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安心できる場所
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俺は次の日には退院できると思ったが夜中に具合が悪くなってしまったせいで、数日間、食生活の改善と治療のため入院することになった。本当は早く帰りたかったけど今のままじゃまた迷惑をかけてしまうから我慢することにした。
お義父さんも涼ちゃんも仕事に行ってしまったせいで面会時間に間に合わなかったのか来なかった。母さんは来てくれると期待してたが、熱が出てしまって来れなくなってしまったと看護師さんが教えてくれた。だから俺は毎日1人ぼっちだった。1日1日時間が過ぎるうちに俺の心はまた暗闇に落ちていくようだった。病室の窓から見下ろすと中庭が見えた。面会に来てる人だろうか?みんなでベンチに座って笑いあっている姿が羨ましくて俺はベットに寝転んだ。
俺はここに帰ってきて本当によかったんだろうか?結局みんなに迷惑かけて……それに涼ちゃんは俺が入院した日は一緒にいてくれたが、あれから3日もたったのに1度も面会に来てくれていない。確かに仕事が忙しいのかもしれない。俺のヒートのせいで休ませてしまったし……だけどなんだか寂しい……あんなに1人でも頑張っていたのに温もりに触れてしまったから……早く退院して会いたいよ。俺は1人で枕を濡らした。
「海里ごめんな。なかなか面会時間に来れなくて」
面会時間まで残り5分のところで涼ちゃんが会いに来てくれた。とっても嬉しいのに素直じゃない俺はそっけない態度をとってしまった。でもそんな俺の態度でも涼ちゃんは変わらずに接してくれた。
面会終了のアナウンスが聞こえてきて涼ちゃんがジャケットを着るのをただ見ていた。
「明日は来れると思うから待っててね」
頭を撫でられて嬉しいはずなのに俺はその手を振り払って布団にもぐった。涙がこぼれてくるけど泣いてるのを見せたくなかった。布団の上から撫でてから、そっと出てってしまった。どうして俺は素直に気持ちを伝えられないのだろう。本当はもっと一緒にいたいとか、ずっと抱きしめてほしいとか言いたいことは山ほどあるのに……1人で我慢する生活を送ってきたからか素直に言葉に出すのが難しかった。
涼ちゃんは俺のために色々と動いてくれてることなんてその時はわからなかった。
それから数日が経って俺は退院することになった。まだ完全には治ってないので飲み薬と通院はしないといけないんだけど。先生からはストレスを溜めないように素直に生活することと、ご飯は3食食べなさいと言われた。自分の気持ちに素直にならないといけないことはわかってるけどそれがなかなか難しい。俺が考え込んでいると先生は素直に自分の気持ちを言葉にするのも治療の1つ訓練なんだよ。と……
俺は迎えに来てくれた涼ちゃんに「ありがとう」と伝えてみた。ぶっきらぼうな言い方しかできなかったけど涼ちゃんは「退院おめでとう」と言ってくれた。
車に乗り今日から涼ちゃん家に行くと思っていたが車は実家の車庫に入っていった。
「海里、今日からまた4人で暮らそう。海里はまだ本調子じゃないだろ?それに父さんも義母さんも心配してるからさ。それと……勝手に決めちゃったけど俺、会社辞めるんだ。元々海里を探す目的のために警察官になったんだけど将来は父さんの会社を継ぐことを約束してたから。だからその引継ぎのために動いてて面会にも行けなくてごめん。寂しかっただろうし、本当は怒ってただろう?海里はずっと我慢してるんだよな。海里、俺は海里のことが1番好きだよ。もしかしたら海里は疑ってるかもしれないけど……それでもいいと今は思ってる。いつか俺の愛をわかってくれて、海里がそれに答えてくれる日が来ると信じてる。体調も万全じゃない今の海里を1人にさせるのはやっぱり心配だから、海里が嫌じゃなければこの家でまた4人で始めるのもいいと考えた。義母さんも家にいるから」
俺がいなくなったせいで大学卒業してすぐお義父さんの会社を継げなかったんだと思うと胸が苦しかった。みんなに迷惑かけて、それでも俺を温かく迎えてくれた。涼ちゃんの温かい腕の中で俺は先生に治療の訓練と言われたことを思い出し今の気持ちを伝えた。
「涼ちゃん、これからもずっと一緒にいてください。1人は寂しいから」思わず涼ちゃんの腕を掴むとその手に涼ちゃんの手が重なった。
「当たり前だ。海里が嫌だと言っても、もう二度と離れないから。アルファの独占欲は凄いんだぞ。番だけが1番大切なんだ。一生、海里だけを好きでいるから安心して俺のそばにいろよ」
そう言って抱きしめてくれた。この腕の中が一番安心する場所だと感じながら俺は身をゆだねた。
◇◆◇◆◇◆
それから数ヶ月後、体調も良くなった頃、俺たちは番になった。お義父さんも母さんも喜んでくれた。素直になれないときもあるけれど、それでも涼ちゃんがいつも一緒にいてくれる。俺が不貞腐れても、すぐに抱きしめてたくさんの愛情をくれる。それだけでやっぱり安心できる自分がいるのに気がつく。
俺はこれからも涼ちゃんと生きていく。
end……
