11 / 68
会いたくてたまらなかった
しおりを挟む「あの時、シャーロットが本当の名前を言ってくれて助かったよ」
… そうだ、別れ際急いで名前を聞かれて、咄嗟にディーバンの名も言ってしまっていた……
「僕はね、父に教えられたんだ。『花』と巡り逢っていると……」
「本当に……私が……?」
「そうだよ間違いない、シャーロット… 僕の瞳を見つめてみて……」
そう言われて彼の瞳を見つめると、青かった瞳が金色へと変わっていく。
「金色に……」
「竜獣人は『花』と呼ぶその人と見つめ合うと、瞳が金色に変わるんだって……」
彼の金色の瞳は蕩けるように揺めき、私を見つめる。
「僕はシャーロットに初めて会った時から惹かれていた」
「私……」
「獣人のように、直ぐには分からないかも知れないけれど、僕達は互いに惹かれ合う存在なんだよ」
エスター様は私の手を取り口付けをする。そこからまた熱を持ったかのように体が熱くなっていく。
「ずっと会いたくてたまらなかった……」
「エスター様…… 」
彼の手が私の頬に添えられて、指先で耳朶を優しく撫でられる。
だんだんとエスター様の顔が私に近づいてくる。私達は吐息がかかるほど近付き……
その時、パッと目の前に手が差し出された。
手の主はレオン様だ。
「だからっ! 二人ともちょっと待ってくれ! まだ話は途中だろう⁈ 全く二人して何を見せつけるんだ……若い子が睦む所なんて見てるこっちが恥ずかしいんだよ」
竜獣人は直ぐ二人の世界に入り込むから……と暫くブツブツと言うと、気を取り直したレオン様はソフィアに向き直る。
「君は『ディーバン男爵の娘』で間違いないよな?」
優しげに微笑みながら話すレオン様に、ソフィアは頬を染めて頷いた。
「は、はい。私はソフィア・ディーバンですわ」
「ソフィア、私は君を嫁に貰うよ。まあ、既に君は私の色を身に纏っているし、了承していると受け取って構わないよな? 私には家に二人の妻がいるが、大丈夫だよ。皆同じように大切に愛するからね」
「えっ、嫁? 妻? 二人?」
どういう事?と叔父に尋ねているソフィアを、レオン様は強引に両腕に抱き抱える。
驚き見るソフィアに、レオン様は妖艶な笑みを浮かべると彼女の唇に喰むような長く深い口付けを落とした。
「んうあっ…… んーっ………………………」
チュパンと唇を離したレオン様はペロリと舌舐めずりをする。突然の激しいキスに呼吸もままならず気を失ってしまったソフィアは、力なくその腕に身を委ねていた。
「おや、ソフィアには刺激が強すぎたのかな?困ったね……コレでは僕の相手がつとまるかなぁ……まあいい、じっくりと慣らしてあげるからね」
レオン様は大切そうにソフィアの髪を撫でるとそっと横抱きにする。
「それでは、約束通りディーバン男爵の娘を嫁に貰う」
そう言うと、レオン様は微笑んで招待状を投げ渡した。
叔父へと投げ渡された結婚披露パーティーの招待状には書いてあったはずの私の名前は消されており、ただ、ディーバン男爵令嬢とだけ記されていた。
呆気に取らる叔父と叔母、カルロに挨拶をすると、エスター様に「お先に」と軽くウインクをして、レオン様は馬車に乗って行ってしまった。
( ……さっき私達に恥ずかしいって言ったのは何だったの⁈ キッ……キス、それも人前であんなすごいのっ……)
目の前で大切な愛娘の濃厚なキスを見せつけられ連れて行かれた叔父は、愕然とその場で膝を折った。
「そ、そんな ……ソフィア」
その横でふらつき倒れそうになる叔母をカルロが支えている。
その様子を見ていたエスター様は、言いにくそうに叔父に声を掛けた。
「僕もシャーロットを連れて行きたいのですが…… ああ、申し訳ないキチンと挨拶をしていなかった」
彼は叔父達の前に立ちお辞儀をした。
その立ち居振る舞いの美しさとエスター様の美貌に叔父達はそのまま固まった様になり見惚れている。
「ヴィクトール・レイナルド公爵の息子、エスター・レイナルドと申します。シャーロット・ディーバン令嬢と婚姻を結ばせて頂きたく伺いました」
「へっ? レ、レイナルド公爵⁈ 」
レイナルド公爵と聞き、叔父達はポカンと口を開けて驚いている。
「そ、そうだ……竜獣人はレイナルド公爵とガイア公爵だけなのだわ……はっ……」
さっき、印を付けられことを怒った叔母は慌ててエスター様に頭を下げた。
「先程は申し訳ございません、何卒お許しを!」
エスター様はそんな事は構わないと優しく言って、それよりも婚姻の返事を聞きたいと話した。
「も、もちろんめでたい事なので是非と申し上げたいのですが、何故私共はしがない男爵なのです。シャーロットを嫁に出す支度金すらありませんので……」
叔父は遠回しに結婚したければ金を寄越せと言っている様だ。
それを分かっているのか、エスター様は頷き告げた。
「大切なお嬢さんを頂くのです。支度金など必要有りません。それより、こちらは少々困っておいでだとお伺いしております。差し出がましいようですが、公爵家の方から多少の援助もさせていただこうかと考えているのですが」
「なっならば是非! 是非ともシャーロットを貰ってやってください」
叔父達は援助と聞いてお金が手に入ると思ったのだろう、顔の綻びが止まらなかった。
「ディーバン男爵殿、出来れば今日、このままシャーロット嬢を連れて行くことをお許し願えませんでしょうか?」
美しい少年の意志の強い青い目で見つめられ、叔父達は大きく何度も頷く。
「ぜっぜひお連れください!……その……シャーロット……今まで済まなかった」
言葉では私に謝りながらその視線はエスター様に向いていた。
私達はちゃんと謝っていますよと言わんばかりだ。
叔父達はお金と権力に弱いのね……と改めて思った。
エスター様はスッと騎士の礼をとる。
「それでは、失礼します」
これまでに見ない程の満面の笑みを浮かべた叔父達に見送られ、私は男爵邸の玄関をエスター様に手を引かれ出て行く。
玄関の扉を閉めると、彼はボソリと呟いた。
「今日のところはああ言っておくけど……」
「……え?」
エスター様は何でもないよ、と含みのある笑顔をみせる。
( うわぁ…… そんな笑顔もカッコいい……)
彼はこれから一緒に公爵邸に行こう、と言ったが、馬車は見当たらない。
「あ……此処へはレオンの馬車で来たんだ」
レオン、先にに帰ったな……、どうしようか、僕が抱いて行こうかな……と、エスター様が言っているそばから、二台の馬車が近づいて来た。
その馬車を見るエスター様の顔が途端に険しくなる。
「シャーロット、僕の後ろにいて……離れないで」
そう言いながら、私を庇う様に前に立つエスター様の声には緊張の色が見えた。
111
あなたにおすすめの小説
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました!
※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)
狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。
突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。
だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。
そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。
共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?
自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。
二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる