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幼女と邪神とユキ
ぼっちと邪神と食材調達
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とりあえずクレバスに言われるがまま、食料を入れる袋に肉を詰め込んだ。
空間拡張の袋は便利だ。口の部分だけは布っぽいのに、中は底のない穴みたいで、肉の塊が吸い込まれていく。
「次は野菜だな」
「野菜はいらんのじゃ。肉だけで十分じゃぞ?」
露骨に顔をしかめるクレバス。
バーベキューで焼く野菜は、普通に食う野菜より妙にうまい。焦げ目の匂い、熱、外で食う空気――そういう要素が味を底上げするのだろう。
クレバスがじりじりと後ろへ逃げようとする。
俺は躊躇なく小脇に抱え、農業空間へと向かった。
「のじゃっ!? 乱暴じゃぞ!」
「さて、バーベキューと言ったら何の野菜がいいと思う?」
「妾は食わんぞ。断じて食わんのじゃ」
「そうかそうか、クレバスはピーマンが好きなんだな」
「やめい!!! 妾がピーマンを苦手と知っているだろう!? せめてタマネギにするのじゃ」
抱えられたまま手足をばたつかせて駄々をこねる。
その必死さが苦手の強度を物語っていた。好き嫌いって、ここまで分かりやすいものか。
「よし。タマネギ、採用」
「うむ!」
農業空間に入ると、空気が変わる。土の匂いが濃く、湿り気が少し重い。青い葉が擦れる音が近くで鳴る。
並んだ畝の上に、育てやすいものから癖の強いものまで、整然と植えてある。
タマネギを何個か抜いて袋に放り込む。
続けてカボチャ、ピーマン、ナス。肉に巻くためのキャベツとレタス。
最後に、毒のない食用のキノコ類をいくつか選んで袋に詰め込んだ。
野菜を入れるたび、クレバスが不服そうに「のう……」と唸るが、止める気はない。肉だけだと、あとで胃が重くなる。
「こんなものだろう」
「シュウよ。さっき入れたキノコにリュウノダケがあったように見えたのじゃが……?」
「リュウノダケ? 鱗みたいなのが付いてるキノコか?」
「そうじゃ。龍種の亡骸に生えると言われている幻のキノコじゃ。生える元となった亡骸が所有していた魔力の量によって、キノコの保有する魔力の量が変わってくる、のじゃが……」
そんな珍しいキノコだったのか。
確かに龍は死んでも素材になる部位が多い。死骸を丸ごと放置すること自体が少ないだろう。キノコが生えるほど時間が経つ状況がまず起きない。
「尋常じゃない魔力の量が保有されておったぞ? 一体、何に生えておったのじゃ?」
「あー……確かサイガの尻尾だな」
「……龍王のか? お主、阿呆じゃろ?」
「生え変わるからって言われて、昔に貰ったんだけど置き場所無くて外に放置してたらキノコ生えてきたから、そのままココに置いていたんだった」
あれ、貰ったの相当昔だ。初めて会って少ししてからぐらいの時期。
当時は素材倉庫も今ほど整ってなくて、何でもかんでも雑にとりあえず置いておく、で済ませていた。
気付いたらキノコが生えていた。
「キノコの味はどうなんだ?」
「魔力の量が多ければ多いほど美味い」
「よし、全部持って行くか」
「妾とお主は大丈夫かと思うが、他三人が魔力中毒になったりせんか?」
クレバスが一瞬だけ真面目な顔になる。
確かに“幻の”とか龍王由来であるとか聞くと、体に悪そうな響きはある。
「そんなに魔力多いか? 見た感じ、シロとミドリの半分。ユキの三分の一ぐらいだと思うんだが」
「なんじゃと!? あやつらそこまで魔力持っとるのか!?」
「まあ、そりゃ俺が常に全員の魔力許容量が上限になったら循環させて上限突破させてるからなぁ……」
魔力は器だ。器の縁まで満ちて、それでも注ぎ続けると、溢れる。
溢れ方が軽いなら体の穴という穴から滲み出るだけだが、さらに取り込めば内部から圧がかかり、肉体が耐え切れず爆散する。
だからギリギリのところで循環させる。
魔力の通り道が太くなる。器が少しずつ広がる。身をもって実験した結果だ。
体内には溜めることのできる場所もある。そこに負荷をかけると増え方が顕著になるが――痛みが洒落にならない。
シロとミドリとユキには、やらない。絶対にだ。
「なるほどのう……そういえばお主はどの程度の魔力を持ってるのじゃ?」
「サイガが米粒、俺が星」
「……どういうことじゃ?」
「対比だ。サイガの保有する魔力量が米粒ぐらいの大きさだとして、俺がこの星と同じぐらい大きさの量だ」
「スケールが大きすぎて……理解に苦しむのじゃが? 龍王サイガでも妾の百倍以上の魔力を持っているのじゃぞ??」
「そうだな。普段はサイガの半分の魔力量しか使わないように封印しているだけだ」
「のう……?? それでも人体に収まる魔力の量じゃない気がするのじゃが……?」
「説明するのが面倒だ……後ででいいか?」
「うむ、また気が向いたときに頼むのじゃ」
「助かる」
リュウノダケを袋に突っ込む。入れた瞬間、袋の奥で空気がわずかに震えた気がした。気のせいかもしれないが、魔力の質が濃いと、こういう違和感はよく起きる。
農業空間から出る。
魔力の量の話は、結局いつもここに落ちる。
俺の体の肉体だけに収まる魔力はサイガの半分が限界。
だから、魔力が流れる至る所に空間魔法で別空間を作り、そこを肉体の一部として認識させて魔力を溜める場所を増やした。
満ちたら封印して、新しい空間を作る。
