異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

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ぼっちと幼女と邪神

幼女と邪神と雪ん子

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 全員分、かき氷を作り終えた。
 器を並べていく。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ――いつつ。

「……ん?」

 五つ目で指が止まる。
 シロ用、ミドリ用、クレバス用、俺用。そこで終わるはずだ。
 数が合わない。

 誰か皿を増やしたかと思って顔を上げる。

 クレバスは、両手で器を抱え、ひと口ひと口かみしめるように食べていた。
 皿が二枚隠れているような気配はない。

 シロは楽しそうに何かと喋りながらスプーンを動かしている。
 ミドリは俺の頭の上で器を両手で抱え込んで、黙々とかき氷をすくっていた。

 ――待て。

 シロは誰と喋ってるんだ?

 クレバスの体がちょうど死角になっていて、正面からでは相手が見えない。
 少し横にずれて覗き込む。

 そこにいたのは、真っ白な少女だった。

 腰まで伸びた白い髪。血の色が薄まったような赤い瞳。
 肌も、まとっているワンピースも雪みたいに白くて、全体がぼんやりと背景に溶け込みかけている。

 その子がシロと並んでしゃがみ込み、当然の顔でかき氷を食べていた。

「……クレバス。後ろにいるのは誰だ?」

 肩越しに声をかける。

「のじゃ……? ……知らんのじゃ」

 クレバスも振り返ったまま固まっている。どうやら見覚えはないらしい。

「ミドリは……」

 頭の上に問いかけると、ミドリは器を抱えたまま、首を横に振った。
 知らない、という返事だ。

 唯一、会話しているシロなら何か知っているかもしれない。

「シロ、誰と話してるんだ」

「んとねー? ……だれ?」

 自分でも分かってなかった。
 名前も知らない相手と、普通にかき氷を食べながら盛り上がっていたらしい。

 悪意も敵意も感じない。
 シロとミドリには常時結界を張っているから、よほどのことがなければ危険はないが――正体ぐらいは確認しておくべきだ。

「初めましてなの?」

 軽く問いかけると、白い少女がこちらに顔を向けた。

「お、おう? 初めまして」

 俺がそう返すと、少女は小さく頷く。

「私は雪の女王、の娘」

 抑揚の少ない声だったが、言っている内容はなかなか物騒だ。

「ふむ? 雪の女王か……今、夏じゃぞ……?」

 クレバスが目を細めて言う。
 確かに季節感はゼロだ。庭だけ真冬だし。

「そうなの。お母様が英雄に襲われて……私だけ逃がしてくれたの……」

 淡々とした口ぶりだが、言葉の端に小さな揺れが混じる。

 雪の女王。
 聞いたことのない名前だ。俺がこの森で過ごしてきた中でも、少なくとも戦った記憶はない。

「そうなのか。どこから来たんだ?」

「――あっちなの」

 白い指が、無言で北の方角をさした。

 北……。
 常に雪が積もっていて、年中寒い一帯がある。人里にやたらと近いのが難点の、あのあたりだ。

「英雄はまだ存在しておったのか……厄介じゃのう」

 クレバスが渋い顔をする。

「そんなに強いのか?」

「この魔の森の中の雪の女王に攻撃を仕掛けたって事は、森の端側程度の魔力濃度なら耐えきれる者ってことじゃぞ? 間違いなく人類最強クラスじゃの」

 さらっと言ったが、なかなかの評価だ。
 この森は、普通の人間なら一歩踏み入れただけで気分が悪くなるくらいには濃い。

 そんな場所に住んでいる雪の女王を直接叩ける英雄――面倒事の匂いしかしない。

「それに、雪の女王はぴー太に次ぐ強力な魔物のはずじゃ。人型をしており、知性もあるから意思疎通はできるはずなんじゃがのう……なにやらきな臭いのじゃ」