お義父さんも涼ちゃんも仕事に行ってしまったせいで面会時間に間に合わなかったのか来なかった。母さんは来てくれると期待してたが、熱が出てしまって来れなくなってしまったと看護師さんが教えてくれた。だから俺は毎日1人ぼっちだった。1日1日時間が過ぎるうちに俺の心はまた暗闇に落ちていくようだった。病室の窓から見下ろすと中庭が見えた。面会に来てる人だろうか?みんなでベンチに座って笑いあっている姿が羨ましくて俺はベットに寝転んだ。
俺はここに帰ってきて本当によかったんだろうか?結局みんなに迷惑かけて……それに涼ちゃんは俺が入院した日は一緒にいてくれたが、あれから3日もたったのに1度も面会に来てくれていない。確かに仕事が忙しいのかもしれない。俺のヒートのせいで休ませてしまったし……だけどなんだか寂しい……あんなに1人でも頑張っていたのに温もりに触れてしまったから……早く退院して会いたいよ。俺は1人で枕を濡らした。
「海里ごめんな。なかなか面会時間に来れなくて」
面会時間まで残り5分のところで涼ちゃんが会いに来てくれた。とっても嬉しいのに素直じゃない俺はそっけない態度をとってしまった。でもそんな俺の態度でも涼ちゃんは変わらずに接してくれた。
面会終了のアナウンスが聞こえてきて涼ちゃんがジャケットを着るのをただ見ていた。
「明日は来れると思うから待っててね」
頭を撫でられて嬉しいはずなのに俺はその手を振り払って布団にもぐった。涙がこぼれてくるけど泣いてるのを見せたくなかった。布団の上から撫でてから、そっと出てってしまった。どうして俺は素直に気持ちを伝えられないのだろう。本当はもっと一緒にいたいとか、ずっと抱きしめてほしいとか言いたいことは山ほどあるのに……1人で我慢する生活を送ってきたからか素直に言葉に出すのが難しかった。
涼ちゃんは俺のために色々と動いてくれてることなんてその時はわからなかった。
それから数日が経って俺は退院することになった。まだ完全には治ってないので飲み薬と通院はしないといけないんだけど。先生からはストレスを溜めないように素直に生活することと、ご飯は3食食べなさいと言われた。自分の気持ちに素直にならないといけないことはわかってるけどそれがなかなか難しい。俺が考え込んでいると先生は素直に自分の気持ちを言葉にするのも治療の1つ訓練なんだよ。と……
俺は迎えに来てくれた涼ちゃんに「ありがとう」と伝えてみた。ぶっきらぼうな言い方しかできなかったけど涼ちゃんは「退院おめでとう」と言ってくれた。
車に乗り今日から涼ちゃん家に行くと思っていたが車は実家の車庫に入っていった。
「海里、今日からまた4人で暮らそう。海里はまだ本調子じゃないだろ?それに父さんも義母さんも心配してるからさ。それと……勝手に決めちゃったけど俺、会社辞めるんだ。元々海里を探す目的のために警察官になったんだけど将来は父さんの会社を継ぐことを約束してたから。だからその引継ぎのために動いてて面会にも行けなくてごめん。寂しかっただろうし、本当は怒ってただろう?海里はずっと我慢してるんだよな。海里、俺は海里のことが1番好きだよ。もしかしたら海里は疑ってるかもしれないけど……それでもいいと今は思ってる。いつか俺の愛をわかってくれて、海里がそれに答えてくれる日が来ると信じてる。体調も万全じゃない今の海里を1人にさせるのはやっぱり心配だから、海里が嫌じゃなければこの家でまた4人で始めるのもいいと考えた。義母さんも家にいるから」
俺がいなくなったせいで大学卒業してすぐお義父さんの会社を継げなかったんだと思うと胸が苦しかった。みんなに迷惑かけて、それでも俺を温かく迎えてくれた。涼ちゃんの温かい腕の中で俺は先生に治療の訓練と言われたことを思い出し今の気持ちを伝えた。
「涼ちゃん、これからもずっと一緒にいてください。1人は寂しいから」思わず涼ちゃんの腕を掴むとその手に涼ちゃんの手が重なった。
「当たり前だ。海里が嫌だと言っても、もう二度と離れないから。アルファの独占欲は凄いんだぞ。番だけが1番大切なんだ。一生、海里だけを好きでいるから安心して俺のそばにいろよ」
そう言って抱きしめてくれた。この腕の中が一番安心する場所だと感じながら俺は身をゆだねた。
◇◆◇◆◇◆
それから数ヶ月後、体調も良くなった頃、俺たちは番になった。お義父さんも母さんも喜んでくれた。素直になれないときもあるけれど、それでも涼ちゃんがいつも一緒にいてくれる。俺が不貞腐れても、すぐに抱きしめてたくさんの愛情をくれる。それだけでやっぱり安心できる自分がいるのに気がつく。
俺はこれからも涼ちゃんと生きていく。
end……
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初めまして。色々とあったけど海里と涼太が結ばれてよかったです。
海里くんの辛さにこちらまで涙が…。涼太くん見つけてくれてありがとう。
番うこともできてよかったです。できれば二人に出来る子供のお話も読みたいですm(_ _)m
ひろくまさんコメントありがとうございます。リクエストいただきましたが、2人の今後については、考えておりませんでした。すみません。