16 / 19
再会1
しおりを挟む
涼ちゃんが予約してくれたお店の前には10人くらいの人が並んでいた。一番最後尾に並ぶとお店の人が「ご予約いただいてますか?」と聞いてくれた。涼ちゃんが名前を言うとすぐに案内してくれた。
「今日は無理を言ってすみません」と謝ると店主の男性はニコニコしながら大丈夫ですよ。と木箱を開けてケーキを見せてくれた。パウンドケーキの上にはドライフルーツが乗っていてHPで見たよりもキラキラしていた。丁寧に包んで紙袋に入れてくれた。お礼を言って遠藤さんの喫茶店に向かった。ちょうどランチタイムが終わる時間帯のせいなのかお店の中を覗くと3人くらいのお客さんがいただけだった。涼ちゃんに背中を押されて俺は空気をいっぱいに吸って深呼吸をしてから店のドアを開けた。
カランコロンとカウベルの音とともに「いらっしゃいませ」と姿は見えないけど遠藤さんの声が聞こえて俺は泣きそうになって俯いてしまった。
店の奥から遠藤さんがエプロンで手を拭きながらこちらにやってくるのを感じた。俺は俯いて少し長い髪で顔が見えなかったせいか「お2人さまですか?こちらにどうぞ」と前と変わらない口調で言ってくれた。
「今お水をお持ちしますね。もしお連れさまの具合が悪いようでしたら横になっていただいても構いませんよ」と優しい口調で言って奥に行ってしまった。お水とメニュー表を手に戻ってきたときに2人のお客さんが帰ったタイミングで遠藤さんは店の外に出て、すぐに戻ってきた。きっとお客さんが来ないようにと営業中の札をひっくり返して準備中の札に変えてくれたんだろう。涼ちゃんは俺の背中を撫でながら俺の顔をメニュー表で隠してくれていた。そのうちにもう1人も帰ってしまった。
「大丈夫ですか?何かお手伝いいしますか?」
お客さんがいなくなって声をかけてくれて涼ちゃんはメニュー表を下げたので俺は顔を上げて遠藤さんの顔を見た。
遠藤さんは驚いてその場に固まってたがすぐに声をかけてくれた。
「久しぶりだね。海里くん……だよね?元気にしてた?本当にごめん。何の力にもなってあげられなくて」
俺は首を振るしかできなかった。すると涼ちゃんが俺の代わりに話をしてくれた。
「義兄の大嶋涼太です。以前お電話で何度もお詫びを伝えてくれたと義母から聞きました。だいぶ時間は経ってしまいましたが、ようやく海里を見つけられました。海里が遠藤さんにお詫びとお礼が言いたいと言ってたので今日は一緒に来ました。これは海里が遠藤さんにと選んだんです。もしよかったら食べてください」
俺が膝の上で抱えていたケーキが入った紙袋を遠藤さんに渡してくれた。遠藤さんは紙袋から取り出して見ただけで涙をこぼしていた。
「海里くん覚えててくれたんだねありがとう。わざわざ買ってきてくれて嬉しいよ。そうだ一緒に食べよう?お昼は食べた?何か作るから食べない?僕もお昼これからだから」
なかなか涙が止まらない俺に遠藤さんはおしぼりを渡してくれた。
「遠藤さん……あの時はありがとうございました。あの時、なにも言わずに逃げてしまってごめんなさい」
遠藤さんは「海里くんが元気にいてくれただけで嬉しいよ」と俺を抱きしめてくれた。こんな俺なのに優しく接してくれた。
遠藤さんは俺たちにミートソースのパスタとサラダを持ってきてくれた。3人で食べながら今までのことを話した。流石に男娼をやっていたとは言いづらかったが涼ちゃんは小さい会社の事務員として仕事をしていたとフォローしてくれて助かった。そしていずれ涼ちゃんと番になることも……遠藤さんは喜んでくれて番になったら教えてねと。その後フルーツケーキをみんなで食べようと言われて一緒に食べた。ラム酒に漬かったドライフルーツがとってもおいしかった。中に入ってるナッツとのバランスがいいアクセントで初めて食べたけどとてもおいしかった。
「またいつでも来てね。待ってるから」