 クレバスが顎に手を当てる。
 ピー太=あの巨大不死鳥の次ということは、かなりの化け物だ。

「ここまで追って来る可能性は?」

「ない。雪の女王が住んでいる場所と、ここじゃあ魔力濃度が三千倍違うからのう……」

「そんなにあったのかよ……」

 そりゃもっと魔力の薄い街に出たら呼吸がしにくくもなるわけだ。
 自分の庭が狂ってるだけだと、改めて思い知らされる。

「私、寒くないと生きていけないの……」

 白い少女――雪ん子が自分の胸の前で手を握った。
 その周囲だけ、空気がほんの少し冷たい気がする。

「そうか。これはお前が展開した魔法……? なのか?」

「シュウよ、雪の女王の血族は天候操作の能力を持っておる。分類的には自然現象じゃの」

 クレバスが横から口を挟んだ。

 なるほど。
 どうりで魔法の気配をまったく感じなかったわけだ。
 雪も、降っているというより「そういう天気になっている」だけ、という感じだった。

 とはいえ、このまま延々と雪を降らされ続けるのは、さすがに不便だ。

「雪ん子、この先どうするんだ?」

 器を膝の上に乗せたまま、少女が小さく首を傾げる。

「行くとこないの……一番強い気配感じるところに向かって来たの。それがここなの……」

 目がまっすぐこちらをとらえている。
 行き場のない魔物の子供、か。

 襲撃された場所に無理やり帰すのも後味が悪い。
 少なくとも、英雄だの何だのがうろついているあたりよりは、この森の方がマシだろう。

「クレバス、雪ん子をうちで保護することは可能か?」

「可能じゃが……妾らが寒さを感じるのは嫌じゃぞ……」

 クレバスが頬を膨らませる。
 それもそうだ。室内まで雪原になったら、さすがに勘弁してほしい。

 となると、こっちで何とかするしかない。

「何か特技はあるか?」

「私……? 妹いっぱい居たから面倒みるのは得意なの」

 シロの横で、スプーンを動かしながら答える。
 言葉通り、シロとは初対面とは思えない距離の近さで並んでいた。

 ――面倒見がいい。
 シロとミドリの遊び相手、という言葉が頭に浮かぶ。

「よし、保護してやろう」

 決めた。

「一日三食、衣食住はこっちで提供するから、シロとミドリの遊び相手になってくれ」

「そんな……簡単でいいの……?」

 困惑と安堵が混じったような目でこっちを見る。
 その表情を見て、まあ悪い子ではないだろうと判断した。

「あとは結界だな。少し痛むかもしれんが……我慢してくれ」

 雪ん子の頭にそっと手を乗せる。
 肌のすぐ上を薄くなぞるように、熱変換の結界を展開する。

 触れた熱が体内に入る瞬間、温度を一定に整える膜だ。
 地面からの反射熱も含めて、全部そこで調整される。

「天候操作を止めることはできるか? 結界を張ったから大丈夫だと思うんだが……」

「やってみるの」

 雪ん子が目を閉じ、静かに息を吸った。
 それと同時に、空から落ちてくる白い粒がふっと消える。

 厚く垂れ込めていた雲の隙間から、遅れて日差しが顔を出した。
 雪に反射した光がきらきらと眩しい。

「……暑くないの!」

 雪ん子がぱっと両手を広げ、太陽の方へ顔を向ける。
 頬がほんのり桜色に染まっていた。

「そうか、良かった」

「何をしたのじゃ……?」

 クレバスがじっと俺の手元を見つめている。

「触れた部分の熱が体内に入るときに温度を変換する結界を肌に張った。クソ熱いお湯とかでも変換されるから火傷もしないし、熱いとも感じない」

「恐ろしい結界じゃのう……ようそんな緻密な結界を構築できるものじゃ」

 クレバスが肩をすくめた。

 これで、雪の子供一人くらいは問題なく家に置いておけるはずだ。
 空も晴れてきたし、この調子なら雪もそう時間はかからず溶けるだろう。
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