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再会2
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ガチャガチャと派手な音を立てて玄関の扉が大きく開いたかと思ったら涙目の母さんが俺に抱きついてきた。きっとインターフォンのカメラで俺の姿を確認したのだろう。母さんは俺を逃さないように腰の部分を掴んでいたその手は微かに震えていた。
「義母さん……海里は逃げないから、それよりも寒いから家に入らせてよ」
涼ちゃんに言われて我に返った母さんは悪いと俺の手を握って部屋の中に入った。
家の中はあの頃と何も変わってなかった。ソファーの位置もテーブルも本棚も……まるで俺が出ていった日なんてなかったみたいに……母さんは俺の手を握ったまま涼ちゃんにお義父さんの連絡と飲み物を持ってくるように言っていた。
「海里ごめん。今まで大変だったろ?お前の気持ちを分かってあげることができないなんて母親失格だな。父さんが生きていたらこんなことにはならなかったと思う。本当にごめん」
母さんは何も悪くないのに何度も謝られた。一回りくらい小さくなったその背中を撫でてあげた。俺がいなくなったことで母さんにはいらない苦労をかけてしまったんだろう。そんな俺たちに涼ちゃんはコーヒーを持ってきてくれた。
「父さんもすぐに帰ってくるって言ってたよ」
「涼太ありがとう。毅が帰ってきたら4人で話しよう。今話しても毅が帰ってきたら同じ話することになっちゃうからな。それまで我慢するよ。そういえば夕飯は家で食べれるか?」
「あぁそのつもりだよな海里」
涼ちゃんに言われて頷くと海里の好きなから揚げにしようか?材料切らしてるからちょっとだけ買い物行ってくるけど必ず家にいて絶対だよ。と念を押して買い物に出かけてしまった。
「義母さんがテンション高いの久しぶりに見たわ。義母さん口を開けば海里のことばかりでさ。生きてるのか?ご飯は食べてるのか?っていつも言ってたよ。いつかこの家に帰ってきてくれるのかって……よかったな顔見せられて」
そんな話をしていたらお義父さんが帰ってきた。
「海里……無事でよかったよ」
そう言って俺の頭を撫でてくれた。
「今日はのんびりできるか?伊織はどこかにいったのか?」
「義母さんは買い物に行ったよ。海里の好きなから揚げ作るって」
「そうか……じゃあみんなで食べよう。4人でご飯を食べれるなんて嬉しいな。着替えてくるけど海里、疲れた顔してる……少し休んだらどうだ?お前の部屋はそのままにしてるから……晩ご飯ができたら起こしてやる」
涼ちゃんは車に2人にあげようとしていたプレゼントを置いてきたのに気がついて持ってくるから先に部屋に行っててと言われて俺は自分の部屋に入った。あの頃と変わらないまま俺の部屋はあった。きっと母さんは俺が出て行ってしまったのに、いつか帰って来るかもと掃除をしてくれていたのだと思うと胸が痛くなって部屋の真ん中で膝を抱えて泣いてしまった。俺はみんなのことを忘れようとしたけどそんなことはできなかった。遠藤さんにみんなが探してるって言われたけど涼ちゃんのことで逃げ出してしまった手前、どんどん自分を追い詰めて見つからないところへと逃げた。気がついたらいつの間にか、こんなにも年数が経っていたけど……遠藤さんも母さんもお義父さんもそして涼ちゃんも、こんなわがままな俺のために謝ってくれて怒ることはしなかった。俺はわがままだ。逃げるという卑怯で最低なことをしてみんなを苦しめてしまった。でもどうやってみんなにお詫びしたらいいのかわからない。俺は本当に涼ちゃんの番になってもいいのだろうか?と元々ネガティブな考えだからか、どんどん悪いほうに考え込んでいたらドアが開いて涼ちゃんが入ってきた。
「どうしたこんなところで?何かあったか?やっぱりここは辛いか?嫌ならもう帰ろうか?」