遠藤さんと別れて俺はお義父さんと母さんに会うため数年ぶりに実家に帰ることにした。本当は帰らないつもりだったけど、遠藤さんからもご両親には会いなさいと言われてしまったからだ。両親に会う前に自分のところに来てくれて申し訳ないって何度も謝られた。
「涼ちゃん2人に何か買って行きたいけど何がいいかな?」
俺が言うと涼ちゃんは海里の顔を見せることが一番のプレゼントだ。なんて言ってたけど俺は何か渡したかった。その様子を見ていた涼ちゃんはお義父さんには焼酎、母さんには昔から好きなプリンを買ってくれて家に向かったが家の前に着くと緊張で足が震えてきた。今さら帰ってくるなんてなんて俺は親不孝物なんだ。みんなに迷惑かけて……それなのに遠藤さんは俺に会えて嬉しいって言ってくれた。涼ちゃんが俺が着いてるから大丈夫だ。と言ってくれて俺は震える足を運んで玄関のベルを鳴らした。
「今日は無理を言ってすみません」と謝ると店主の男性はニコニコしながら大丈夫ですよ。と木箱を開けてケーキを見せてくれた。パウンドケーキの上にはドライフルーツが乗っていてHPで見たよりもキラキラしていた。丁寧に包んで紙袋に入れてくれた。お礼を言って遠藤さんの喫茶店に向かった。ちょうどランチタイムが終わる時間帯のせいなのかお店の中を覗くと3人くらいのお客さんがいただけだった。涼ちゃんに背中を押されて俺は空気をいっぱいに吸って深呼吸をしてから店のドアを開けた。
カランコロンとカウベルの音とともに「いらっしゃいませ」と姿は見えないけど遠藤さんの声が聞こえて俺は泣きそうになって俯いてしまった。
店の奥から遠藤さんがエプロンで手を拭きながらこちらにやってくるのを感じた。俺は俯いて少し長い髪で顔が見えなかったせいか「お2人さまですか?こちらにどうぞ」と前と変わらない口調で言ってくれた。
「今お水をお持ちしますね。もしお連れさまの具合が悪いようでしたら横になっていただいても構いませんよ」と優しい口調で言って奥に行ってしまった。お水とメニュー表を手に戻ってきたときに2人のお客さんが帰ったタイミングで遠藤さんは店の外に出て、すぐに戻ってきた。きっとお客さんが来ないようにと営業中の札をひっくり返して準備中の札に変えてくれたんだろう。涼ちゃんは俺の背中を撫でながら俺の顔をメニュー表で隠してくれていた。そのうちにもう1人も帰ってしまった。
「大丈夫ですか?何かお手伝いいしますか?」
お客さんがいなくなって声をかけてくれて涼ちゃんはメニュー表を下げたので俺は顔を上げて遠藤さんの顔を見た。
遠藤さんは驚いてその場に固まってたがすぐに声をかけてくれた。
「久しぶりだね。海里くん……だよね?元気にしてた?本当にごめん。何の力にもなってあげられなくて」
俺は首を振るしかできなかった。すると涼ちゃんが俺の代わりに話をしてくれた。
「義兄の大嶋涼太です。以前お電話で何度もお詫びを伝えてくれたと義母から聞きました。だいぶ時間は経ってしまいましたが、ようやく海里を見つけられました。海里が遠藤さんにお詫びとお礼が言いたいと言ってたので今日は一緒に来ました。これは海里が遠藤さんにと選んだんです。もしよかったら食べてください」
俺が膝の上で抱えていたケーキが入った紙袋を遠藤さんに渡してくれた。遠藤さんは紙袋から取り出して見ただけで涙をこぼしていた。
「海里くん覚えててくれたんだねありがとう。わざわざ買ってきてくれて嬉しいよ。そうだ一緒に食べよう?お昼は食べた?何か作るから食べない?僕もお昼これからだから」
なかなか涙が止まらない俺に遠藤さんはおしぼりを渡してくれた。
「遠藤さん……あの時はありがとうございました。あの時、なにも言わずに逃げてしまってごめんなさい」
遠藤さんは「海里くんが元気にいてくれただけで嬉しいよ」と俺を抱きしめてくれた。こんな俺なのに優しく接してくれた。
