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18章 選択の時
閑話
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冷たい風が吹き抜ける山道を、アリアとイアンは黙々と歩いていた。剣が示す北の方向を目指しながら、周囲の険しい地形に目を配る。旅の疲労が少しずつ体に蓄積する中で、アリアは自分の心に浮かぶ小さな違和感に気づいていた。
道端の岩場で一休みすることになった二人。アリアは剣を地面に立てかけ、腰を下ろして空を見上げた。青い空には薄い雲が広がり、風の音が心地よく耳に届く。
「少しは休めたか?」
隣で声をかけてきたのはイアンだった。彼は旅の間ずっと冷静で、時折見せる思いやりのある言葉が、アリアの疲れた心に響くことが多かった。
「うん、大丈夫。ありがとうね、イアン。」
そう答えながらも、アリアの目は自然とイアンに向かっていた。険しい山道を歩いている間も、常に自分のことを気にかけてくれるその姿が、いつも以上に頼もしく見えた。
「でも、イアンってさ、ずっと冷静だよね。疲れてるのに全然そんな風に見えない。」
アリアが冗談交じりに言うと、イアンは杖を持ちながら軽く肩をすくめた。
「ただ顔に出さないだけだ。それに、君が無茶をしないか見ているほうが疲れる。」
「ちょっと、それひどいんじゃない?」
アリアが少し頬を膨らませて抗議する。それに対して、イアンはわずかに口元を緩めた。
「冗談だ。君は、俺よりずっと強い。だから、俺が疲れても君ならきっと先に進める。」
その言葉に、アリアは一瞬だけ息を呑んだ。彼の落ち着いた声と真剣な視線が、胸の中にじんわりと広がる温かさをもたらした。
(……なんだろう、この感じ。)
今まで仲間として、そして頼りになる相棒として見ていたはずのイアンの姿が、少しだけ違って見える。心臓がほんの少しだけ速く脈打つ感覚に気づき、アリアは慌てて視線をそらした。
旅路を再開し、日が傾き始めた頃。二人は静かな森に差しかかり、野営するための場所を探していた。
「ここで休もう。」
イアンが目をつけたのは、小さな川が流れる平らな場所だった。焚き火を準備し、アリアは手際よく拾った木の枝を並べて火を起こした。
「イアン、火がついたよ。ほら、手を温めて。」
火が暖かく燃え始めると、アリアはイアンのそばに座り、自分も手をかざした。夜の冷気が身に染みる中、焚き火の炎とイアンの隣にいる安心感が、彼女を包み込んでいた。
「……イアンって、冷静で大人びてて、何でもできちゃうけどさ。」
アリアはぽつりと呟いた。
「それがどうかしたか?」
イアンが首を傾げる。
「いや、なんか……すごいなって思う。君がいなかったら、私だけじゃきっとここまで来れなかったし……。」
アリアは火を見つめながら続けた。彼女の言葉はどこか不器用だったが、イアンへの感謝が込められていた。
「君も十分強い。むしろ、俺が支えられていることのほうが多い。」
イアンの静かな声が耳に届き、アリアは思わず顔を上げた。その穏やかな表情に、再び胸の奥が温かくなる。
(……なんでだろう。この感じ、前はなかったのに。)
彼女は自分の心の中に芽生え始めた淡い気持ちに戸惑いながらも、そっと微笑んだ。
「……イアン、これからも頼りにしてるからね。」
「当然だ。君を守るためにここにいるんだ。」
その言葉を聞いて、アリアはほんのりと赤くなった頬を隠すように火に視線を戻した。いつも冷静で頼りになるイアン――その存在が、自分にとってどれほど大切かを少しだけ自覚した夜だった。
道端の岩場で一休みすることになった二人。アリアは剣を地面に立てかけ、腰を下ろして空を見上げた。青い空には薄い雲が広がり、風の音が心地よく耳に届く。
「少しは休めたか?」
隣で声をかけてきたのはイアンだった。彼は旅の間ずっと冷静で、時折見せる思いやりのある言葉が、アリアの疲れた心に響くことが多かった。
「うん、大丈夫。ありがとうね、イアン。」
そう答えながらも、アリアの目は自然とイアンに向かっていた。険しい山道を歩いている間も、常に自分のことを気にかけてくれるその姿が、いつも以上に頼もしく見えた。
「でも、イアンってさ、ずっと冷静だよね。疲れてるのに全然そんな風に見えない。」
アリアが冗談交じりに言うと、イアンは杖を持ちながら軽く肩をすくめた。
「ただ顔に出さないだけだ。それに、君が無茶をしないか見ているほうが疲れる。」
「ちょっと、それひどいんじゃない?」
アリアが少し頬を膨らませて抗議する。それに対して、イアンはわずかに口元を緩めた。
「冗談だ。君は、俺よりずっと強い。だから、俺が疲れても君ならきっと先に進める。」
その言葉に、アリアは一瞬だけ息を呑んだ。彼の落ち着いた声と真剣な視線が、胸の中にじんわりと広がる温かさをもたらした。
(……なんだろう、この感じ。)
今まで仲間として、そして頼りになる相棒として見ていたはずのイアンの姿が、少しだけ違って見える。心臓がほんの少しだけ速く脈打つ感覚に気づき、アリアは慌てて視線をそらした。
旅路を再開し、日が傾き始めた頃。二人は静かな森に差しかかり、野営するための場所を探していた。
「ここで休もう。」
イアンが目をつけたのは、小さな川が流れる平らな場所だった。焚き火を準備し、アリアは手際よく拾った木の枝を並べて火を起こした。
「イアン、火がついたよ。ほら、手を温めて。」
火が暖かく燃え始めると、アリアはイアンのそばに座り、自分も手をかざした。夜の冷気が身に染みる中、焚き火の炎とイアンの隣にいる安心感が、彼女を包み込んでいた。
「……イアンって、冷静で大人びてて、何でもできちゃうけどさ。」
アリアはぽつりと呟いた。
「それがどうかしたか?」
イアンが首を傾げる。
「いや、なんか……すごいなって思う。君がいなかったら、私だけじゃきっとここまで来れなかったし……。」
アリアは火を見つめながら続けた。彼女の言葉はどこか不器用だったが、イアンへの感謝が込められていた。
「君も十分強い。むしろ、俺が支えられていることのほうが多い。」
イアンの静かな声が耳に届き、アリアは思わず顔を上げた。その穏やかな表情に、再び胸の奥が温かくなる。
(……なんでだろう。この感じ、前はなかったのに。)
彼女は自分の心の中に芽生え始めた淡い気持ちに戸惑いながらも、そっと微笑んだ。
「……イアン、これからも頼りにしてるからね。」
「当然だ。君を守るためにここにいるんだ。」
その言葉を聞いて、アリアはほんのりと赤くなった頬を隠すように火に視線を戻した。いつも冷静で頼りになるイアン――その存在が、自分にとってどれほど大切かを少しだけ自覚した夜だった。
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