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エピローグ〜いつか、あなたに似た子を〜
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──たとえ劣勢オメガであっても、ゼロアルファであっても。
「可能性」さえあれば、ふたりはそれを選び、育んでいく。
⸻
春の朝だった。
ふわりと開いたベランダのカーテンの向こう、花咲く庭に小鳥のさえずりが響く。柔らかな陽光がリビングに差し込み、磨かれた床の上でゆらゆらと揺れていた。
翔太は湯気の立つマグカップを両手で包みながら、窓辺でぼんやりと外を眺めていた。視線の先には、色とりどりの花と、陽の光にきらめく草の緑。風に揺れる枝の向こうに、まだ見ぬ未来の気配を探している。
「……どうかしたか?」
背中越しに聞こえてきた声に、翔太は振り返る。
シャツの袖をたくし上げた怜司が、コーヒーを片手に隣へと歩み寄ってくる。
休日仕様の、少しだけ力の抜けた表情。それでも姿勢は崩れず、自然と絵になるのがこの男らしい。
「ううん、なんでもない。ただ……ふと思っただけ」
翔太はカップを唇に寄せ、小さく笑った。
「この家、子どもの声が似合いそうだなって」
怜司の瞳が、ふとやわらかく揺れる。
「……子ども、か」
繰り返されたその言葉の響きに、自分でも少しだけ戸惑う。翔太は、視線を窓の外へ戻しながら続けた。
「俺、劣勢オメガだしさ。産める可能性は高くないって、ずっと言われてきた。ヒートだって、この先ちゃんと来るかどうかもわからない。……だから、本当の意味で番になれるのか。だって、正直、今でもよくわかんなくて」
口にした途端、胸の奥がきゅっと痛んだ。希望と不安、そのどちらも抱えているからこそ、言葉が少し震える。
怜司は何も言わず、そっと翔太の背に手を回した。そのまま、自分の胸元へと抱き寄せる。
「無理をする必要はない。お前の身体が第一だ」
低い声が耳元で落ちる。その言葉が、決して慰めだけではない、本気の配慮だと知っているからこそ、余計に苦しく、ありがたかった。
「でも、俺は……」
翔太は、その胸元に顔をうずめる。怜司の心臓の鼓動が、微かに伝わってくる。
「もしも、あなたと本当の意味で番になれて、あなたに似た子を抱けるなら……きっと、幸せだろうなって、思っちゃった」
言ってから、恥ずかしさで耳まで熱くなった。
あまりにも大きくて叶うかどうかも分からない願い。それでも、ふと浮かんでしまった未来の光景を、どうしても飲み込めなかった。
怜司は、その小さな言葉を胸ごと受け止めるように、ゆっくりと腕に力を込める。そして、翔太の額に、そっとキスを落とした。
「お前が望むなら、俺はどんな未来も一緒に考える。子どもがいても、いなくても、それでも一緒にいるのが家族だろう?」
その声音は低く、優しく、そして揺るがなかった。
翔太は、胸の奥でこみ上げるものを飲み込みながら、こくりと頷いた。
──たとえ道のりは険しくても、挑戦する価値がある。
できるかどうかじゃない。このひとと一緒に、望んでみたいかどうか。
この人となら、未来を夢見てもいい。
絡めた指先に、ふたりの体温がゆっくりと馴染んでいく。手の中の温もりを確かめ合うように、ぎゅっと握り直した。
窓の外では、相変わらず小鳥たちが鳴き、花々が揺れている。世界は何も変わっていないのに、翔太には今、同じ景色が少し違って見えていた。
それは、始まりの朝。
「仮の番」から、──いつか家族と呼び合える未来へ。
「可能性」さえあれば、ふたりはそれを選び、育んでいく。
⸻
春の朝だった。
ふわりと開いたベランダのカーテンの向こう、花咲く庭に小鳥のさえずりが響く。柔らかな陽光がリビングに差し込み、磨かれた床の上でゆらゆらと揺れていた。
翔太は湯気の立つマグカップを両手で包みながら、窓辺でぼんやりと外を眺めていた。視線の先には、色とりどりの花と、陽の光にきらめく草の緑。風に揺れる枝の向こうに、まだ見ぬ未来の気配を探している。
「……どうかしたか?」
背中越しに聞こえてきた声に、翔太は振り返る。
シャツの袖をたくし上げた怜司が、コーヒーを片手に隣へと歩み寄ってくる。
休日仕様の、少しだけ力の抜けた表情。それでも姿勢は崩れず、自然と絵になるのがこの男らしい。
「ううん、なんでもない。ただ……ふと思っただけ」
翔太はカップを唇に寄せ、小さく笑った。
「この家、子どもの声が似合いそうだなって」
怜司の瞳が、ふとやわらかく揺れる。
「……子ども、か」
繰り返されたその言葉の響きに、自分でも少しだけ戸惑う。翔太は、視線を窓の外へ戻しながら続けた。
「俺、劣勢オメガだしさ。産める可能性は高くないって、ずっと言われてきた。ヒートだって、この先ちゃんと来るかどうかもわからない。……だから、本当の意味で番になれるのか。だって、正直、今でもよくわかんなくて」
口にした途端、胸の奥がきゅっと痛んだ。希望と不安、そのどちらも抱えているからこそ、言葉が少し震える。
怜司は何も言わず、そっと翔太の背に手を回した。そのまま、自分の胸元へと抱き寄せる。
「無理をする必要はない。お前の身体が第一だ」
低い声が耳元で落ちる。その言葉が、決して慰めだけではない、本気の配慮だと知っているからこそ、余計に苦しく、ありがたかった。
「でも、俺は……」
翔太は、その胸元に顔をうずめる。怜司の心臓の鼓動が、微かに伝わってくる。
「もしも、あなたと本当の意味で番になれて、あなたに似た子を抱けるなら……きっと、幸せだろうなって、思っちゃった」
言ってから、恥ずかしさで耳まで熱くなった。
あまりにも大きくて叶うかどうかも分からない願い。それでも、ふと浮かんでしまった未来の光景を、どうしても飲み込めなかった。
怜司は、その小さな言葉を胸ごと受け止めるように、ゆっくりと腕に力を込める。そして、翔太の額に、そっとキスを落とした。
「お前が望むなら、俺はどんな未来も一緒に考える。子どもがいても、いなくても、それでも一緒にいるのが家族だろう?」
その声音は低く、優しく、そして揺るがなかった。
翔太は、胸の奥でこみ上げるものを飲み込みながら、こくりと頷いた。
──たとえ道のりは険しくても、挑戦する価値がある。
できるかどうかじゃない。このひとと一緒に、望んでみたいかどうか。
この人となら、未来を夢見てもいい。
絡めた指先に、ふたりの体温がゆっくりと馴染んでいく。手の中の温もりを確かめ合うように、ぎゅっと握り直した。
窓の外では、相変わらず小鳥たちが鳴き、花々が揺れている。世界は何も変わっていないのに、翔太には今、同じ景色が少し違って見えていた。
それは、始まりの朝。
「仮の番」から、──いつか家族と呼び合える未来へ。
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