αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの

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義兄貴の後悔

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「何から話そうか……」
そう義兄貴が声をかけてくれたが俺は布団の中に潜ったままだった。雅人さんに言われたのにどうやって出ようか?何から話そうか……そう考えていたら

「海里、そのままでいいから聞いて欲しい。海里の顔見ちゃったら本当のこと話せなくなりそうだから」と……そんなことを言われて余計に出るに出れなくなってしまった。

義兄貴はしばらく黙っていたが口を開いた。そしてあの日、俺を抱いたことを謝られた。でもそれは理由があったらしい。義兄貴は昔からモテていたせいかオメガから言い寄られることがあった。だから念のためヒートトラップに巻き込まれないようにアルファ用の抑制剤を飲むようにとお義父さんから言われ飲んでたからオメガのヒートに遭遇しても逃げることができる。でもあの日、俺がヒートみたいな症状になったときにも逃げようと思えば逃げられた。ベータのお手伝いさんにお願いすることもできた。でも義兄貴はそれをしなかった。それは……俺が好きな気持ちを抑えることができなくなってたから抱いたんだと。俺が起きたらちゃんと俺に好きだと伝えて、これからのことについて話そうと思っていたのに、義兄貴が起きるそれよりも早くに俺は起きてしまってそして……義兄貴が起きたときには俺はもう家を出てったあとだった。

義兄貴は俺をちゃんと好きだから抱いてくれてたんだ。俺のヒートに当てられてたとばかり思っていたけど……俺もあの日、義兄貴に抱かれたことは覚えている。何度も忘れようとしたけど忘れることができなかった。この仕事をしてるから何人もの人に抱かれた。だけどどんなに抱かれてもあの時のような幸福感は得られず、むしろ虚しさだけが毎回残った。俺は愛されてたんだ。少しだけあの時の絡まった糸が解けていくような気持ちになった。



帰ってきた親父と義母さんから怒られたよ。どうして俺が出ていくのも気づかずに熟睡してたんだって。俺はやっと海里と繋がれた幸せな気分だったんだ。俺はね初めて会った日から海里が好きだったよ。海里がアルファで俺の義弟だけど……でも海里が中学3年生になったくらいからかな?海里からは優しい花の匂いがするようになった。もしかしたらこれから先、俺が側にいれば海里はオメガになるんじゃないかって。そんな人、滅多にいないんだけど期待をして思わず親父と義母さんに海里が好きだと言ってしまったんだ。そしたら義母さんからは多分海里はオメガになるって聞いてたんだよ。   
小さい頃にバース性の検査しただろ?アルファと診断されたけど要再検査って書いてあったらしい。それで病院に行って色んな検査を受けたらしいんだ。そして検査の結果、先生に言われてたみたいだ。アルファにしては数値が低いってしかもベータとも違う数値が出てるからもしかしたらこの子は将来オメガになる可能性があるって。でもそれはいつになるかはわからないし、もしかしたらオメガにならないかもしれないと……ごめんな。そんな大事なこと内緒にしてて……

義兄貴の話しで俺は溢れそうだった涙も引っ込んだくらいの衝撃を受けた。だから母さんから体調の変化があったら教えてと言われていたのか……どうしてそれを教えてくれなかったんだろう?

それともう1つ黙っていたことがあるんだ。

親父と義母は籍を入れてない。入れてるように偽造してるんだ。海里のお父さんから付けられた刻印が消えるまでは結婚しないでおこうって2人で決めたらしい。親父ももしかしたら海里のお父さんが怒ってるんじゃないかって言ってたよ。病院で検査をしたけど原因不明みたいでさ。あの頃はもしかしたら俺がオメガになった海里と番になってもいいって言われてる気がしたんだ。なのに俺は海里を捕まえることができなくて逃げられてしまったな。情け無いよ。

みんなで海里のことずっと探してたよ。それでも見つからなかった。もしかしたら違う誰かと番になってたらどうしようって……毎日不安になりながらいたときに、遠藤さんって人から電話があった。海里を一時期保護していたって。でも俺たちが探してるって伝えたらいなくなってしまったって何度も何度も謝られたよ。また俺たちは振り出しに戻った。義母さんは毎日泣いてたよ。どんな姿でもいいから生きてて欲しいって。

でも海里を見つけられたのは偶然だったんだ。今、警察官として働いてるんだよ。本当は親父の会社を継ごうとして大学に行ってたんだけど、海里とのことがあったから警察官になったんだ。もしかしたら海里を探せるんじゃないかって。でもそんなに甘くはなかったよ。犯罪や事故が毎日あるなかで海里を探すなんて……それに……この世の中はやっぱりオメガに優しくなくてね。アルファが失踪したらどんな手段でも探すのにオメガは別に……って感じだったよ。でも俺は探してた。仕事の休みの日にはビラ配ったりしてさ。でも自力では見つけられなかった。でもようやく見つけた俺には海里しかいないから。

布団の上から抱きしめてくれる義兄貴の手がなんだか震えてる気がして俺は義兄貴の顔が見たくなって被っていた布団の中から顔を出した。

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