αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの

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見つけられたわけ

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俺と目が合った義兄貴は少し震える手で優しく頭を撫でてくれた。俺は義兄貴の手から久しぶりに人の体温を感じられたような気がした。あんなに毎日のように色んな人と触れ合って抱き合ったのに、人の体温が暖かいって感じなかった。俺はお客様をお客様と思わずに人造人間アンドロイドだと思うようにしていた。仕事だからと割り切って……そうじゃないと心が……壊れそうだったから。

義兄貴は俺を撫でながら話しを続けた。


俺の職場の先輩は雅人さんと同期だったんだ。先輩は移動になってここに来たけど、その前は雅人さんと同じ勤務地で同期で仲良かったらしいよ。雅人さんが妹さんのことがあって職場を辞めたあとも2人は会ってたらしい。雅人さんがお店を始めたころは免許証を偽造してベータなのにアルファと偽ったり会社や年収を誤魔化そうとしたりする人がいるからって先輩が調査をずっとしてたんだけど、先輩はこの前、番ができて彼が今、妊娠中で大変だから雅人さんのお店の調査を俺にお願いしたいって言われたんだ。先輩は番をめちゃくちゃ溺愛しててさ。大事だから離れたくないって。俺は海里を探したいけど先輩にはお世話になってるから断れなくて……雅人さんに会って今までの引き継ぎをしたんだ。店のサイトを見せてもらってたら、1人だけ顔はよく見えないけど人気だっていうオメガの子が出てきたんだよ。でもパーツとか海里に似てると思った。まさかと思ったけど決めてになったのは左太ももの内側にあるホクロだった。あの日、海里を抱いたときに見つけたんだ。俺にも同じ場所にホクロがあるから嬉しかったのを覚えてるよ。だから俺はその場で雅人さんに海里のことを全て話したよ。それで今日、こうやって会うことができた。雅人さんが言ってたよ。海里は俺や親父が来ないように名前を伝えてたんだってな。でも雅人さんは俺たちがもし海里を見つけたら最初から会わすつもりだったって……いまだに妹さんのこと後悔してるからって。だから今日俺はちゃんと予約したんだ。……そうじゃなきゃ会わせてくれないって言われてさ。そりゃそうだよな海里の大事な時間をもらうんだから。それに海里も仕事って言われたからこのホテルに来てくれたんだよな。

海里、海里の気持ちも教えて。これからどうしたい?家に帰ってくる気はある?それともやっぱり家にはどうしても帰りたくないっていうなら仕方がないけど……さっき雅人さんは戻ってきてもいいみたいなこと言ってたけど俺は海里には仕事を辞めてほしい。俺が海里の生活全てを面倒みるから。やっぱり嫌なんだよ誰だかわからないやつに海里が触れられてたんだって考えるだけで……アルファの独占欲かもしれないけど、俺は……海里を5年分いやそれ以上に愛したいから。海里のことは俺が守るから……どうしても仕事をしたいなら……どこかいいところを探すから。

そう言って必死に俺の心に訴えかけてきた義兄貴に抱きしめられた。さっきよりも力強くて俺は困惑していた。本当にこのまま義兄貴に甘えてもいいのだろうか?確かに俺は義兄貴が好きだけど、でもいくら両親が籍を入ってなくても義兄貴と番にはなれないだろ。だって兄貴はオメガのお母さんを許してないからオメガなんて嫌いだろう。都合よく考えちゃダメだ。義兄貴の好きと俺の好きはきっと種類が違う。義兄貴はきっと義弟だから好きなだけで、お義父さんや母さんの手前、俺がこの仕事をすることが嫌なだけだ。そんなことを考えていたら義兄貴の指が俺の眉間に触れてた。

「海里、そんなに眉間に皺寄せて難しいこと考えてるの?」
どう答えていいのか、本音なんて言えなくて俺はますます皺をよせていたらしく、義兄貴に眉間を指でぐりぐりと伸ばされた。

「なんだか色んなこと考えてるみたいだけど、海里の本音聞かせてよ。どうしたいとか、こうしたいとか……色々思うことあるでしょ?俺のこと罵倒しても殴ってもいいから、海里の気持ちを教えて欲しいんだ。今まで辛かったことでもいいから」
義兄貴は話しながら俺を抱え上げて膝の上に乗せられた。子どもをあやすようにトントンと背中を叩かれると一気に色んな想いが溢れてきた。何から話したらいいのか少し頭の中が混乱してきたと思ったら、義兄貴は時間はたっぷりあるからゆっくりでいいし、話の内容がまとまらなくてもいいんだよ。と宥めるように頭や背中を撫でてくれた。俺は強張っていた身体の力が抜けて義兄貴にもたれかかった。あの頃よりもたくましい身体に身を預けると義兄貴のことが好きって気持ちが溢れてきた。でもそんなことを言ってもいいんだろうか?いや受け止めてくれないだろう。いくら両親が偽装をしていたといっても俺たちは義兄弟として育ってきたんだ。あの過ちも義兄貴は俺が辛そうに見えたのかもしれない。きっとこの先、義兄貴と恋人同士にはなれないんだから……だから好きの代わりに「義兄貴ごめん」という謝罪の言葉を言って誤魔化した。

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