異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

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ぼっちと幼女と邪神

ぼっちと邪神と確認

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 シロとミドリがすっかり眠り込んだのを確認してから、そっとベッドを抜け出した。
 毛布を整え、二人の寝顔を一度だけ見てから寝室を後にする。

 リビングには、毛皮の上で大の字になっているクレバスがいた。
 遠慮という概念を知らない占領っぷりだ。

 俺はその頭をわしっと掴み、そのままずるずると外へ引きずり出した。

「唐突に何するんじゃ!」
「神気の確認をしたいと思ってな?」
「そう言えばよかろう!?」

 夜の森は静かで、家の周囲に展開した結界の内側だけが、ほんのりと明るい。
 冷えた空気を吸い込みながら、胸の奥に残っていたわだかまりをひとつずつ撫で回すように確かめる。

 勝手に盟約を結んだ件は「許す」とは言ったが、どうにも引っかかりが残っていた。
 原因が目の前の邪神であることに疑いの余地はない。なので、少しぐらい乱暴に扱ってもバチは当たらないだろう。

「俺が神になったらしいが信仰とかはなくて大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃ。信仰に関しては神としての位が付かないと力に変わらん」
「ほう」

 つまり、今の俺は「人でもあり神でもある」中途半端な状態で、
 生命の基盤はあくまで人間側にある、ということだろう。

「そうじゃ」
「心を読むな」
「人族とは思えないほどの力を有しておったからの。お主の有り余った魔力が神気に変換されておるのじゃ」

 この森には魔力が腐るほどある。
 吸っても吸っても枯れることがない泉みたいなものだ。元から減りづらい上に、変換までされていたらしい。

 なら、次に気になるのは使い道だ。

「神気は神の生命を維持するエネルギーとして使える他に何に使える?」
「単純な問題じゃ。力として使えるのじゃ」
「力……?」
「敵に攻撃したりする力じゃの」

 魔力で魔法を使うように、神気で神の技を使う。
 根本はよく似ているが、扱う器が違う、ということか。

「そうか。わかった」
「もう聞くことはないかの?」

 そこで一度言葉を切り、ふと、一番気になっていた部分を思い出す。

「俺から神気が漏れてるって言ったな。どんな感じで出てるんだ?」

 クレバスの表情が一瞬止まり、その後、視線を泳がせて指先でもじもじと自分の袖をつまむ。
 月明かりに照らされた頬が、心なしか赤い。

 ……何をそんな乙女みたいな反応をしているんだこいつは。

「すごい濃くてドロッっとした感じじゃ……」
「それだけ魔力が有り余ってるってことか…」
「吸収しようにも……のう……? 濃すぎて引っかかるんじゃよ……纏わりつくし……」

 最後のほうは語尾が小さくなり過ぎて、ほとんど聞き取れなかった。
 排水溝に粘性の高い水を流しているようなもの、とでも言いたいのだろうか。
 密度が違えば流れも悪くなる。神気でも例外ではないらしい。

「俺から神気が漏れてても周りに危害はないのか?」
「妾が頑張って全て吸収しておる。あの2人に危害はないの」
「すまないな」

 クレバスは胸を張りかけて、すぐにへにゃりと肩を落とした。

「吸収しきれなくなったら言うからの……? その時は"そういうこと"だと割り切って欲しいのじゃ…」

 今度ははっきりとわかるくらいに頬を染めて、もごもごと口を動かす。
 "そういうこと"――その言葉の意味を、俺は別の方向に解釈する。

 つまり、神気の扱いを覚えて、ある程度自分でコントロールしろ、ということだろう。
 現状、完全にだだ漏れ状態なのだから、任せきりというのも限界がある。

「わかった。頭に入れておこう」
「絶対に分かっておらんの…」

 小さく漏れたひと言は、風に紛れて半分くらいしか耳に届かなかった。

 聞きたかったことは大体聞けた。
 あとは、さっさと戻るだけだ。

 長居をしていると、二人が起きてきかねない。
 以前、一度だけ寝かしつけたあとに作業を続けたことがあったが、その時は大泣きしながら家中を俺の名を呼んで探し回られた。
 あの光景は、さすがに忘れられない。次の日は一日中、二人ともぴったりと張り付いて離れなかった。

 同じことを繰り返すのはごめんだ。
 俺は足早に家の中へ戻った。

 寝室の扉をそっと開けると、ベッドの上では二人がまだ穏やかな寝息を立てていた。
 胸が上下するリズムが揃っていて、見ているだけでも心が落ち着く。

 端に腰を下ろし、シロの頭を撫でていると、小さな影がむくりと起き上がった。

「にーに……しっこ……」
「仕方ない。一緒に行ってやるから済ませてこい」
「うん……」

 目をこすりながらふらふらと立ち上がる。
 足取りが危なっかしいので、手を取ってトイレまで付き添った。

 しばらくすると、水の流れる音がして、ほっとしたような小さなため息が聞こえてくる。
 用は無事に済んだようだ。

 行きよりも帰りのほうが、シロの足取りはさらにおぼつかない。
 安心した反動で、眠気が一気に押し寄せてきたのだろう。

 抱き上げると、そのまま俺の肩に頭を預け、すぐに力が抜けていった。
 温かい息が首筋にかかる。

 寝室に戻り、ベッドの上にそっと下ろそうとする。
 だが、服を掴む手が離れない。

 無理に引き剥がせば起こしてしまうだろう。
 どうせ一緒に寝るのだ。なら、このまま抱え込んでしまったほうが早い。

 毛布をめくって潜り込み、空いているほうの腕でミドリをぐいっと抱き寄せる。
 結果、最初に眠りについたときと同じ配置に戻った。

 シロとミドリに挟まれる形で仰向けになり、天井をひとつ見上げる。
 窓の外から差し込む夜の微かな明かりが、部屋の輪郭だけを淡く浮かび上がらせていた。

 まぶたを閉じると、左右から伝わる小さな寝息と体温だけが、やけに鮮明に意識の中に残る。
 その温もりに身を委ねながら、俺は静かに意識を手放した。

 ――暫くして、クレバスが遅れて寝室にやってきた。
 既に三人に占領されたベッドを前にして、どこで寝るべきか真剣に悩んでいたらしいが、その事実を知る者は、クレバス本人以外にいない。
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