異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

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ぼっちと幼女と邪神

幼女と邪神と遠足準備

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 朝だ。
 ぼんやりとした意識の奥で、俺の体内時計がそう告げていた。

 薄く目を開けると、カーテンの隙間から差し込む光が、部屋をぼんやりと照らしている。
 外は白み始めたばかりで、空の端だけがかすかに色を変え始めていた。早朝、というやつだろう。
 どうやら俺の体内時計は、まだ役に立っているらしい。

 視線を落とせば、両脇にはいつも通りシロとミドリがくっついて眠っている。
 そこまでは、いつもと変わらない朝の光景だ。

 問題は、その先だった。

 軽く足を動かそうとして、違和感に眉をひそめる。
 伸ばしていた脚を少し組もうとしただけなのに、太ももが妙に重い。というか、動かない。

「は?」

 寝起きの頭で状況が理解できず、思わず声が漏れた。
 とりあえず、力任せに足を引き抜いてみる。

「のじゃっ!?」
「おい。どんなとこで寝てんだ」

 ずるり、と重みがずれて、布団の中から金色の頭が転がり出た。
 クレバスが、俺の両足の間で丸くなって寝ていたらしい。
 大の字で寝ていたはずの俺は、結果として「太」の字になっていたわけだ。

 しかも、ご丁寧に俺の太ももを枕にしてやがる。
 左足がしびれている理由が、これでようやくはっきりした。

「こんな美女があんな所におったのに無反応かの……お主、不能か?」
「朝っぱらから何言ってんだ。寝言を言いたいならもう一回寝てろ」

 クレバスは毛布を肩まで引き寄せながら、むくりと上半身を起こす。
 どう見ても「美女」ではなく、美少女の範疇だ。本人がどう名乗ろうと、事実は変わらない。

 とはいえ、そういう方面で無関心なわけでもない。
 ただ、いろいろ抑え込みすぎて、感覚が表に出てこないだけだ。

 ……自分で考えていて、なんだか虚しくなってきたので、その思考はそこで打ち切った。

 ベッドから抜け出し、静かにカーテンを開ける。
 朝の冷たい空気が、わずかな隙間からするりと滑り込んできた。

 窓の外には、七色の光が空へと真っ直ぐ伸びている。

 その揺らめく柱を見て、ああ、と小さく息が漏れた。

「そうか…もうそんな季節か」

「なんじゃ? あの光は」
「鳥が復活する光だ。殺してから1年で蘇る」

 クレバスが、眠たそうな目をこすりながら外を覗き込む。
 七色の帯は、森のはるか向こう、空の高みまで届いていた。

「はて……? 記憶にあるような無いような…」

 あの鳥の羽は、毛布やクッションなど、うちの家具の素材としてかなり優秀だ。
 ふかふかの寝具の半分くらいは、あいつの恩恵といっていい。

 せっかくの復活のタイミングだ。
 シロとミドリを連れて、見学がてら様子を見に行くのも悪くない。

 初めてあいつと戦ったときは、何千回も殺され、何千回も殺し返した。
 今となっては、俺の防御魔法すら突破できない、そこらの魔物と大差ない相手だが。

「朝だぞー」

 ベッドに戻り、二人の肩を軽く揺する。

「あと……ちょっと……」
「すぴー……」

 ミドリは布団に半分潜り込んだまま、眠そうに呟くだけ。
 シロは、声に反応しているくせに、わざとらしく寝たふりをしている気配がある。

「そうかー。今日の朝ごはんは2人の大好きなものなんだけどなー。残念だなー」

「おはようごじゃいましゅ!」
「おは、よう……」

 シロが反射で飛び起き、勢いよく挨拶した。
 ミドリも、目をこすりながら上半身を起こす。眠気は残っているようだが、ちゃんと起きる気はあるようだ。

 朝食を食べる準備をするよう2人に声をかけてから、俺はキッチンへ向かった。

 今日の朝食は、シロとミドリがやたら気に入っているフレンチトーストもどきだ。
 正式なレシピを知らないまま、手元にある素材だけで適当に再現してみたら、妙に評価が高くなってしまったやつである。

