異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

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ぼっちと幼女と邪神

幼女と邪神と買い物④

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「それじゃあ武器屋から案内するよ」
「よろしく頼む」

 昼飯を平らげた俺たちは、通りに出て石畳を踏みしめながら歩き出した。
 人に勧められるくらいだ、そこらの路地裏の鍛冶屋とは違うはずだ。どんな店か、少しだけ期待しておく。

 昼時を少し過ぎたメインストリートは、行き交う人もまばらになりつつあった。
 露店からは鉄を打つ音や、油で何かを揚げる匂いがまだ漂っている。シロの腹がもう一回鳴らないか心配になるくらいには、食欲を刺激してくる。

 十分ほど歩いたところで、ルナが立ち止まった。

「ここだよ。創業五千年の老舗だよ!」

 視線の先には、黒ずんだ木の看板と、年季の入った重い扉。
 建物の壁は煤けているが、窓ガラスはきちんと磨かれていて、手入れは行き届いているのが分かる。

「随分と長い歴史だな…」
「あの邪神と勇者が戦った時からあるらしいからね!」

 さらっと物騒な年代の基準を出してきやがった。
 横目でクレバスを見ると、わざとらしいくらいに明後日の方向を見ている。
 封印されてた当時の出来事なら、確かにあまり思い出したくはないだろう。

「オヤジさーん。生きてるー?」
「生きとるわい! 勝手に殺すな!!!」

 腹の底から響くような声と共に、奥から大柄な男が姿を現した。
 肩幅は扉の枠いっぱい、腕は丸太。身長は二メートルはありそうだ。
 全身から、鍛えた鉄と煤の匂いがする。ギルドマスターよりよっぽど強そうだ。

「何だ? ルナちゃんの彼氏か?」
「違う」
「観光案内してるんだよ……みんなして変なこと言うんだから……」
「そりゃ、お前……二人して子供を肩車してたら勘違いもするわい……」

 言われてみれば、外から見ればそうとしか見えない構図ではある。
 俺としては、恋愛だのそういうのを考える気はない。
 このまま老いずに生き続けるのが確定している以上、寿命の違う相手と関係を持てば、どこかで誰かが損をする。

 その辺を考えるのは、シロとミドリが成人してからでいい。今は保留だ。

「シュウや……ちょっといいか……?」
「どうした?」

 袖口をつままれて振り向くと、クレバスが小声で耳元に顔を寄せてきた。

「あの処分品に置いてある刀なんじゃが…あれ、買えぬかのう……?」

 視線の先、店の片隅に「処分品」と雑に書かれた札がぶら下がっている棚がある。
 その中に、ひときわ異質な気配の刀が一本、無造作に立てかけられていた。
 黒い鞘に、特別な装飾はない。ただ、そこだけ空気が澄んでいるような、逆に淀んでいるような妙な存在感がある。

「あれがどうかしたのか?」
「あの刀、五千年前に勇者と戦った時に妾が使ってたものじゃ……」

 そう来たか。
 目に魔力を込めて刀を視る。
 他の武器が石炭や鉄くずに見えるなら、あれだけは別物だ。濃い神気の残滓が、細く長くまとわりついている。

「オヤジさん。この刀はどこで?」

 刀を手に取り、鞘ごとぶら下げて店主に問いかける。

「それかい? この店ができてからずっと売れていない商品さ。何せ刀身が鞘から抜けないんだ」

 黒い鞘の口を親指で押し上げてみる。びくともしない。
 少し力を込めて抜こうとすると、鞘の中で何かが噛み合うような、嫌な手応えと共に「ガキッ」と音が鳴った。
 八割くらいの力で引いたところで、刃が数ミリ顔を出しただけで止まる。

 単純な力だけの問題じゃない。何か別の条件が噛んでいる。

「無理じゃよ。それは妾の神気を流さんと抜けんようになってる」

 クレバスが当然のように言う。
 つまり、本人認証付きの封印か。俺の出番じゃない。

 刀をクレバスに渡す。

「それっ」

 軽く神気を流したのか、クレバスが鞘に指を掛けた瞬間、刃が滑らかに抜けた。
 甲高く澄んだ、耳に心地よい音が店内に響く。

 現れた刀身は、光を吸い込むような艶のある黒。
 鏡面のように磨かれているのに影だけを映しているような、不思議な色合いだ。
 持ち手側から伝わる冷気と、刃に沿って走る神気の流れが、これがただの鉄の塊ではないことを主張してくる。

「嬢ちゃん! それを抜けたのか! お代はいらねぇから貰ってくれ」
「いいのか……? かなりの業物じゃぞ……?」
「使える奴に使ってもらうのが一番だ。置いといても埃を被るだけだからな……それに、持ち主を呪うようなものだからな……」

 最後の一言だけ、さりげなく物騒だった気がする。
 クレバス以外が持てば、ろくでもない目に遭う仕掛けでもしてあるんだろう。

「そうか。なら有り難く受け取るのじゃ」

 クレバスは嬉しそうに目を細め、黒刀をそっと鞘に収めた。
 手元に戻るべきところへ戻った、という感じの収まり方だった。

「シュウは武器はいいのか?」
「俺は大丈夫だ」

 家の倉庫には、錬金術で作った武器が山ほど眠っている。
 サイガの全力の一撃を真正面から受けても欠けないような強度のものだけを残した結果、どれも少し外に持ち出す気になれない代物だ。

 切れ味も、防御も、全部が過剰だ。
 あんなものを街中に持ち込んだら、シロとミドリがちょっと触っただけで怪我をしかねない。

「きらきらしてるんだねー」
「きれい……」

 肩車の上から、シロとミドリが黒刀を覗き込む。
 動かれると危ないので、二人の足を軽く押さえておく。

「もう少し大きくなったら作ってやるからな」
「おおきく、なる……!」

 ミドリが胸の前で小さく拳を握った。
 焦らなくていい。成長なんて、放っておいても勝手に進む。

 店内を一通り見て回る。
 壁には剣や槍、斧が整然と並び、奥には職人が叩きかけの武器を手入れしている姿も見える。
 客の入りも悪くない。五千年続くだけはある店だ。

 刀をタダでもらっておいて、何も買わずに出るのはさすがに気が引けた。
 投げやすそうな短刀を十本ほど選び、会計を済ませる。
 風属性を付与して投げれば、空気抵抗を限りなく抑えた飛び方をしてくれるだろう。
 投げナイフ用としては申し分ない。

「次は魔導具屋かな?」
「ああ。頼んだ」

 店を出ると、通りの喧騒と陽光が一気に戻ってくる。
 ルナが先頭に立ち、次の目的地へと歩き出した。

 魔導具と言われてまず頭に浮かぶのは、うちで使っているコンロや冷蔵庫みたいな奴だ。
 ただ、この世界の一般認識がそれと同じとは限らない。
 シロとミドリに渡した加護付きのアクセサリーも、分類上は魔導具に入るはずだしな。

 さて、どんな面白いガラクタが並んでいることやら。
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