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印をつけたのは
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部屋へと戻った私は暫くの間、壁に掛けたドレスを眺めていた。
青と銀の糸で施された美しい刺繍。それを見ていると、何故だろう……エスター様を思い出す。
物干場で会って以降、私の心の中にはずっと彼がいた。彼に…… 会いたいと思う自分が居る。
たった一度( 助けて貰った時も入れたら二度かしら?) 会ったあの時に、もしかして私は……恋をしてしまったのだろうか……。
……いや、 多分そう……私はあの美しい人を、好きになってしまっている。
けれど……好き…… だとしても、どうにもならない。
彼は王族と並ぶ権威ある公爵家の御令息。
私なんてエスター様のことを思うことすら烏滸がましい。
それに、明日にはドルモア伯爵様が迎えに来られるのだ。
私は……結婚しなければならないのだから……
ーーーーーー*
翌日、ディーバン男爵家の玄関先に二頭立ての豪華な馬車が止まった。
私は昨日届いたばかりのドレスを着て、エントランスに並ぶソフィアの横に立たされた。ソフィアもまた、届いたばかりの黄金色のドレスを身に纏っている。
豪華な馬車から、黄金の髪に切長の赤い瞳の大柄で立派な体格の青年が降りて来た。
「ようこそいらっしゃいました」
叔父が満面の笑みを浮かべ、伯爵に挨拶を述べる。
「やぁ、ディーバン男爵殿、予定より少し遅れてしまったかな?」
低く響き渡る様な声で柔かに話をするその人が、私がお嫁に行くドルモア伯爵の様だ。
「いえ、全く問題ありません、本来ならこちらから出向かなくてはならないものを……」
叔父は申し訳なさそうなフリをして頭を下げている。
「ははっ、気にする事はない。私の嫁となるのだから迎えに来るのは当然だろう」
ドルモア伯爵は気さくに叔父の肩を叩くと私達の前に立った。
「私がレオン・ドルモアだ。……嫁となる娘はどちらかな?」
レオン様はソフィアと私に視線を移す。
叔母が私を手で指し示して
「この子がシャーロットでございます」と伝えた。
私はドレスの両端を持ち挨拶をする。
「シャーロット・ディーバンでございます」
ふむ、とレオン様は私の前に立ち、屈んで顔を覗き込んだ。
赤い目で探る様に見つめると、今度はクンクンと匂いを嗅ぐ。
「……あの……何か」
(…… 私、もしかして臭うのかしら⁉︎ )
すると、赤い瞳がふっと細められ、レオン様は首を横に振った。
「竜獣人の印付きはとてもじゃないが、嫁にもらう勇気はないよ」
( …… えっ? )
「どっ、どういう事ですか⁈ 」
叔父は慌てたようにレオン様に聞いている。
「私はね……あなた方は知っているだろうが、獅子獣人だ。だから分かる……シャーロット嬢には竜獣人の印が着いている。いや、困ったね! 結婚は無かったことにするかなぁ……私としてはお金を返して貰えば問題はないけれど……」
そう言って微笑むレオン様に、叔父は冷や汗をかき苦笑いをしている。
( あの顔は……お金はもう使ってしまったのだろう )
それを聞いていた叔母が、カッとなり私を怒鳴りつけた。
「お前! どこの竜獣人に印を付けられたのよっ‼︎ 城で何をしていたんだっ!」
「そんな……私、印なんて知りません」
「口答えするんじゃない! 体に傷まで付けておいてーーこの役立たずめっ‼︎ 」
叔母はこちらの話など聞こうともせず、感情に任せ私の顔を目掛けて手を振り上げる。
叩かれる、そう思い目をギュッと閉じた。
ーーが、
「僕です、印を付けたのは」
その声にハッと目を開けると、そこには会いたかったエスター様が私を庇うように立っていた。
叔母は振り上げた手はそのままに、突然現れた彼に驚いて固まっていた。叔父達も同じく唖然としている。レオン様だけが穏やかな顔で笑みを浮かべていた。
「……エスター様?」
「うん、そうだよ、シャーロット」
彼は私の手を持つと指先に軽く口付ける。
エスター様と私は言葉を交わすでもなく、ただ見つめ合っていた。
鼓動が高まり、体が熱くなっていく感覚がする。
…… あの時と同じ……
どうしてか、エスター様の瞳に見つめられると、何も考えられなくなる。
…… ううん、違う……この人の事しか考えられなくなるのだ
「シャーロット……」
彼が甘やかな声で私の名前を呼ぶ……
見つめ合う彼の瞳が段々と……
「ーーんんっ!エスター、ちょっといいかな」
レオン様はもう見ていられないと言わんばかりに声を掛けてきた。
その声に二人共にハッとして
…… そうだった、周りには人が居たんだ……
「そういうのは後で好きなだけやってくれ、今はそこで呆然とする彼等に、説明をしなければならないだろう? 私も早く嫁を連れて帰りたい」
( …… 嫁? 私……)
「ああ、そうでした。僕から説明します」
エスター様はまず、私が魔獣に襲われてしまったことを自分の不注意のせいだと叔父達に謝罪した。
そして、竜獣人には『花』と呼ぶ魂が惹かれあい、生涯ただ一人の愛する相手がいる。その『花』が私だったという事。( …………!)