「クレバス、そのまま寝たら朝飯抜きな」
「大丈夫じゃー。少ししたら行くぞよー」

 寝室に声を投げておき、卓上に皿を並べる。
 焼き上がったパンの甘い香りが部屋に広がるころ、シロとミドリが洗面所から戻ってきた。

 ……そして、クレバスはまだ出てこない。

 完全に二度寝したか? と疑い始めた頃、ようやく寝室の扉が軋む音を立てた。
 毛布を肩から滑り落としながら、クレバスが半分夢の中みたいな足取りで自分の席に座る。

 シロが、当然のようによじ登ってその膝の上を占領した。
 足もとにいたミドリを抱え上げ、俺も膝の上に乗せる。

 全員分の皿がテーブルに並び、朝食はいつもの形に落ち着いた。

 ――腹ごしらえが終わったところで、本題を切り出す。

「遠足だ」

「なに、それ……?」
「おいしいのー?」

 リビングでひと息ついている時にそう告げると、予想通りの反応が返ってきた。
 ミドリは聞き慣れない単語に首をかしげ、シロは即座に食べ物かどうかの確認に入る。ほんとブレない。

「遠くに行くことじゃよ」
「美味しい弁当もあるぞ」
「いく!」

 クレバスが補足し、俺が餌をぶら下げると、シロは一拍の間も置かずに手を挙げた。
 これで賛成多数。ミドリは、もはや自動的に巻き込まれる。

 道具や食料はすべて亜空間に放り込んである。
 準備という準備もいらない。思い立ったら、そのまま出発できるのが、この家の利点でもある。

「行くぞ」
「相変わらず思いつきの行動じゃのぅ…」

 呆れ半分、楽しげ半分の声を背中越しに聞きながら、俺は玄関を開けた。

 ミドリを肩車し、シロを抱き上げる。
 今回はそれほど速度を出すつもりはないので、この状態でも問題はない。

 クレバスが家の外へ出たのを確認してから、俺は軽く地面を蹴った。

 視界の端で木々が後ろへと流れていく。
 森の中を駆け抜ける風が、頬を叩き、髪を揺らした。

 一歩間違えれば木にぶつかって盛大な自然破壊になるが、そこまで下手な走りはしない。
 身体強化と空間感覚の調整は、もう日常作業みたいなものだ。

 十分ほど走ったところで、目的の七色の光が見えてきた。
 森の向こうで、空へと突き立つ光柱が揺らいでいる。

 そろそろだな、と速度を落とす。

『また貴様か……人の子よ……』

 頭の中に、低く響く声が届いた。
 復活のたびに聞き慣れた声だ。

「今日は見学だ。狩るつもりはない」
『そうだろうな。貴様がその気なら姿が見えた瞬間、私は死んでいるからな』

 ほんのわずかに漂っていた殺気が、するりと霧散する。
 話が通じる相手で助かる。

 七色の光の中心に、巨大な影がうずくまっていた。
 羽を休める姿勢のままでも、頭の先までで二十五メートルはある。
 翼を広げれば、横幅は優に五十メートルを超えるだろう。森の一部が、完全にその体で埋まっている。

 初めて相対したときは、あの巨体に何度も押し潰され、焼かれ、貫かれた。
 今の俺から見れば、もはや恐れる相手ではないが、迫力自体は今も健在だ。

「ようやく追いついたのじゃ……」

 少し遅れて、クレバスが息を弾ませながら追いついてきた。
 その姿を見た瞬間、鳥の瞳が大きく見開かれる。

 七色の光が消え、完全に実体を取り戻した巨鳥が、わずかに震えた。
 その気配が、はっきりと動揺に色を変える。

『その気配、お姿変われど健在でしたか……我が主よ……』

 巨体が、地面に頭を垂れた。
 燃えるような翼をたたみ、うずくまるようにして、クレバスへと恭しく礼をする。

 隣でそれを見ていた俺は、思わず眉をひそめた。

 ……?

 どうやら、この鳥とクレバスの間には、俺の知らない因縁があるらしい。
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