死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。

藤原遊

文字の大きさ
12 / 68
第1部 死にキャラに転生したはずなんだけど

12

しおりを挟む
朝の柔らかな日差しが差し込む中、スフィアはギルドの掲示板を眺めていた。数日前に終わった花祭りの片付け以来、軽めの依頼を中心に受けていたが、今日は少し変わった依頼が目に留まった。

「街外れの遺跡に住み着いた魔物の調査……。」

スフィアがその依頼を見つめていると、後ろから声が響いた。

「スフィア、それに興味があるのか?」

振り返ると、カインが真剣な表情で立っていた。彼の鋭い瞳に見つめられると、スフィアの胸が少しだけ高鳴った。

「はい。でも……一人では危険なので……。」

「当然だ。俺たちが一緒に行く。」

カインが短く断言すると、スフィアは少し驚きながらも頷いた。

「ありがとうございます……!」

その後、エリオット、レオン、ユリウスも加わり、全員で遺跡の調査に向かうことが決まった。

街の外れにある遺跡は、静寂と不気味さが混じり合う場所だった。苔むした石壁や崩れかけた柱が、長い年月の経過を物語っている。

「魔物の気配がする。全員、準備をしろ。」

カインが低い声で告げると、全員が各々の武器や魔法の準備を始めた。スフィアも結界術の準備をしながら、少しだけ緊張していた。

遺跡の奥へ進むと、突然、暗がりから魔物が飛び出してきた。それは獣のような姿をした魔物で、その牙と爪は見るからに凶悪だった。

「スフィア、下がれ!」

カインが鋭い声で指示を飛ばし、剣を構えて前に出る。エリオットは魔導書を開き、即座に呪文を唱え始めた。

「雷よ、その力で敵を貫け!」

彼の魔法が魔物を直撃し、獣は一瞬怯んだ。しかし、まだ力強い咆哮を上げている。

「僕が足止めするよ!」

レオンが素早く駆け出し、投げナイフを使って魔物の動きを封じる。彼の軽やかな動きに、スフィアは息を呑んだ。

「守りの精霊よ、力を貸して。」

ユリウスが優しく呟くと、柔らかな光が全員を包み込み、傷を癒す力が広がっていった。

スフィアも意を決して結界を展開し、仲間たちを守るための壁を作り出した。

「これで少しは時間を稼げるはず……!」

激しい戦闘の末、魔物はついに動きを止め、遺跡の中が再び静けさを取り戻した。全員が息を整えながら互いの無事を確認する。

「全員、無事だな?」

カインが周囲を見回しながら言うと、全員が頷いた。

「スフィア、君の結界がなかったらもっと危険だったよ。」

レオンが笑顔を向けると、スフィアは少し照れたように微笑んだ。

「皆さんが強いから、私も頑張れるんです……。」

その言葉に、エリオットが静かに付け加えた。

「だとしても、君の存在が僕たちにどれだけ助けになっているか、もっと自覚してほしい。」

「そうだね。君がここにいてくれることで、僕たちは安心して戦えるんだ。」

ユリウスも優しい声でそう言い、スフィアを見つめた。その目には、本当に彼女を大切に思う気持ちが込められているようだった。

遺跡からの帰り道、スフィアは彼らの言葉を反芻していた。

(私がここにいるだけで……みんなが安心できるって。でも、それって……。)

彼女の心の中では葛藤が渦巻いていた。自分がこの場にいることで、彼らの未来を変えてしまうかもしれない――その不安は消えないままだった。

「スフィア、何か考えてる?」

横を歩いていたレオンが覗き込むように尋ねてきた。

「いえ、大丈夫です。ただ……少し疲れただけです。」

スフィアがそう答えると、レオンは「無理しちゃダメだよ」と微笑みながら、彼女の肩を軽く叩いた。

その何気ない優しさが、スフィアの胸を締め付けるようだった。

(みんながこんなに優しくしてくれる……だからこそ、私は……。)

スフィアは心の中で、自分の決意を改めて強く抱きしめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

お妃候補に興味はないのですが…なぜか辞退する事が出来ません

Karamimi
恋愛
13歳の侯爵令嬢、ヴィクトリアは体が弱く、空気の綺麗な領地で静かに暮らしていた…というのは表向きの顔。実は彼女、領地の自由な生活がすっかり気に入り、両親を騙してずっと体の弱いふりをしていたのだ。 乗馬や剣の腕は一流、体も鍛えている為今では風邪一つひかない。その上非常に頭の回転が速くずる賢いヴィクトリア。 そんな彼女の元に、両親がお妃候補内定の話を持ってきたのだ。聞けば今年13歳になられたディーノ王太子殿下のお妃候補者として、ヴィクトリアが選ばれたとの事。どのお妃候補者が最も殿下の妃にふさわしいかを見極めるため、半年間王宮で生活をしなければいけないことが告げられた。 最初は抵抗していたヴィクトリアだったが、来年入学予定の面倒な貴族学院に通わなくてもいいという条件で、お妃候補者の話を受け入れたのだった。 “既にお妃には公爵令嬢のマーリン様が決まっているし、王宮では好き勝手しよう” そう決め、軽い気持ちで王宮へと向かったのだが、なぜかディーノ殿下に気に入られてしまい… 何でもありのご都合主義の、ラブコメディです。 よろしくお願いいたします。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。

橘ハルシ
恋愛
 ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!  リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。  怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。  しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。 全21話(本編20話+番外編1話)です。

処理中です...