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人との繋がり
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次の日は思っていたよりすっきりして起きられた。涼ちゃんからも俺のフェロモンは落ち着いてるから外に出ても大丈夫だと言ってもらえた。
こんなに長い日数ホテルにいるとは思わなくてチェックアウトでロビーに行くのが不安だったけどエレベータはロビーを通り過ぎてそのまま地下に降りていった。どうしてだか不思議で涼ちゃんの顔を仰ぎ見ると俺がのんびり支度をしている間にチェックアウトをして車の手配をしてくれていたと教えてくれた。流石アルファ様た。やることが早すぎる。涼ちゃんの気遣いのおかげで俺は誰にも会うことなく車に乗り込んだ。
初めて乗る涼ちゃんの運転は滑らかでついうたた寝をしちゃいそうになってた。
部屋について中に入ってもあまり物がないガラガラの部屋の中を見て涼ちゃんは驚いてた。
あの日もリュックに詰めれるだけの服しか持ち出さなかったし、それをずっと着まわしていた。流石にお客様に会うから数着は買ったけど、それでも……他の人と比べると荷物は少ないと思う。なので片付けはすぐに終わってしまった。
ここは寮みたいなものだから家具も家電も置きっぱなしでいいが、次に来る人のために俺は掃除をした。するとインターフォンが鳴って玄関に行くと雅人さんが来てくれた。
「海里よかったな。幸せになるんだぞ」
そう言いながら俺の頭をガシガシと撫でられていると後ろから長い腕が伸びてきて俺はその腕の中に包みこまれた。
「雅人さん、俺の番になるんだから触らないでくださいよ」
少し笑いながら涼ちゃんが声をかけた。
「そんなこと言うなよ。それにしても……これでよかったな。海里がいなくなるのは寂しいが、これからはアルファに守られて幸せにならないとな。今まで頑張ってきたんだから。それとこれは餞別代わりだ」
そう言ってジャケットの内ポケットから厚い封筒を取り出した。促されて中を開けるとお金がたくさん入っていて俺はびっくりして返そうと手を伸ばしたら押さえられてしまった。
「今まで海里が頑張ってくれたから少しだけだけどボーナスみたいなもんだ。これからは自分自身のために使っていいんだからな」
確かに物欲を抑えて生きてきた。本当に必要最低限のものしか買わずに質素な生活をしていたと思う。でもそれはいつかこの仕事ができなくなった時の為に貯めていただけだ。俺はずっと1人で生きていくと思ったから……でも使っていいなら遠藤さんやお義父さん、母さんに何か買っていこうと考えてると
「海里、自分のためだからな。お前のことだからみんなに何か買おうとしてると思うがそれはだめだ。そのお金は俺が出すから」
俺の行動パターンが涼ちゃんにはわかっていたようだ。小さいころもお小遣いを貯めて買うのはみんなのものだった。でもいざ欲しいものといってもすぐに浮かんではこなかった。
それから雅人さんから借りていた防犯ブザーと連絡用のスマホ、それに仕事用のチョーカーと部屋の鍵を返した……けど
「そのチョーカーは海里にやるよ。どーせそこのアルファ様が噛んだりしたんだろ?まぁすぐに番になるだろうからチョーカーもすぐにいらなくなるだろうけどな」
苦笑いしながら言われてしまって涼ちゃんと顔を見合わせて笑った。
いつでも顔見せに来いよと雅人さんに言われた。
「雅人さんに出会えて本当によかったです。今までありがとうございました」
俺が挨拶すると雅人さんは目に薄ら涙を溜めて頷いてくれた。
「これからも2人で仲良くな。お前らはやっぱり縁があったんだな。その繋がりを大事にな」
俺たちは雅人さんと握手をして別れた。また雅人さんに会いに来ると約束して。
「じゃあ海里、遠藤さん所行くか?」
俺はすぐに頷いた。あの日、遠藤さんに会わなければ俺は今頃生きていたかどうかもわからない。だからこそちゃんとお礼を言わなくちゃ。涼ちゃんと一緒に行ったら喜んでくれるかな?と想像しながら……そして遠藤さんへのプレゼントはパティスリーハピネスのフルーツケーキにした。亡くなった旦那さんが記念日には必ず買ってきてくれたケーキだと教えてくれていたから。
涼ちゃんに借りたスマホでお店のHPを覗いた。俺は生クリームとフルーツが乗ったケーキを想像していたが、ここのはドライフルーツとナッツを入れたケーキだった。人気店らしくて特にフルーツケーキは焼くのに時間がかかるので数量限定で販売してるためか売り切れる場合もあるし予約ですでに埋まってしまってる場合もあると書いてあった。もしかしたら今日の分は終了してしまってる可能性もあると思い俺は落胆してしまった。そんな俺の様子を見ていた涼ちゃんはちょっと貸して?とどこかに電話していた。俺は他に遠藤さんが好きだと言っていたものを思い出してると突然、俺の頭に大きな手のひらを乗せて頭を撫でてきた。
「予約できたから取りに行こう」
「予約できたの?」
突然言われて予約できたんだと思って喜んだら、実は今日の分は予約で完売だったけど、涼ちゃんの会社の先輩の実家だと教えてくれた。だから無理を言って明日の分を回してもらえることになったと……ちょうど夕方に取りに来る人だから今から焼けば間に合うからと言ってくれたみたいだ。
きっと遠藤さんの旦那さんも記念日が近づくと早めに予約をして取りに行ってたんだなと思った。それと同時にまさか涼ちゃんの先輩の実家なんてそんな偶然があることに感謝した。人と人との繋がりって不思議だなぁ~と考えながら俺は久しぶりに会える遠藤さんを思った。
こんなに長い日数ホテルにいるとは思わなくてチェックアウトでロビーに行くのが不安だったけどエレベータはロビーを通り過ぎてそのまま地下に降りていった。どうしてだか不思議で涼ちゃんの顔を仰ぎ見ると俺がのんびり支度をしている間にチェックアウトをして車の手配をしてくれていたと教えてくれた。流石アルファ様た。やることが早すぎる。涼ちゃんの気遣いのおかげで俺は誰にも会うことなく車に乗り込んだ。
初めて乗る涼ちゃんの運転は滑らかでついうたた寝をしちゃいそうになってた。
部屋について中に入ってもあまり物がないガラガラの部屋の中を見て涼ちゃんは驚いてた。
あの日もリュックに詰めれるだけの服しか持ち出さなかったし、それをずっと着まわしていた。流石にお客様に会うから数着は買ったけど、それでも……他の人と比べると荷物は少ないと思う。なので片付けはすぐに終わってしまった。
ここは寮みたいなものだから家具も家電も置きっぱなしでいいが、次に来る人のために俺は掃除をした。するとインターフォンが鳴って玄関に行くと雅人さんが来てくれた。
「海里よかったな。幸せになるんだぞ」
そう言いながら俺の頭をガシガシと撫でられていると後ろから長い腕が伸びてきて俺はその腕の中に包みこまれた。
「雅人さん、俺の番になるんだから触らないでくださいよ」
少し笑いながら涼ちゃんが声をかけた。
「そんなこと言うなよ。それにしても……これでよかったな。海里がいなくなるのは寂しいが、これからはアルファに守られて幸せにならないとな。今まで頑張ってきたんだから。それとこれは餞別代わりだ」
そう言ってジャケットの内ポケットから厚い封筒を取り出した。促されて中を開けるとお金がたくさん入っていて俺はびっくりして返そうと手を伸ばしたら押さえられてしまった。
「今まで海里が頑張ってくれたから少しだけだけどボーナスみたいなもんだ。これからは自分自身のために使っていいんだからな」
確かに物欲を抑えて生きてきた。本当に必要最低限のものしか買わずに質素な生活をしていたと思う。でもそれはいつかこの仕事ができなくなった時の為に貯めていただけだ。俺はずっと1人で生きていくと思ったから……でも使っていいなら遠藤さんやお義父さん、母さんに何か買っていこうと考えてると
「海里、自分のためだからな。お前のことだからみんなに何か買おうとしてると思うがそれはだめだ。そのお金は俺が出すから」
俺の行動パターンが涼ちゃんにはわかっていたようだ。小さいころもお小遣いを貯めて買うのはみんなのものだった。でもいざ欲しいものといってもすぐに浮かんではこなかった。
それから雅人さんから借りていた防犯ブザーと連絡用のスマホ、それに仕事用のチョーカーと部屋の鍵を返した……けど
「そのチョーカーは海里にやるよ。どーせそこのアルファ様が噛んだりしたんだろ?まぁすぐに番になるだろうからチョーカーもすぐにいらなくなるだろうけどな」
苦笑いしながら言われてしまって涼ちゃんと顔を見合わせて笑った。
いつでも顔見せに来いよと雅人さんに言われた。
「雅人さんに出会えて本当によかったです。今までありがとうございました」
俺が挨拶すると雅人さんは目に薄ら涙を溜めて頷いてくれた。
「これからも2人で仲良くな。お前らはやっぱり縁があったんだな。その繋がりを大事にな」
俺たちは雅人さんと握手をして別れた。また雅人さんに会いに来ると約束して。
「じゃあ海里、遠藤さん所行くか?」
俺はすぐに頷いた。あの日、遠藤さんに会わなければ俺は今頃生きていたかどうかもわからない。だからこそちゃんとお礼を言わなくちゃ。涼ちゃんと一緒に行ったら喜んでくれるかな?と想像しながら……そして遠藤さんへのプレゼントはパティスリーハピネスのフルーツケーキにした。亡くなった旦那さんが記念日には必ず買ってきてくれたケーキだと教えてくれていたから。
涼ちゃんに借りたスマホでお店のHPを覗いた。俺は生クリームとフルーツが乗ったケーキを想像していたが、ここのはドライフルーツとナッツを入れたケーキだった。人気店らしくて特にフルーツケーキは焼くのに時間がかかるので数量限定で販売してるためか売り切れる場合もあるし予約ですでに埋まってしまってる場合もあると書いてあった。もしかしたら今日の分は終了してしまってる可能性もあると思い俺は落胆してしまった。そんな俺の様子を見ていた涼ちゃんはちょっと貸して?とどこかに電話していた。俺は他に遠藤さんが好きだと言っていたものを思い出してると突然、俺の頭に大きな手のひらを乗せて頭を撫でてきた。
「予約できたから取りに行こう」
「予約できたの?」
突然言われて予約できたんだと思って喜んだら、実は今日の分は予約で完売だったけど、涼ちゃんの会社の先輩の実家だと教えてくれた。だから無理を言って明日の分を回してもらえることになったと……ちょうど夕方に取りに来る人だから今から焼けば間に合うからと言ってくれたみたいだ。
きっと遠藤さんの旦那さんも記念日が近づくと早めに予約をして取りに行ってたんだなと思った。それと同時にまさか涼ちゃんの先輩の実家なんてそんな偶然があることに感謝した。人と人との繋がりって不思議だなぁ~と考えながら俺は久しぶりに会える遠藤さんを思った。
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