『印』は知らぬ間に付けてしまったと、もっと早く来る筈だったが、訳あって遅くなってしまった。
レオン・ドルモア伯爵とは幼い頃からの知り合いで、今日は頼んで一緒に来たのだと話た。
青と銀の糸で施された美しい刺繍。それを見ていると、何故だろう……エスター様を思い出す。
物干場で会って以降、私の心の中にはずっと彼がいた。彼に…… 会いたいと思う自分が居る。
たった一度( 助けて貰った時も入れたら二度かしら?) 会ったあの時に、もしかして私は……恋をしてしまったのだろうか……。
……いや、 多分そう……私はあの美しい人を、好きになってしまっている。
けれど……好き…… だとしても、どうにもならない。
彼は王族と並ぶ権威ある公爵家の御令息。
私なんてエスター様のことを思うことすら烏滸がましい。
それに、明日にはドルモア伯爵様が迎えに来られるのだ。
私は……結婚しなければならないのだから……
ーーーーーー*
翌日、ディーバン男爵家の玄関先に二頭立ての豪華な馬車が止まった。
私は昨日届いたばかりのドレスを着て、エントランスに並ぶソフィアの横に立たされた。ソフィアもまた、届いたばかりの黄金色のドレスを身に纏っている。
豪華な馬車から、黄金の髪に切長の赤い瞳の大柄で立派な体格の青年が降りて来た。
「ようこそいらっしゃいました」
叔父が満面の笑みを浮かべ、伯爵に挨拶を述べる。
「やぁ、ディーバン男爵殿、予定より少し遅れてしまったかな?」
低く響き渡る様な声で柔かに話をするその人が、私がお嫁に行くドルモア伯爵の様だ。
「いえ、全く問題ありません、本来ならこちらから出向かなくてはならないものを……」
叔父は申し訳なさそうなフリをして頭を下げている。
「ははっ、気にする事はない。私の嫁となるのだから迎えに来るのは当然だろう」
ドルモア伯爵は気さくに叔父の肩を叩くと私達の前に立った。
「私がレオン・ドルモアだ。……嫁となる娘はどちらかな?」
レオン様はソフィアと私に視線を移す。
叔母が私を手で指し示して
「この子がシャーロットでございます」と伝えた。
私はドレスの両端を持ち挨拶をする。
「シャーロット・ディーバンでございます」
ふむ、とレオン様は私の前に立ち、屈んで顔を覗き込んだ。
赤い目で探る様に見つめると、今度はクンクンと匂いを嗅ぐ。
「……あの……何か」
(…… 私、もしかして臭うのかしら⁉︎ )
すると、赤い瞳がふっと細められ、レオン様は首を横に振った。
「竜獣人の印付きはとてもじゃないが、嫁にもらう勇気はないよ」
( …… えっ? )
「どっ、どういう事ですか⁈ 」
叔父は慌てたようにレオン様に聞いている。
「私はね……あなた方は知っているだろうが、獅子獣人だ。だから分かる……シャーロット嬢には竜獣人の印が着いている。いや、困ったね! 結婚は無かったことにするかなぁ……私としてはお金を返して貰えば問題はないけれど……」
そう言って微笑むレオン様に、叔父は冷や汗をかき苦笑いをしている。
( あの顔は……お金はもう使ってしまったのだろう )
それを聞いていた叔母が、カッとなり私を怒鳴りつけた。
「お前! どこの竜獣人に印を付けられたのよっ‼︎ 城で何をしていたんだっ!」
「そんな……私、印なんて知りません」
「口答えするんじゃない! 体に傷まで付けておいてーーこの役立たずめっ‼︎ 」
叔母はこちらの話など聞こうともせず、感情に任せ私の顔を目掛けて手を振り上げる。
叩かれる、そう思い目をギュッと閉じた。
ーーが、
「僕です、印を付けたのは」
その声にハッと目を開けると、そこには会いたかったエスター様が私を庇うように立っていた。
叔母は振り上げた手はそのままに、突然現れた彼に驚いて固まっていた。叔父達も同じく唖然としている。レオン様だけが穏やかな顔で笑みを浮かべていた。
「……エスター様?」
「うん、そうだよ、シャーロット」
彼は私の手を持つと指先に軽く口付ける。
エスター様と私は言葉を交わすでもなく、ただ見つめ合っていた。
鼓動が高まり、体が熱くなっていく感覚がする。
…… あの時と同じ……
どうしてか、エスター様の瞳に見つめられると、何も考えられなくなる。
…… ううん、違う……この人の事しか考えられなくなるのだ
「シャーロット……」
彼が甘やかな声で私の名前を呼ぶ……
見つめ合う彼の瞳が段々と……
「ーーんんっ!エスター、ちょっといいかな」
レオン様はもう見ていられないと言わんばかりに声を掛けてきた。
その声に二人共にハッとして
…… そうだった、周りには人が居たんだ……
「そういうのは後で好きなだけやってくれ、今はそこで呆然とする彼等に、説明をしなければならないだろう? 私も早く嫁を連れて帰りたい」
( …… 嫁? 私……)
「ああ、そうでした。僕から説明します」
エスター様はまず、私が魔獣に襲われてしまったことを自分の不注意のせいだと叔父達に謝罪した。
そして、竜獣人には『花』と呼ぶ魂が惹かれあい、生涯ただ一人の愛する相手がいる。その『花』が私だったという事。( …………!)
『印』は知らぬ間に付けてしまったと、もっと早く来る筈だったが、訳あって遅くなってしまった。
レオン・ドルモア伯爵とは幼い頃からの知り合いで、今日は頼んで一緒に来たのだと話た。
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