遠藤さんは俺たちにミートソースのパスタとサラダを持ってきてくれた。3人で食べながら今までのことを話した。流石に男娼をやっていたとは言いづらかったが涼ちゃんは小さい会社の事務員として仕事をしていたとフォローしてくれて助かった。そしていずれ涼ちゃんと番になることも……遠藤さんは喜んでくれて番になったら教えてねと。その後フルーツケーキをみんなで食べようと言われて一緒に食べた。ラム酒に漬かったドライフルーツがとってもおいしかった。中に入ってるナッツとのバランスがいいアクセントで初めて食べたけどとてもおいしかった。
「またいつでも来てね。待ってるから」
遠藤さんと別れて俺はお義父さんと母さんに会うため数年ぶりに実家に帰ることにした。本当は帰らないつもりだったけど、遠藤さんからもご両親には会いなさいと言われてしまったからだ。両親に会う前に自分のところに来てくれて申し訳ないって何度も謝られた。
「涼ちゃん2人に何か買って行きたいけど何がいいかな?」
俺が言うと涼ちゃんは海里の顔を見せることが一番のプレゼントだ。なんて言ってたけど俺は何か渡したかった。その様子を見ていた涼ちゃんはお義父さんには焼酎、母さんには昔から好きなプリンを買ってくれて家に向かったが家の前に着くと緊張で足が震えてきた。今さら帰ってくるなんてなんて俺は親不孝物なんだ。みんなに迷惑かけて……それなのに遠藤さんは俺に会えて嬉しいって言ってくれた。涼ちゃんが俺が着いてるから大丈夫だ。と言ってくれて俺は震える足を運んで玄関のベルを鳴らした。
241
あなたにおすすめの小説
その言葉を聞かせて
ユーリ
BL
「好きだよ、都。たとえお前がどんな姿になっても愛してる」
夢の中へ入り化け物退治をする双子の長谷部兄弟は、あるものを探していた。それは弟の都が奪われたものでーー
「どんな状況でもどんな状態でも都だけを愛してる」奪われた弟のとあるものを探す兄×壊れ続ける中で微笑む弟「僕は体の機能を失うことが兄さんへの愛情表現だよ」ーーキミへ向けるたった二文字の言葉。
騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
【完結済】氷の貴公子の前世は平社員〜不器用な恋の行方〜
キノア9g
BL
氷の貴公子と称えられるユリウスには、人に言えない秘めた想いがある――それは幼馴染であり、忠実な近衛騎士ゼノンへの片想い。そしてその誇り高さゆえに、自分からその気持ちを打ち明けることもできない。
そんなある日、落馬をきっかけに前世の記憶を思い出したユリウスは、ゼノンへの気持ちに改めて戸惑い、自分が男に恋していた事実に動揺する。プライドから思いを隠し、ゼノンに嫌われていると思い込むユリウスは、あえて冷たい態度を取ってしまう。一方ゼノンも、急に避けられる理由がわからず戸惑いを募らせていく。
近づきたいのに近づけない。
すれ違いと誤解ばかりが積み重なり、視線だけが行き場を失っていく。
秘めた感情と誇りに縛られたまま、ユリウスはこのもどかしい距離にどんな答えを見つけるのか――。
プロローグ+全8話+エピローグ
君さえ笑ってくれれば最高
大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。
(クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け)
異世界BLです。
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
妹に奪われた婚約者は、外れの王子でした。婚約破棄された僕は真実の愛を見つけます
こたま
BL
侯爵家に産まれたオメガのミシェルは、王子と婚約していた。しかしオメガとわかった妹が、お兄様ずるいわと言って婚約者を奪ってしまう。家族にないがしろにされたことで悲嘆するミシェルであったが、辺境に匿われていたアルファの落胤王子と出会い真実の愛を育む。ハッピーエンドオメガバースです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる