αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの

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再会1

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涼ちゃんが予約してくれたお店の前には10人くらいの人が並んでいた。一番最後尾に並ぶとお店の人が「ご予約いただいてますか?」と聞いてくれた。涼ちゃんが名前を言うとすぐに案内してくれた。

「今日は無理を言ってすみません」と謝ると店主の男性はニコニコしながら大丈夫ですよ。と木箱を開けてケーキを見せてくれた。パウンドケーキの上にはドライフルーツが乗っていてHPで見たよりもキラキラしていた。丁寧に包んで紙袋に入れてくれた。お礼を言って遠藤さんの喫茶店に向かった。ちょうどランチタイムが終わる時間帯のせいなのかお店の中を覗くと3人くらいのお客さんがいただけだった。涼ちゃんに背中を押されて俺は空気をいっぱいに吸って深呼吸をしてから店のドアを開けた。

カランコロンとカウベルの音とともに「いらっしゃいませ」と姿は見えないけど遠藤さんの声が聞こえて俺は泣きそうになって俯いてしまった。

店の奥から遠藤さんがエプロンで手を拭きながらこちらにやってくるのを感じた。俺は俯いて少し長い髪で顔が見えなかったせいか「お2人さまですか?こちらにどうぞ」と前と変わらない口調で言ってくれた。

「今お水をお持ちしますね。もしお連れさまの具合が悪いようでしたら横になっていただいても構いませんよ」と優しい口調で言って奥に行ってしまった。お水とメニュー表を手に戻ってきたときに2人のお客さんが帰ったタイミングで遠藤さんは店の外に出て、すぐに戻ってきた。きっとお客さんが来ないようにと営業中の札をひっくり返して準備中の札に変えてくれたんだろう。涼ちゃんは俺の背中を撫でながら俺の顔をメニュー表で隠してくれていた。そのうちにもう1人も帰ってしまった。

「大丈夫ですか?何かお手伝いいしますか?」
お客さんがいなくなって声をかけてくれて涼ちゃんはメニュー表を下げたので俺は顔を上げて遠藤さんの顔を見た。

遠藤さんは驚いてその場に固まってたがすぐに声をかけてくれた。
「久しぶりだね。海里くん……だよね?元気にしてた?本当にごめん。何の力にもなってあげられなくて」
俺は首を振るしかできなかった。すると涼ちゃんが俺の代わりに話をしてくれた。

「義兄の大嶋涼太です。以前お電話で何度もお詫びを伝えてくれたと義母から聞きました。だいぶ時間は経ってしまいましたが、ようやく海里を見つけられました。海里が遠藤さんにお詫びとお礼が言いたいと言ってたので今日は一緒に来ました。これは海里が遠藤さんにと選んだんです。もしよかったら食べてください」
俺が膝の上で抱えていたケーキが入った紙袋を遠藤さんに渡してくれた。遠藤さんは紙袋から取り出して見ただけで涙をこぼしていた。

「海里くん覚えててくれたんだねありがとう。わざわざ買ってきてくれて嬉しいよ。そうだ一緒に食べよう?お昼は食べた?何か作るから食べない?僕もお昼これからだから」
なかなか涙が止まらない俺に遠藤さんはおしぼりを渡してくれた。

「遠藤さん……あの時はありがとうございました。あの時、なにも言わずに逃げてしまってごめんなさい」
遠藤さんは「海里くんが元気にいてくれただけで嬉しいよ」と俺を抱きしめてくれた。こんな俺なのに優しく接してくれた。

遠藤さんは俺たちにミートソースのパスタとサラダを持ってきてくれた。3人で食べながら今までのことを話した。流石に男娼をやっていたとは言いづらかったが涼ちゃんは小さい会社の事務員として仕事をしていたとフォローしてくれて助かった。そしていずれ涼ちゃんと番になることも……遠藤さんは喜んでくれて番になったら教えてねと。その後フルーツケーキをみんなで食べようと言われて一緒に食べた。ラム酒に漬かったドライフルーツがとってもおいしかった。中に入ってるナッツとのバランスがいいアクセントで初めて食べたけどとてもおいしかった。

「またいつでも来てね。待ってるから」
遠藤さんと別れて俺はお義父さんと母さんに会うため数年ぶりに実家に帰ることにした。本当は帰らないつもりだったけど、遠藤さんからもご両親には会いなさいと言われてしまったからだ。両親に会う前に自分のところに来てくれて申し訳ないって何度も謝られた。

「涼ちゃん2人に何か買って行きたいけど何がいいかな?」
俺が言うと涼ちゃんは海里の顔を見せることが一番のプレゼントだ。なんて言ってたけど俺は何か渡したかった。その様子を見ていた涼ちゃんはお義父さんには焼酎、母さんには昔から好きなプリンを買ってくれて家に向かったが家の前に着くと緊張で足が震えてきた。今さら帰ってくるなんてなんて俺は親不孝物なんだ。みんなに迷惑かけて……それなのに遠藤さんは俺に会えて嬉しいって言ってくれた。涼ちゃんが俺が着いてるから大丈夫だ。と言ってくれて俺は震える足を運んで玄関のベルを鳴らした。

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