【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました

藤原遊

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当城初日の朝。私は王宮執務棟の奥、兄上たちの執務室に呼び出されていた。

そこにいたのは王太子である第二王子の兄上と、軍務を統括する第四王子の兄上。2人の視線が、やや呆れたように私へ注がれていた。

兄上たちの前には、記録官から届けられた記録書類が山積みになっている。

「……ユーリ」

王太子兄上が、低くため息をつきながら開口一番に言った。

「あれほど “あんな幼い妹に無体なことはするな” と言っただろ?」

私は苦笑しつつ一礼する。

「忠告は常に胸に刻んでおりますよ、兄上」

第四王子の兄上が無言で書類の束をめくりながら呟く。

「……記録官の記録、第一夜から第四夜まで。四夜連続で “情熱的な夜をお過ごしになられました” ……か」

王太子兄上が思わず頭を抱えた。

「既成事実どころの騒ぎじゃないな。堂々たる新婚生活だぞ、これは」

「だいたい、第二夜以降は完全に惚気全開だ。記録官も途中から盛り気味になっている気がするが……」

「兄上方、記録官の裁量で多少脚色されているだけです」

そう口では言いながら、私は内心で苦笑していた。

(……いや、むしろ意図通りなのだが)

カティアの地位を万全にするためには、この程度の既成事実など序の口。問題はむしろ――

「だがまあ……」

王太子兄上は私をじっと見つめ、にやりと意地の悪い笑みを浮かべた。

「――お前の、あの蕩けきった顔が全てを物語っているがな」

私は僅かに頬を染めた。

「……否定は、しません」

「外交の顔とは思えんぞ。まるで色恋に溺れた新婚夫だ」

第四王子の兄上も、半ば呆れながらも笑っている。

「まあ、それだけ惚れ込んでるなら、余計な心配も不要か……ただなユーリ。あの様子を誰か他国の使節が目撃したら――」

「――また、王子に恋する姫君が増えるぞ?」

私は小さく肩をすくめた。

「それは困りますね。カティア以外に、私の隣に立つ者はいませんから」

途端に兄上たちが揃って盛大にため息をつく。

「幸せなのは、もう十分すぎるほど分かった」

「……惚気はいい。仕事に戻れ」

「かしこまりました」

私は深々と頭を下げ、兄たちの執務室を後にした。

(……さて。これからもカティアと幸せに生きていく。そのための仕事なら、いくらでも引き受けよう)

◆ ◆ ◆

──こうして、当城初日の兄たちの”審査”は無事に(?)終了したのだった。
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