリチャードだけに大きくお辞儀をしてその場を後にした。
私はちょっとだけ心配になって苦笑いした。
兵士たちに床に押さえつけられながらフロリアがリチャードに感謝を述べる。
「何がだい?フロリア」
言葉も表情も穏やかだけれど、リチャードは明らかに怒っている。
「それは赦していただいて・・・」
フロリアは緊張しながら答える。兵士たちもそんなに怒るリチャードを見たことがない様子で困惑している。
「ボクは何も赦していないよ。仮に赦すとすれば何を赦せばいいのかわかるかな?フロリア」
「そっ、それは・・・」
ギロッ
フロリアが私を睨む。
「おいっ」
それを見たリチャードはフロリアを睨んで見下す。
いつ、死刑と言ってもおかしくない状況だ。
「貴族であるアリア様に失言を申しましたぁっ」
「そうだよね。それの何がいけないのかな?」
「平民のわたくしめが、貴族の方に失礼を働き、リチャード様の名を穢す・・・」
「ボクの名前がどうこうなんてどうでもいいんだよ、フロリア・・・。キミはまず主人であるボクよりも前に謝罪しなければならない人がいることをまだわかってくれないのかい?」
「それは・・・」
フロリアは頭を上げない。
どうあっても私には謝りたくない意地があるようだ。
貴族に対しての恨みなのか、それともリチャードへの・・・。
「ねぇ、もう・・・、もういいからリチャード」
私はリチャードを諭す。
「なぜだ、アリア・・・彼女が言ったことなんて詭弁なんだよ?」
「別に気にしてないから・・・」
「なら、あの雨の中逃げたりしないだろう?」
必死に怒るリチャード。
その気迫に私は言葉が詰まる。
「ボクはもう・・・動けないで後悔したくないんだ」
私にはリチャードが何を後悔しているのかわからないが、その後悔を彼はかなり悔いているようだ。
「そうね・・・気にしていたわ、さっきまで。でも、今は大丈夫。だって・・・貴方がいるもの」
じーっと、見つめ合う私とリチャード。
リチャードの目もいつになく真剣で少し怖いけれど、私は折れる気がない。
私のためとはいえ、こんな悪役みたいなのはリチャードには似合わないもの。
「キミには勝てないよ、アリア・・・っ。彼女をどうしたい?」
先に折れてくれたのはやっぱり、リチャードだった。
ため息をついたリチャードは苦笑いしながら、いつもの顔に戻った。
(よかったぁ・・・)
「今までどおりで、お願いします」
私がちらっとフロリアを見ると、髪の隙間から睨んだ目が見ている。
「大丈夫だと思うかい?ボクはキミの身体に何かあったらと思うと・・・」
「大丈夫よ。私だって強いんだから、でしょ」
私はシャドーボクシングをしてみる。我ながら、パンチがネコパンチで弱そうだ。
昔はこれで、びびっていたリチャードは温かい目で私を見ている。昔は剣の稽古も泣いていたけれど、今の逞しい身体を見れば、私は彼に剣も体術ももう勝てないだろう。
「はははっ。わかったよ、よし。離してくれ」
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「ありがとうございます、リチャード様」
「次はないよ、フロリア」
「・・・はい」
睨みはしなかったが、フロリアは怪訝な顔で私を見た。
「よし、下がってくれ」
「はいっ」
フロリアはリチャードだけに大きくお辞儀をしてその場を後にした。
私はちょっとだけ心配になって苦笑いした。
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