何も答えることができなかった。なんて言葉にしていいのか分からずに……ただ流れる涙を堪えることができない俺を涼ちゃんは抱きしめてくれた。
「義母さん……海里は逃げないから、それよりも寒いから家に入らせてよ」
涼ちゃんに言われて我に返った母さんは悪いと俺の手を握って部屋の中に入った。
家の中はあの頃と何も変わってなかった。ソファーの位置もテーブルも本棚も……まるで俺が出ていった日なんてなかったみたいに……母さんは俺の手を握ったまま涼ちゃんにお義父さんの連絡と飲み物を持ってくるように言っていた。
「海里ごめん。今まで大変だったろ?お前の気持ちを分かってあげることができないなんて母親失格だな。父さんが生きていたらこんなことにはならなかったと思う。本当にごめん」
母さんは何も悪くないのに何度も謝られた。一回りくらい小さくなったその背中を撫でてあげた。俺がいなくなったことで母さんにはいらない苦労をかけてしまったんだろう。そんな俺たちに涼ちゃんはコーヒーを持ってきてくれた。
「父さんもすぐに帰ってくるって言ってたよ」
「涼太ありがとう。毅が帰ってきたら4人で話しよう。今話しても毅が帰ってきたら同じ話することになっちゃうからな。それまで我慢するよ。そういえば夕飯は家で食べれるか?」
「あぁそのつもりだよな海里」
涼ちゃんに言われて頷くと海里の好きなから揚げにしようか?材料切らしてるからちょっとだけ買い物行ってくるけど必ず家にいて絶対だよ。と念を押して買い物に出かけてしまった。
「義母さんがテンション高いの久しぶりに見たわ。義母さん口を開けば海里のことばかりでさ。生きてるのか?ご飯は食べてるのか?っていつも言ってたよ。いつかこの家に帰ってきてくれるのかって……よかったな顔見せられて」
そんな話をしていたらお義父さんが帰ってきた。
「海里……無事でよかったよ」
そう言って俺の頭を撫でてくれた。
「今日はのんびりできるか?伊織はどこかにいったのか?」
「義母さんは買い物に行ったよ。海里の好きなから揚げ作るって」
「そうか……じゃあみんなで食べよう。4人でご飯を食べれるなんて嬉しいな。着替えてくるけど海里、疲れた顔してる……少し休んだらどうだ?お前の部屋はそのままにしてるから……晩ご飯ができたら起こしてやる」
涼ちゃんは車に2人にあげようとしていたプレゼントを置いてきたのに気がついて持ってくるから先に部屋に行っててと言われて俺は自分の部屋に入った。あの頃と変わらないまま俺の部屋はあった。きっと母さんは俺が出て行ってしまったのに、いつか帰って来るかもと掃除をしてくれていたのだと思うと胸が痛くなって部屋の真ん中で膝を抱えて泣いてしまった。俺はみんなのことを忘れようとしたけどそんなことはできなかった。遠藤さんにみんなが探してるって言われたけど涼ちゃんのことで逃げ出してしまった手前、どんどん自分を追い詰めて見つからないところへと逃げた。気がついたらいつの間にか、こんなにも年数が経っていたけど……遠藤さんも母さんもお義父さんもそして涼ちゃんも、こんなわがままな俺のために謝ってくれて怒ることはしなかった。俺はわがままだ。逃げるという卑怯で最低なことをしてみんなを苦しめてしまった。でもどうやってみんなにお詫びしたらいいのかわからない。俺は本当に涼ちゃんの番になってもいいのだろうか?と元々ネガティブな考えだからか、どんどん悪いほうに考え込んでいたらドアが開いて涼ちゃんが入ってきた。
「どうしたこんなところで?何かあったか?やっぱりここは辛いか?嫌ならもう帰ろうか?」
何も答えることができなかった。なんて言葉にしていいのか分からずに……ただ流れる涙を堪えることができない俺を涼ちゃんは抱きしめてくれた。
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