異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

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幼女と邪神とユキ

幼女と邪神とユキとエルフ

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 依頼書とギルドカードをシロに持たせ、正門へ向かって石畳を歩いていく。
 昼前の街路は、行き交う人もまばらで、馬車の車輪が石を擦る音だけが遠くで響いていた。

 しばらく進むと、城壁に開いた大きな門と、その少し脇に止まっている一台の馬車が見えた。
 その横に、ローブを深く被った人物が一人、じっとこちらを見て立っている。中には、もう一人乗っている気配がある。

「依頼を受けた。シュウだ」

 声をかけても、ローブの人物はすぐには返事をしなかった。
 ただ、シロ、ミドリ、ユキへと視線を順番に動かし、こちらの顔ぶれを値踏みするように確かめている。

 依頼を受けた冒険者が、子ども三人連れで来るとは思っていなかったのだろう。

「ほら、シロ。その持ってるのを目の前の奴に渡してくれ」
「はい! あげる!」

 シロが胸を張って両手で差し出すと、ローブの人物は書類とカードを受け取り、目を見開いた。

「……依頼書の原本と、Zランクのギルドカードだと……?」
「なんだ? そのZって」
「そのギルド内で強すぎて、完全に実力が測定できない者に付けられる暫定ランクだ。紅蓮を上回る者が居ると聞いていたが……」

 ギルドカード。会員証みたいなものだとは思っていたが、そんな扱いらしい。
 今の説明だと、俺はおそらく一生Zランクのままだ。測定のしようがない。

「このカードは間違いなく本物だ。であれば不足はないだろう。乗れ」
「分かった。失礼するぞ」
「御者は私がやる。貴様は、何かあったときに中にいる方を守ってくれ」

 短くそう告げられ、俺たちは馬車へ乗り込む。
 車輪は木製、座席には薄いクッションが敷かれているだけだ。揺れはそれなりに来そうだな、と判断し、座ったまま足元から衝撃吸収の魔法を展開しておく。

 薄暗い車内には、御者とは別の人物が一人。
 こちらもまた、ローブのフードを深く被り、沈黙したままじっと様子をうかがっている。
 対面に座ったクレバスが、珍しく口数少なく唸っていた。

「どうした?」
「うぅむ。この魔力……どこかで感じたことがあるような気がするんじゃが……思い出せん……」
「なっ、何で……?」

 凛とした声が、ローブの奥から漏れた。
 さっきまで黙っていた車内の人物からだ。

「全員乗ったな? 出発するぞ!」

 外から御者の声がして、馬車がガタンと揺れる。
 門を出るための手続きはすでに済ませてあったらしく、そのまま正門をくぐった。
 道が石畳から土に変わる振動を、魔法越しにぼんやり感じていると、目の前のローブが俺たちの方を指さしてきた。

「なっ、なんで邪神が!?」
「思い出したのじゃ。勇者のつがいじゃ」
「おっと、剣は抜かせないぞ。魔法もダメだ」

 ローブの人物が腰の剣に手を伸ばした瞬間、腕を掴んで捻り上げる。
 反射で抜きかけた刃が鞘に戻り、そのままその場に押し付ける形になった。

 同時に、シロとミドリの体をふわりと宙に浮かせ、ゆっくりとユキの側へと移動させる。
 これ以上厄介ごとに巻き込みたくない。

 面倒な展開になりそうな気配がするので、クレバスと俺に触れているローブ以外の時間を止めた。

「人族が失われた時魔法を使うだと……? 貴様、何者だ。邪神の眷属か」
「なあ、クレバス。この向こう見ずのコレ。知り合いなのか?」
「うむ。五千年前に妾が封印された時に、勇者と共に居た魔法使いじゃのう」
「そうか」

 ローブのフードをつまんで捲る。
 現れたのは、幼い顔立ちに尖った耳、鮮やかな赤い髪を持つエルフだった。
 人間よりも少し長めのまつげが震え、金色の瞳がこちらを睨んでいる。

「そうじゃ、そうじゃ。番は古代エルフじゃったのう。勇者は元気かのう?」
「八十年しか生きられない人族が、生きているわけないじゃない!」
「うむ。知っておる。分かっていて聞いたのじゃ。お主の立場を分からせるためにな」

 クレバスが、実に性格の悪い笑みを浮かべる。
 こっちは話についていけていないが、どうやらこのエルフは敵、というわけではなさそうだ。ただ、旧知で、殴り合いの歴史があるだけで。

 とはいえ、このまま暴れられても困るので、エルフの四肢を空間固定で縫い付けておいた。

「クレバス。どうするんだ?」
「どうするも何も、分からせるしかあるまい」
「何をするか分からないが……俺は手を貸さないぞ」
「うむ。任せておくのじゃ。強気エルフにやることの相場は決まっておる」

 クレバスが手を振ると、何もない空間から、巨大なイソギンチャクのような生物がぬるりと現れた。
 ぶよぶよした触手がいくつも揺れ、先端がひょいひょいとエルフの方へ伸びていく。

「どこから出したんだ、それ……」
「妾のコレクションじゃ。安心せい、命までは取らん。ちと泣いてもらうだけじゃ」
「別空間を作るから、そっちでやってくれ。終わったら出てこい」

 この狭い車内でやられる方が困る。
 俺が指先で空間を裂くと、そこにぽっかり穴が開いた。

「お主にも見せたかったんじゃが……仕方ないのう。魔法の主導権は頂くのじゃ」
「好きにしろ」
「やっ、やめろ。あれはもう二度と勘弁してくれって――」

 クレバスはエルフを小脇に抱えたまま、イソギンチャクを置いて別空間の中へと消えていった。
 入口が閉じた瞬間、馬車の中からその声も途絶える。

 何が始まるのかは知らないが、騒がしくなるのだけは想像がつく。
 俺は小さくため息をつきながら、固まったままの御者と、時間停止中のシロたちへ視線を向けた。

「……まあ、そのうち戻ってくるだろ」

 エルフ少女の無事だけは、心の中でそっと祈っておくことにした。
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