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会いたくてたまらなかった
しおりを挟む「あの時、シャーロットが本当の名前を言ってくれて助かったよ」
… そうだ、別れ際急いで名前を聞かれて、咄嗟にディーバンの名も言ってしまっていた……
「僕はね、父に教えられたんだ。『花』と巡り逢っていると……」
「本当に……私が……?」
「そうだよ間違いない、シャーロット… 僕の瞳を見つめてみて……」
そう言われて彼の瞳を見つめると、青かった瞳が金色へと変わっていく。
「金色に……」
「竜獣人は『花』と呼ぶその人と見つめ合うと、瞳が金色に変わるんだって……」
彼の金色の瞳は蕩けるように揺めき、私を見つめる。
「僕はシャーロットに初めて会った時から惹かれていた」
「私……」
「獣人のように、直ぐには分からないかも知れないけれど、僕達は互いに惹かれ合う存在なんだよ」
エスター様は私の手を取り口付けをする。そこからまた熱を持ったかのように体が熱くなっていく。
「ずっと会いたくてたまらなかった……」
「エスター様…… 」
彼の手が私の頬に添えられて、指先で耳朶を優しく撫でられる。
だんだんとエスター様の顔が私に近づいてくる。私達は吐息がかかるほど近付き……
その時、パッと目の前に手が差し出された。
手の主はレオン様だ。
「だからっ! 二人ともちょっと待ってくれ! まだ話は途中だろう⁈ 全く二人して何を見せつけるんだ……若い子が睦む所なんて見てるこっちが恥ずかしいんだよ」
竜獣人は直ぐ二人の世界に入り込むから……と暫くブツブツと言うと、気を取り直したレオン様はソフィアに向き直る。
「君は『ディーバン男爵の娘』で間違いないよな?」
優しげに微笑みながら話すレオン様に、ソフィアは頬を染めて頷いた。
「は、はい。私はソフィア・ディーバンですわ」
「ソフィア、私は君を嫁に貰うよ。まあ、既に君は私の色を身に纏っているし、了承していると受け取って構わないよな? 私には家に二人の妻がいるが、大丈夫だよ。皆同じように大切に愛するからね」
「えっ、嫁? 妻? 二人?」
どういう事?と叔父に尋ねているソフィアを、レオン様は強引に両腕に抱き抱える。
驚き見るソフィアに、レオン様は妖艶な笑みを浮かべると彼女の唇に喰むような長く深い口付けを落とした。
「んうあっ…… んーっ………………………」
チュパンと唇を離したレオン様はペロリと舌舐めずりをする。突然の激しいキスに呼吸もままならず気を失ってしまったソフィアは、力なくその腕に身を委ねていた。
「おや、ソフィアには刺激が強すぎたのかな?困ったね……コレでは僕の相手がつとまるかなぁ……まあいい、じっくりと慣らしてあげるからね」
レオン様は大切そうにソフィアの髪を撫でるとそっと横抱きにする。
「それでは、約束通りディーバン男爵の娘を嫁に貰う」
そう言うと、レオン様は微笑んで招待状を投げ渡した。
叔父へと投げ渡された結婚披露パーティーの招待状には書いてあったはずの私の名前は消されており、ただ、ディーバン男爵令嬢とだけ記されていた。
呆気に取らる叔父と叔母、カルロに挨拶をすると、エスター様に「お先に」と軽くウインクをして、レオン様は馬車に乗って行ってしまった。
( ……さっき私達に恥ずかしいって言ったのは何だったの⁈ キッ……キス、それも人前であんなすごいのっ……)
目の前で大切な愛娘の濃厚なキスを見せつけられ連れて行かれた叔父は、愕然とその場で膝を折った。
「そ、そんな ……ソフィア」
その横でふらつき倒れそうになる叔母をカルロが支えている。
その様子を見ていたエスター様は、言いにくそうに叔父に声を掛けた。
「僕もシャーロットを連れて行きたいのですが…… ああ、申し訳ないキチンと挨拶をしていなかった」
彼は叔父達の前に立ちお辞儀をした。
その立ち居振る舞いの美しさとエスター様の美貌に叔父達はそのまま固まった様になり見惚れている。
「ヴィクトール・レイナルド公爵の息子、エスター・レイナルドと申します。シャーロット・ディーバン令嬢と婚姻を結ばせて頂きたく伺いました」
「へっ? レ、レイナルド公爵⁈ 」
レイナルド公爵と聞き、叔父達はポカンと口を開けて驚いている。
「そ、そうだ……竜獣人はレイナルド公爵とガイア公爵だけなのだわ……はっ……」
さっき、印を付けられことを怒った叔母は慌ててエスター様に頭を下げた。
「先程は申し訳ございません、何卒お許しを!」
エスター様はそんな事は構わないと優しく言って、それよりも婚姻の返事を聞きたいと話した。
「も、もちろんめでたい事なので是非と申し上げたいのですが、何故私共はしがない男爵なのです。シャーロットを嫁に出す支度金すらありませんので……」
叔父は遠回しに結婚したければ金を寄越せと言っている様だ。
それを分かっているのか、エスター様は頷き告げた。
「大切なお嬢さんを頂くのです。支度金など必要有りません。それより、こちらは少々困っておいでだとお伺いしております。差し出がましいようですが、公爵家の方から多少の援助もさせていただこうかと考えているのですが」
「なっならば是非! 是非ともシャーロットを貰ってやってください」
叔父達は援助と聞いてお金が手に入ると思ったのだろう、顔の綻びが止まらなかった。
「ディーバン男爵殿、出来れば今日、このままシャーロット嬢を連れて行くことをお許し願えませんでしょうか?」
美しい少年の意志の強い青い目で見つめられ、叔父達は大きく何度も頷く。
「ぜっぜひお連れください!……その……シャーロット……今まで済まなかった」
言葉では私に謝りながらその視線はエスター様に向いていた。
私達はちゃんと謝っていますよと言わんばかりだ。
叔父達はお金と権力に弱いのね……と改めて思った。
エスター様はスッと騎士の礼をとる。
「それでは、失礼します」
これまでに見ない程の満面の笑みを浮かべた叔父達に見送られ、私は男爵邸の玄関をエスター様に手を引かれ出て行く。
玄関の扉を閉めると、彼はボソリと呟いた。
「今日のところはああ言っておくけど……」
「……え?」
エスター様は何でもないよ、と含みのある笑顔をみせる。
( うわぁ…… そんな笑顔もカッコいい……)
彼はこれから一緒に公爵邸に行こう、と言ったが、馬車は見当たらない。
「あ……此処へはレオンの馬車で来たんだ」
レオン、先にに帰ったな……、どうしようか、僕が抱いて行こうかな……と、エスター様が言っているそばから、二台の馬車が近づいて来た。
その馬車を見るエスター様の顔が途端に険しくなる。
「シャーロット、僕の後ろにいて……離れないで」
そう言いながら、私を庇う様に前に立つエスター様の声には緊張の色が見えた。
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