没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊

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第3章 音楽の才能と胃痛のお茶会

5

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王宮の大広間に足を踏み入れた瞬間、思わず息を呑んだ。
天井から垂れるシャンデリアは星空のように輝き、大理石の床は磨き上げられて鏡のよう。
壁際にはずらりと控える従者たち。
そのすべてが序列二十位の私にはただの威圧でしかない。

(……帰りたい……)

心の中で悲鳴をあげつつも、笑顔を取り繕うしかなかった。

「まあ、あなたがエレオノーラ様? お兄様ったら何も教えてくれなかったのよ」

柔らかな声に振り向くと、赤髪の少女が立っていた。
アドリアナ・ローザリア。アレクシスの異母妹で、私と同い年だという。

「仲良くしてね。同い年のお友だちができて嬉しいわ」
「は、はい……」

その天真爛漫さに押され、返事が一瞬遅れる。
(……同い年で、この社交力。やっぱり一位の領地ってすごい)

と、兄アレクシスが赤い瞳を細め、愉快そうに口角を上げた。

「天上の天使が舞い降りたのかと思ったよ。今日も麗しいな、エレオノーラ」

「っ……!」

広間の空気がざわめく。
そして彼は愉快そうに笑みを深めた。

「先週は二人きりのお茶会だったが……今日もこうして会えて嬉しい」

「――――っ!?」

(ちょ、ちょっと!? そんなこと皆の前で言わないでよ!!)

ソフィがびくんと肩を震わせ、クラベルまでもが目を丸くしている。
周囲の上位貴族たちも顔を見合わせ、ざわめきが一層大きくなった。

「アレクシス」

低く鋭い声が割って入る。
軍人らしい引き締まった気配をまとい、コンスタンティン・カメリアが立っていた。

「彼女は騎士団長だ。領地を出るはずがない」

その言葉に、広間が一瞬静まり返った。
だがアレクシスは意に介さず、赤い瞳を愉快そうに細める。

「俺は領主一族だけど、領主候補じゃない。なら、問題ないだろ?」

ざわっ――と空気が揺れた。
序列一位の発言に、誰もすぐには反論できない。

(……やっぱり本気で言ってるの!? 序列一位が、下位領地に婿入りなんて……ありえないでしょ!!)

胃の奥がひどくきしんだ、そのとき。

「まあまあ――」

柔らかな声が響く。
場の中心に進み出たのは、セレスティーナ王女殿下。
白銀の髪が光を受けて揺れ、広間の視線を一身に集める。

「皆さま。せっかくのお茶会ですもの。楽しくまいりましょう」

優雅な微笑みに、張りつめていた空気が一気に和らいだ。

(……助かった……!)

心の底から安堵しつつ、私は背筋を正し、次の嵐に備えた。
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