ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi

文字の大きさ
1 / 68

飛びました

しおりを挟む
 ああ、私はやっぱり運が悪い。

 絶望的な状況の中、シャーロットは冷静にそう思っていた。

 彼女は今、魔獣に背中を引き裂かれ空中を飛んでいる。

 とんでもなく痛いはずなのに何も感じない体。飛び散る血、何故かゆっくりと時が過ぎていっている気もする。


 こんな状況下なのにちょっとだけ良かった事がある。

 私を助けようと必死な顔で手を伸ばしている銀髪の美少年を見れた事。

 人生最後に目に映ったのが美少年で良かった。


 だってめちゃくちゃカッコいい……。

 シャーロットはそう思い目を閉じた。


ーーーーーー*


「うわああっ! 魔獣だぁっ!」
「きゃああっ!」

 晴れ渡る空の下、アルバ王国では三人の姫の婚約者を決めるのが主な目的であるパーティーが城の庭園で開かれていた。

 その会場上空に、蜥蜴に翼の生えたような姿の魔獣が現れたのだ。城には結界が張ってあり、魔獣など入るはずも無かったのだが、何故かそれは現れた。

 庭園には多くの若い令息、令嬢達がいる。


 その中に魔獣を見据える青い目、銀の髪の二人の兄弟がいた。

「エスター、剣は持ってない……よな」
「侍従に預けています、オスカー兄さんは?」
「俺もだ」

 そう話すと二人はとりあえず魔獣めがけて走り出した。

 オスカーとエスター兄弟は、竜獣人で王国最強騎士と名高いヴィクトール・レイナルド公爵の息子達だ。

 本来なら二人はパーティーなど好まないし、ましてや王女の婚約者など興味もなかった。だが、王女達は二人を好ましく思っており、それを知る王がレイナルド公爵に是非参加させて欲しいと直々に頼み込んで来たのだ。
 今日二人は、父親の命で仕方なく参加していた。

 騎士である二人は普段、剣を携帯している。だが、この日は控室に待つ侍従に預けていた。
 その内、優秀な侍従が騒ぎを聞きつけ持ってくるだろう、そう考え二人は空から襲いかかる魔獣の気を自分達へ引きつけ、攻撃を交わしながら人のいない庭園の奥へと誘き寄せた。

 庭園の端まで来た時、魔獣がエスター目掛けて突撃して来た。

「バカなヤツ」

 ひらりと攻撃を交わしたその先、生垣の向こう側にある細道を、洗濯カゴを持って歩くメイドがいた事にエスターは気付いていなかった。

「危ないっ!」

 エスターがその子に向け叫んだ時には、魔獣の長く鋭い爪が生垣を突き抜け、彼女の体を空高く舞い上げた。

 背中を切り裂かれ、力なく堕ちていくそのメイドを、オスカーが手を伸ばし受け止めている。

 魔獣は一旦上空へと飛びあがりこちらを見据えている。そこへようやく城の近衛騎士達が弓を携えやって来て、一斉に魔獣へ向け矢を放った。
 しかし、矢は魔獣の口から吐き出された炎により一瞬で焼け落ち塵となった。

「エスター! この子を治癒魔法士の所へ! 魔獣は俺が仕留める!」

 血まみれの女の子をエスターに抱き抱えさせると、オスカーは侍従が持ってきた剣を片手に地面を蹴った。

 空から襲いかかる魔獣。オスカーは口から吐き出された炎ごと、剣で真っ二つに切り裂いていく。魔獣はゴアアーッという呻き声を上げ、剣から発する聖なる炎に身を焼き消された。

 魔獣を倒したオスカーにそこに居た人が々集まり、賞賛を述べ始めた。大変な事が起きたにも関わらず、王妃はそんな事はどうでもいいと云うように、彼に第一王女エリーゼの婚約者になって欲しいと言い出した。

(コイツら何を言ってるんだ? 今、一人の女の子が死にかけているんだぞ⁈)

 オスカーは言い寄る王妃やエリーゼ王女を腹ただしく思いながら、あの子の怪我が気になるから様子を見に行く、と話す。

 すると、あちらは貴方の弟がついているから大丈夫だと引き留めてくる。一体どう言う神経をしているんだ、怒りが湧いていた所へ第二王女ミリアリアが声をかけて来た。

「お母様、エリーゼお姉様、オスカー様はまずお着物を召し替えられた方が宜しいかとおもいますわ。私が案内します」

 ミリアリア王女はそう言うと、オスカーの手を取り、王妃達に有無を言わせずこの場から連れ去った。

「いいのですか?」

「大丈夫です。さぁ、オスカー様は治療室の方へ、先程のメイドが気になられているでしょう? 会場の後始末は私にお任せください」

 王族の中で唯一の常識人であるミリアリア王女に言われ、オスカーは城の治療室へと急いだ。


 オスカーの服にはかなりの血が付いている。すべて今、治療中のはずのあの子のものだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~

白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。 国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。 幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。 いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。 これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。 二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。 リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。 叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。 皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

処理中です...