αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの

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あの日のやり直し

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義兄貴に手首を掴まれたままソファーに連れて行かれた。

「海里にはまだ俺の気持ちが伝わってなかったんだな」
そう言った義兄貴の横顔はなんだかとても寂しそうに見えて胸が苦しくなった。

「俺は誰とも結婚してないし約束もしてない。確かにあの夜、酔っ払って海里に言ったことは覚えてる。確かに俺はオメガの母親が大っ嫌いだった。だってそうだろ?自分の欲のためにしたことが結果、親父や義母さんを苦しめた。海里の義父さんだって……そして事故番になった親父からの愛情が自分にはないってわかって……寂しくて辛くて……そして勝手に死んだんだ。まだ小さい俺のことなんて考えもしなくてさ。親父やお手伝いさんがいたけどお母さんがいる家が俺は羨ましかったよ。海里ほど生きづらいと感じたことなかったかもしれないけど幼いときはなんでお母さんがいないんだろうって思ってた。寂しかったんだろうな。お母さんと手を繋いで帰る子を見るのは。まぁ他の見方をすれば、そのことがなければ俺たちは生まれてくることもなかったんだけど、でも俺は自分勝手なオメガはやっぱり嫌いなんだよ。ヒートで誘惑したりして姑息な真似してさ。それならバース性にとらわれないアルファと結婚した方がいいと思ってた。でもそれはあの頃は海里も俺と同じアルファだと思ってたからそう言ったんだ。あえて女性と言ったのは……大体のアルファ同士の結婚の場合、異性同士でするし、まだそういうことがわかってない海里に伝わるようにって別に本気でアルファと結婚しようと思って言ったわけじゃないよ。でもそのせいで海里が辛い思いをしていたんだから謝るよごめん。俺は海里のことが本当に好きだよ。きっと海里が思ってる以上に俺は好きなんだ。あの日、海里を腕に抱いたときこのまま外にも出ないで、ずっと2人きりでいたいって思ってた。海里も同じ気持ちだと思ってたよ。抱き合って何度も愛してるってお互い言い合ったんだ。でもきっと初めてのヒートで朦朧としてたから忘れてることもあると思ったから朝起きたらちゃんと海里の目を見て言おう思ったのに……海里は家を出てってしまった。きっと覚えてないんだろ?そうじゃなきゃ家を出るなんてしなかったよな。俺が寝ていたせいで本当にごめん。この仕事を海里がしてると知った時はショックだったよ。確かにオメガの就職先なんて碌でもないところが多いと聞いていたし、この仕事をしてそれはよくわかってた。でもまさか海里もそのうちの1人だったんだって……それと同時に俺のせいで海里にたくさん辛いをさせてしまったって反省したよ。だからやり直したい。海里とまた一緒に生活をしたいんだ。アルファの独占欲は凄いんだ。誰にも渡したくないくらい海里限定なんだ。だからこれから先、俺でいいと思ってくれたら俺は海里の番になりたい。俺の運命の相手は海里しかいないから」
そう言って俺の手を離さないまま抱きしめられた。義兄貴から好きだと言われた途端、身体中が歓喜で震え本能がどうしようもなくこのアルファが欲しいと願ってるのを感じた。お互いの両親のことがあったから義兄弟として出会ったばかりに俺たちはせっかく結ばれていたのに俺は逃げてしまった。

義兄貴の厚い胸板に頬を寄せるとあの時と同じ焙煎したてのコーヒーのような深い匂いがしてきて俺は深く吸い込んだ。それは俺の身体の奥を刺激した。あれ以来、来ることがないと思っていたヒートが来そうな予感がしてきた。

「海里、あの時と同じような匂いがしてきたね。キャラメルのような甘~い匂い。食べちゃいたいくらい。会ったときは全然しなかったのに俺の匂いを嗅いだらヒートがきちゃった?それはもう運命なんだよ。海里愛してるこれから先もずっと」

俺は義兄貴のキスを拒むことはできなかった……というよりキス、したかった。あの日のやり直しみたいな優しいキスをされながら後頭部を大きな手のひらで支えられて、だんだん深くなるキスに翻弄され目眩がしそうだ。キスは何十回もお客様としたことあるのに義兄貴とのキスは全く違う感じがした。身体中が溶けてしまいそうなほど義兄貴と1つになりたいと……キスで身体の力が抜け落ちた俺をひょいっとお姫様抱っこしてベッドに連れていってくれて2人で横に並んだ。

「やっぱり海里はかわいい。キスだけでそんな蕩けたような顔しちゃって。抑えられなくなるから煽るな」
ん?俺、今どんな顔してるんだ?鏡がないからわからない……俺の少し癖のある髪の毛に指を入れて何度も梳かされた。義兄貴の目の奥がギラギラして俺を求めてくれてるみたいで嬉しくて横になったまま抱きついて義兄貴の耳元に唇を寄せて
「義兄貴が好き」と呟いた。目を合わせてなんてまだ言えなくて……義兄貴はだから煽るなって言いながら俺に覆い被さってきた。顔中にキスをされて身体が密着するとお互いズボンが押し上げられ窮屈になっていた。それでも義兄貴は優しく俺を抱いてくれた。何度も愛してると言いながら……俺を優先にして抱いてくれるのは義兄貴しかいない。俺はお客様との義務的なセックスではなく幸せな思いの中で義兄貴の匂いに包まれながら俺は何度も何度も果てた。意識が遠くなるまで……



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