それを繰り返したことで気付けばほぼ無尽蔵の魔力と言っていいほど増えていた。
生き延びるために手を尽くした結果が、今の形ってだけだ。
空間拡張の袋は便利だ。口の部分だけは布っぽいのに、中は底のない穴みたいで、肉の塊が吸い込まれていく。
「次は野菜だな」
「野菜はいらんのじゃ。肉だけで十分じゃぞ?」
露骨に顔をしかめるクレバス。
バーベキューで焼く野菜は、普通に食う野菜より妙にうまい。焦げ目の匂い、熱、外で食う空気――そういう要素が味を底上げするのだろう。
クレバスがじりじりと後ろへ逃げようとする。
俺は躊躇なく小脇に抱え、農業空間へと向かった。
「のじゃっ!? 乱暴じゃぞ!」
「さて、バーベキューと言ったら何の野菜がいいと思う?」
「妾は食わんぞ。断じて食わんのじゃ」
「そうかそうか、クレバスはピーマンが好きなんだな」
「やめい!!! 妾がピーマンを苦手と知っているだろう!? せめてタマネギにするのじゃ」
抱えられたまま手足をばたつかせて駄々をこねる。
その必死さが苦手の強度を物語っていた。好き嫌いって、ここまで分かりやすいものか。
「よし。タマネギ、採用」
「うむ!」
農業空間に入ると、空気が変わる。土の匂いが濃く、湿り気が少し重い。青い葉が擦れる音が近くで鳴る。
並んだ畝の上に、育てやすいものから癖の強いものまで、整然と植えてある。
タマネギを何個か抜いて袋に放り込む。
続けてカボチャ、ピーマン、ナス。肉に巻くためのキャベツとレタス。
最後に、毒のない食用のキノコ類をいくつか選んで袋に詰め込んだ。
野菜を入れるたび、クレバスが不服そうに「のう……」と唸るが、止める気はない。肉だけだと、あとで胃が重くなる。
「こんなものだろう」
「シュウよ。さっき入れたキノコにリュウノダケがあったように見えたのじゃが……?」
「リュウノダケ? 鱗みたいなのが付いてるキノコか?」
「そうじゃ。龍種の亡骸に生えると言われている幻のキノコじゃ。生える元となった亡骸が所有していた魔力の量によって、キノコの保有する魔力の量が変わってくる、のじゃが……」
そんな珍しいキノコだったのか。
確かに龍は死んでも素材になる部位が多い。死骸を丸ごと放置すること自体が少ないだろう。キノコが生えるほど時間が経つ状況がまず起きない。
「尋常じゃない魔力の量が保有されておったぞ? 一体、何に生えておったのじゃ?」
「あー……確かサイガの尻尾だな」
「……龍王のか? お主、阿呆じゃろ?」
「生え変わるからって言われて、昔に貰ったんだけど置き場所無くて外に放置してたらキノコ生えてきたから、そのままココに置いていたんだった」
あれ、貰ったの相当昔だ。初めて会って少ししてからぐらいの時期。
当時は素材倉庫も今ほど整ってなくて、何でもかんでも雑にとりあえず置いておく、で済ませていた。
気付いたらキノコが生えていた。
「キノコの味はどうなんだ?」
「魔力の量が多ければ多いほど美味い」
「よし、全部持って行くか」
「妾とお主は大丈夫かと思うが、他三人が魔力中毒になったりせんか?」
クレバスが一瞬だけ真面目な顔になる。
確かに“幻の”とか龍王由来であるとか聞くと、体に悪そうな響きはある。
「そんなに魔力多いか? 見た感じ、シロとミドリの半分。ユキの三分の一ぐらいだと思うんだが」
「なんじゃと!? あやつらそこまで魔力持っとるのか!?」
「まあ、そりゃ俺が常に全員の魔力許容量が上限になったら循環させて上限突破させてるからなぁ……」
魔力は器だ。器の縁まで満ちて、それでも注ぎ続けると、溢れる。
溢れ方が軽いなら体の穴という穴から滲み出るだけだが、さらに取り込めば内部から圧がかかり、肉体が耐え切れず爆散する。
だからギリギリのところで循環させる。
魔力の通り道が太くなる。器が少しずつ広がる。身をもって実験した結果だ。
体内には溜めることのできる場所もある。そこに負荷をかけると増え方が顕著になるが――痛みが洒落にならない。
シロとミドリとユキには、やらない。絶対にだ。
「なるほどのう……そういえばお主はどの程度の魔力を持ってるのじゃ?」
「サイガが米粒、俺が星」
「……どういうことじゃ?」
「対比だ。サイガの保有する魔力量が米粒ぐらいの大きさだとして、俺がこの星と同じぐらい大きさの量だ」
「スケールが大きすぎて……理解に苦しむのじゃが? 龍王サイガでも妾の百倍以上の魔力を持っているのじゃぞ??」
「そうだな。普段はサイガの半分の魔力量しか使わないように封印しているだけだ」
「のう……?? それでも人体に収まる魔力の量じゃない気がするのじゃが……?」
「説明するのが面倒だ……後ででいいか?」
「うむ、また気が向いたときに頼むのじゃ」
「助かる」
リュウノダケを袋に突っ込む。入れた瞬間、袋の奥で空気がわずかに震えた気がした。気のせいかもしれないが、魔力の質が濃いと、こういう違和感はよく起きる。
農業空間から出る。
魔力の量の話は、結局いつもここに落ちる。
俺の体の肉体だけに収まる魔力はサイガの半分が限界。
だから、魔力が流れる至る所に空間魔法で別空間を作り、そこを肉体の一部として認識させて魔力を溜める場所を増やした。
満ちたら封印して、新しい空間を作る。
それを繰り返したことで気付けばほぼ無尽蔵の魔力と言っていいほど増えていた。
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